本当の地域密着店の作り方(実践編)

店舗(パチンコホール)が地域のコミュニティ広場としての取り組みを始めた

本当の地域密着店の作り方・実践編

関根翔太のコミュニティホール指導回想録

 これまでのあらすじ

 関根翔太は、ジャック大滝店の店長となり、コミュニティホールを推進していた。
 ある日、小泉社長から新店でのコミュニティホール推進を任せたいと言われ、 半年前から移動のための準備をしていた。
 ところが、新店の出店が地元の了解を得られないということで、 途中で頓挫とんざしてしまう。 これで移動はないものと勝手に思い込んでいた翔太に対して、 ジャック久米坂店への移動辞令が出される。

 翔太の会社のグループ店は7つあり、 その中で出玉と新台を中心にしたグループ店の業績は悪化している。 社長の小泉太一の考えとしては、 従来の出玉と新台を中心とする施策を推し進める第一営業部の高坂部長に コミュニティホールによる運営形態の有効性を理解させ、 お客様との関係づくりを中心とした運営へと意向をさせたいと考えているが、 なかなかうまく行かない。

 そこで、小泉社長はジャック大滝店を立て直し、店長に昇格している関根翔太に、 高坂部長が業績回復を半ばあきらめている久米坂店を立て直させることで、 高坂部長の意識を変えたいと思った。
 そのために、これまで第一営業部であった久米坂店と浅沼店を、 コミュニティホール戦略を推進する第二営業部に移管させることにした。

 翔太としては、新店で一からコミュニティホールに取り組めると思っていたのが、 業績の悪化した久米坂店のコミュニティ化による立て直しということで、 大きく思惑が外れ、ガックリする。
 それに、久米坂店では次期店長として、翔太より社歴が古い森川副店長が半年以上前から ジャック基幹店から移動してきていた。 森川副店長としては、前任店長が家の都合で急遽きゅうきょやめることになれば、 当然、自分が店長になると思い込んでいるので、他から店長がくるのを歓迎するはずがない。

 小泉社長から従来の営業手法しか知らない森川副店長の単純昇格は、 久米坂店の業績回復の目処が立たないので、出来ないことを告げられる。
 そして、翔太に店舗の立て直しと並行して、 森川副店長をコミュニティホールの運営ができるように育てるように指示を出す。 加えて、浅沼店のコミュニティホール化の指導も兼務させられる。

 翔太は、小泉社長や第二営業部の山崎部長と話を重ねるうちに、 コミュニティによる経営手法を試す良い機会と考え直し、 久米坂店の立て直しを前向きに考え始める。

 ジャック久米坂店へ赴任した翔太は、まず、コミュニティホール化への布石として、 スタッフの接客の基本の徹底を行い、 クリンリネス、会員化の徹底を行っていく。
 主任やリーダーは、次第に翔太の仕事の進め方を理解し、 徐々にコミュニティ化のための施策ができるようになっていくが、 森川副店長はだんだん翔太に対して反発を強めていく。

 そんな中、森川副店長に任せている会員の入会強化がネックとなってきている。 目標に対する考え方など基本的な思考ベースの違いに翔太は苦笑してしまう。
 入会の活動の閉塞感へいそくかんに対して、翔太はホールの実態調査を指示する。

 4月第3週目の進捗会議で、翔太はコミュニティホールの布石として打ち出した施策の進行具合を確認していく。 接客の大切さを徹底するため役職者全員がホールに出なければいけない状況をつくり、接客の安心を充実させる。 また、世間の信用を得るために、掃除などの地道な活動の大切さを強調する。

 引き続いて、森川副店長と尾田主任がお客様の入会の実態調査結果を報告する。二人とも調査結果を見て、 自分たちのこれまでの取り組みの甘さを認めざるを得なくなる。

 5月に入り翔太は小泉社長へ、これまでの経過報告に行く。 小泉社長は、ジャック本町店の競合店対策の打合せで忙しかった。 そんな中、小泉社長の話を聞き、ジャック本町店の影響を受けて、 久米坂店の改善計画の修正を迫られないか懸念する。

 コミュニティホールの施策を実行するために、 スタッフの感謝の心を醸成させる仕組みちとして、 感謝カードの作成を吉村主任に命じる.

