コミュニティマネジメント研究所

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パチンコ寓話

パチンコ・イノベーションを促進させる短編寓話集

◆◇◆ 第14話 人件費削減への挑戦 ◆◇◆

 むかしむかしあるところにパチンコホールがありました。 親子でパチンコ店を経営していました。 地域で一番繁盛をしていたのですが、周囲にパチンコ店ができるので、少しずつ稼働が下がってきました。 危機感をもったお父さんは、ゴルフばかり行っている息子に、もう少し頑張ってもらいたいと思い、 銀行から紹介されたセミナーに参加させることにしました。

 息子がセミナーに行くと、売上の拡大が見込めないなら、無駄な経費は削減しないといけないというコスト削減の話がメインテーマでした。
 帰ってきた息子は父に言いました。
「お父さん、今後生き残るためには、経費の削減に取り組んでいかないといけないことがわかった。俺は、これに挑戦したいけどどうだろうか」
 父親はこれまで自主的にやりたいと言ったことがない息子がやる気を出したので、一度好きなようにやらせてみようと思いました。

 息子はセミナーで教わったように、経費を集計し、ABC分析をし、その結果をもとにお父さんに相談しました。
「機械代が大きいけど削減はどうだろう?」 冬の
「稼働が落ちるからダメだ」
「それじゃ、人件費はどうだろう」
「そうだな、人件費は無駄があるかもしれない」
「わかった。無駄を見つけて削減に挑戦してみるよ」
 息子はさっそく無駄がないか調べ始めました。

 無駄ということを意識して見ると結構目につくものがありました。 朝オープン前に並んでいるお客様と掃除の手を止めて話をしているスタッフ。 オープン後しばらく挨拶ばかりをしているスタッフ。 お客様の愚痴を聞いているスタッフ。 急な雨に出入口で立ち止まっているお客様にわざわざ傘をもっていき、車まで傘をさして送っているスタッフ。 カウンターでお客様と雑談しているスタッフ。

 息子は無駄と思った時間がどれだけあるか計算して、アルバイトを4人削減することにしました。 スタッフからホールの作業ができないとクレームが出ましたが、 作業に専心すれば問題ないこのスタッフで十分回すことができると言って取り合いませんでした。 やってみるとホールは回ります。 社長のお父さんは、よくやったと息子を褒めました。

 息子は嬉しくなり、もっとも無駄がないか探しました。 ホールを見ていると、玉箱の上げ下げをしている時間は、実際かなり少なく、玉の上げ下げのニーズを見つける待ち時間が多いことに気づきました。 息子はみんなを集めて言いました。
「これからは、お客様からコールランプがあったら対応してください。 もしかしたらお客様の中には自分で玉箱を上げ下げする人もいるかもしれません。 そうなればみなさんの負担も減ります」
 翌日からホールの人数を減らすことにしました。 売上と稼働が減少してくる中、よくやったと父は息子を褒めました。

 しばらくして息子がホールを見ていると、先月よりホールスタッフの手待ち時間が伸びていることに気づきました。
『そうか、お客様が減って稼働がさがったので、それだけスタッフの無駄な時間が増えたのだ。 これに気づかなければ、せっかくの無駄の排除がそれこそ無駄になってしまう』
 息子は集客に応じて、もっと柔軟に対応する必要があると考えました。 そして父親に報告に行きました。
「お父さん、またスタッフの無駄を見つけました。まだ今より少数でホールを回せるので、後2人辞めさせてほしい」
 社長は無駄をどんどん発見する息子に感心し、2人アルバイトを辞めさせました。

 さらに半月後、海外旅行から帰ってきた息子は、久しぶりにホールを見まわりました。 お客様がいないのでスタッフがばかりが目につきます。どう見てもスタッフが余っている。無駄を発見したと息子はワクワクしました。 さらに2人のスタッフを減らすことができる。息子は直感的に思いました。 さっそく事務所でシミュレーション計算をして、3人減らしてもホールが回る理由を書き、すぐに社長室に行きました。

 社長室に入るとお父さんと顧問税理士の先生が渋い顔をして、試算表を眺めていました。 息子を見たお父さんはおもむろに口を開きました。
「息子よ。人件費削減の取り組みはそろそろやめにしてくれないか」
 息子は興奮気味に言いました。
「何を言っているの、お父さん!売上と稼働が減った分、人件費を減らさないと会社がモタナイよ!」

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