 5月初めに行う店舗で、会員強化の進捗を確認する。 まず、西谷主任が担当しているクリンリネスをチェックし、 ニュースレターの社内浸透を頼んだ。 次に、地方行政と連携して、地域貢献を行うことを告げた。 そして、遊技台アンケートをとるように尾田主任に依頼する。 会議後、翔太は星野店長と宝田主任に活動のための布石の大切さを再度伝えた。 翌日、西谷主任は店舗内のニュースレターの浸透を実行するが、 郵送したニュースレターが休憩室で破り捨てられてあった。 翔太は、新しい方針に不満が出た場合、誰がだしているのか、 方針との整合性を見て判断し、対処することを説いた。

 翔太はコミュニティホールづくりを成功させるためのキーになる スタッフの育成を自ら取り組み、自分の想いをスタッフに伝えたいと思った。 後日、尾田主任はスタッフ研修のことが話題になり、関根店長の意図をリーダーに伝えた。

 翔太は5月になり、各主任がコミュニティ施策に関して、工夫しながら取り組んでくれていることに満足をしていた。 そして、6月に入り、翔太はコミュニティホールづくりのための動きを加速させるために、8月にリニューアルを行い、 それを利用して、コミュニティホール化の施策を早急に進めようと考えていた。

 会議の中で、各主任から積極的な提案もあり、翔太はコミュニティホール推進によって、人が育ってきていると嬉しかった。 しかし、森川副店長は言い訳が目立ち、前向きに挑戦しようとしない。 翔太はこのままでは悪い影響がでかないと判断し、お客様の会員化推進を自分が直接することを宣言する。 並行して、翔太は地域との共生を推進するため認知症講座の開催の布石を打っていた。

 翔太は会員強化を自分がやるにあたり、リーダーの能力をアップさせて、現場力を強化し、一気に進めることを考えた。 そのためにリーダーを集めって、会員募集におけるリーダーの役割を明確にし、スタッフの募集能力アップの責任はリーダーが持つように言った。 そして募集能力をアップする具体的なやり方をリーダー達に教えた。

 その後の定例進捗会議は、主任の積極的な取り組みがうかがえ、翔太は満足した。 そして終わりに会員募集人数の目標を打ち出し、それを達成するために会員募集のやり方を大幅に変えることを宣言して終わった。

 翔太は毎週コミュニティホール作り施策の進捗を会議で確認していた。 進捗をチェックされるという意識が主任を前向きに取り組まさせていると翔太は思っている。 習慣化するまでは、会議形式で進み具合を確認することは絶対必要なのだ。

 その甲斐があり、現在施策は順調に進んでいる。 最近では主任たちがコミュニティホールを構築するための具体的なアイデアを出してくるなど、 取り組む姿勢が変わり始めてきた。

 7月の店舗会議の冒頭で、翔太は8月のリニューアル計画を発表した。 そして、それに伴い断続的に施策を打ち、リニューアル直前まで稼働を徐々に引き上げていく、やり方を説明した。 その後、各主任から進捗報告をうけ、大きな問題はなく、進行していることを確認する。
 店舗会議後、翔太は事務所に戻り、感謝カードをチェックあい、尾田主任と進め方のコンセンサスをとるのでった。

 翔太は、7月に入り、各主任が担当しているコミュニティホール施策の進捗報告を受けながら、 順調にコミュニティ化の布石が打たれていくことに満足していた。 そして、お客様に対して、8月の改装と合わせて、コミュニティホールの打ち出しをすることにした。 そのことを臨時に「ニュースレター」を出し、お客様に知らせた。  総付け企画については、地域との共生の第一歩となるので、特に念入りに打合せをした。

 総付け商品配布の当日、スタッフみんなに緊張感があった。 これまでの総付けとは違い、事前に十分打合せをし、いろんな工夫をしている。 これがお客様に受け入れられるのかどうか、その反応を翔太は注目していた。 この総付け企画が成功すれば、コミュニティホールの実感がわかないスタッフも、 地域の店舗との連携の面白さに気づくし、地域に良い影響を与えられるという自信が身に付く。 実際一日はあっという間に過ぎ、多少の手直しはあったが、無事終わることが出来た。

 豆の木パン工房のパンを総付け商品として配布することで、豆の木パンは売上がワンランク上がった。 オーナーの江崎氏は喜び、翔太へお礼の挨拶に来店された。 翔太は、地元店舗との共生事例ができたことで、コミュニティホールの有益性を再確認することが出来た。

 8月の店舗会議参加のために翔太は本部に行き、会議後、小泉社長に山崎部長と共に久米坂店の状況を報告した。 コミュニティホールのベースとしての遊技台の機種揃えの最適化や接客の基本の徹底、 それに加えてパチンコ店はコミュニティであるという発想を刷り込んでいること。 それらを踏まえて、カードの切り替えを行い、お客様との距離感を縮めることに成功しつつあること。 また会員の募集も順調に進み、コミュニティに賛同している人を囲い込んでいることを話した。
 そして、稼働については、15500アウトから17600アウトへと回復してきていることを改めて報告した。 翔太は、この稼働は出玉による無理な稼働上昇ではなく、ホールの考え方に賛同してくれている人が集まり始めている結果としての稼働であるので、 すぐに元の稼働に戻ったりすることがないという予想も付け加えた。
 小泉社長は、翔太が説明する久米坂店の具体的なコミュニティ施策について熱心に耳を傾けていた。

 森川副店長は、地域企業とのコラボということで、豆の木パンのオーナーから紹介された山口饅頭堂へ、オーナーと二人で訪問した。 店舗の考え方を説明し、試食用に渡された”おはぎ”を持ち帰ったが、スタッフの評判は良くなかった。 森川副店長は、山口饅頭堂の試食結果を江崎オーナーと二人で山口社長に報告に行った。 江崎オーナーは山口社長に味の改良を強く勧めるが、山口社長の反応は鈍かった。

 8月も2週目に入り、これまでの施策が相乗効果を表し始めてきている。 翔太は進捗状況をきっちり押させることで、8月のリニューアルの効果を確実にしたいと考えていた。 直前の3週目の会議で、翔太は改装リニューアルの進捗に漏れが無いかを検証した。

 そして、リニューアルで店を休んでいる間に、スタッフ研修を行い、今回の改装の目的、これまでみんながやってきた活動の意義をスタッフに伝えた。

 ジャック久米坂店は、リニューアル・オープンを迎え多くの人が集まってきた。 出玉の部分を控え目にしたことで、オープン狙いの客は早々に他店に行くのが確認できた。 そんな中、明日葉リーダーが、朝の健康体操に参加している方が、初めてのパチンコに挑戦していると報告をしてきた。 その報告を聞いて翔太は、コミュニティとパチンコのリンクが少しではあるが出来たことが嬉しかった。

 翔太は9月の店長会議に出席をし、その後で、小泉社長に対して久米坂店の状況報告をしようと考えていた。 しかしながら、本町店の状況が思わしくなく、小泉社長は会議が終わるとすぐに高坂部長と川田店長を残して打合せをしていた。 翔太はしかたなく山崎部長だけに報告をし、社長へは山崎部長から伝えてもうらことにした。

 翔太は9月の店舗会議を行い、現状を説明すると同時に、会員分析結果を参加メンバーに伝え、 9月の最重要課題は、現在トライアルユーザー状態にあるお客様を定着化することであると告げた。 そのために出玉ではなく、コミュニティ施策の徹底を図り、ファンにすることの大切さを説いた。 その後、西谷主任、尾田主任、吉村主任は進捗状況を報告した。

 翔太は第2週目の進捗会議で、競合店の状況を説明し、今後の競合店の動きについての認識を同じくし、それに対する自店の方針を確認するのであった。

 森川副店長は、山口饅頭堂に行き、山口社長に新作おはぎのアンケート結果を持っていった。そして、開発までの経緯を聞くのであった。 打合せの結果、江崎オーナーの申し出もあり、9月の総付けは山口社長の”おはぎ”に決まった。 森川副店長は早速ホールに帰り、事情を説明してホールのみんなに協力を依頼した。 その中で森川副店長は、茶道教室とのコラボを思いつき、山口社長と訪問し、合意を取り付けた。

 総付け商品の当日、”おはぎ”を朝から配布をした。お客様の反応は良く、休憩室のお茶会も盛況であった。 リニューアル営業が一段落したので、森川副店長は古巣のジャック本町店に2回目の陣中見舞いに行くことにした。 しかし、本町店は営業を巻き返すどころか、活気がなくなっていた。

 高坂部長は、小泉社長のお母さんである相談役から、今回の本町店の立て直しについて呼び出しを受け、責められるのであった。 高坂部長は、店長会議終了後に小泉社長の時間をもらい、今回の本町店の責任をとって辞めたいと言った。 その言葉に小泉社長は激怒し、高坂部長に自分の想いを伝えた。話を聞いた高坂部長は再出発を誓った。

 小泉社長が高坂部長と山崎部長を伴って、ジャック久米坂店に視察に行った。 そして翔太に新店が動き出したことを伝え、翔太に準備に入るように指示をするのであった。 その後、高坂部長は、森川副店長にジャック久米坂店の店外清掃範囲を案内してもらっていながら、これからの話をし、決意を語った。

 10月山口饅頭堂から聞いたということで、ジャック久米坂店に地方テレビ局から取材が入ることになった。 ニュース番組で久米坂店の活動を紹介されたことで、家族からいい会社に入ったねと言われたスタッフが、喜びの声を上げていた。

 翔太は森川副店長と店長会議に出席するために本社に行った。そこで翔太は北条真由美と再会するのであった。

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