コミュニティマネジメント研究所

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パチンコ寓話

パチンコ・イノベーションを促進させる短編寓話集

◆◇◆ 第15話 接客と悪魔(新人悪魔の接客実践見学) ◆◇◆

 むかしむかしあるところに悪魔の見習いがいました。 彼は悪魔財団デビルの法人部門に配属され、先輩について悪魔の手法を勉強していました。

 この日の先輩はパチンコ店へ入っていきました。 ホールの風除室から入り、店全体を二人で見て回りました。
「どう思う新人」
 感想を書いかれた新人悪魔は言いました。
「まあまあ繁盛していますね」
「そうだろう。この店はこの地域でもガンバっている店舗なんだ。ここ1年はスタッフの接客の質が良く、接客にムラが無くなって、ファンが増えて稼働が少しずつ上がってきている」
「それは問題じゃないですか。この店を元の良くない店舗にしないとマズイですよね」
「そのためにどうするかだ」
「どうするんですか?」
「物事にはタイミングがある。今回できの悪いスタッフが入った。それを上手くかすことだ。まあ、見ておけ」
 先輩悪魔はそういうと、接客している新人アルバイトの横に行きました。

 そして悪魔はやさしくささやきました。
「お前はよく頑張っている。上手く接客ができなくても新人だからそれが当たり前だよ。適当でいいんだよ」
 新人アルバイトは周囲を見まわしたのですが、誰もいません。でも少し心が楽になりました。また接客していると囁くが聞こえました。
「お前はよく頑張っている。疲れて来たから笑顔がないのは当たり前だよ、気にすることはない。もっと悪い接客のホールもあるじゃないか」
 新人アルバイトはもっともだと思い、笑顔をやめました。
 先輩悪魔は満足して、別のアルバイトのそばに行き、また囁きました。
「お前は疲れているのによく頑張っている。家でいやなことがあったんだろう。 無理して笑顔にしているとストレスが溜まって、体に良くないよ。少しぐらい手を抜いても大丈夫だよ。笑顔がなくても仕事はできるよ~」
 そのアルバイトスタッフはそうだと思いました。気分の乗らないときもある。 少しなら不愛想な顔をしていても、誰も気にしないだろう。
 スタッフの顔から笑顔が消えました。 悪魔の

 アルバイトを見ていた主任は、笑顔がないことに気づき、注意をしないといけないと思いました。その時、すかさず先輩悪魔が近づき、囁きました。
「アルバイトは頑張っているよ、少しぐらい笑顔が無くても仕方がないだろう。8割はできている。 それともお前は杓子定規しゃくしじょうぎに“笑顔”と言って、嫌われたいのか?考えてもみろよ。 すぐやめてしますぞ!第一お前えも笑顔が100%というわけはないだろ。ほどほどが一番だよ」
 主任は思いました。『今日は忙しいし、いつもだいたいできている。今日ぐらい少し笑顔なしでも良しとするか』
 その後も先輩悪魔は、アルバイトスタッフや役職者に囁き続けました。

 一段落したとき、新人悪魔は先輩悪魔の話しかけました。
「先輩、ちっとよろしいですか」
「何だ?新人」
「今のやり方だと悪い体験をして、お客さんが不満をもって帰る確率は、20人に1人ぐらいしかいないですよ。 こんな地味なやり方で、この店をすさんだ店にできるんですか?」
 先輩悪魔はニヤッと笑いました。
「いま、20人に1人といったな。いい線いってるぜ。それでいいんだ。賢い人間が言っている。サービスは『100-1=0』とね。 少しでもサービスができないと、評価は99では無く、ゼロになってしまうんだ
「そうなんですか」
例えて言えば、食堂に行って、ごはんの中に小さな小さな小石が、まじっているようなもんだ。 安心して食べていたら、口の中で“ゴリ”という。口から出してみると砂のような小石があった。次から安心してごはんを食べれるか?
「歯が欠けそうで、嫌な体験ですね。私なら無理です。そんなことがあった日から、その食堂のすべてに不信を持ちます。しっかりごはんをむことができなくなります」
「そうだろう。理屈は同じさ。だから、いませっかく混じったその小さな石が取り除かれないように頑張っているということさ」
「なるほど、勉強になります」新人悪魔は感心してメモをとった。

「ところで、お前この店舗に1日何人の人が来ているか知っているか?」
「知っています。事前に調査しました平均約600人です」
「ということは、20人に1人の割合で不満を持たせると仮定すると、1日30人の人間が、この店舗に不満を持つ。1か月で何人になる?」
「約900人です。1年で、約10800人が不満を持つことになります」
「この街の人口は?」
「約10万人です」
「パチンコ人口は、ザクッと人口の1割だから、約1万人」
「ということは、1年たてば、この街のパチンコ人口すべてに不信を持たせるということですか?」
「理屈では、そういうことだ。これでこの店舗が繁盛できると思うか?」
「できません」新人悪魔は即答した。
「そうだろう。さらに悪い体験は、クチコミで12人に伝えられる。まあ、これはアメリカの人間が調べた話だけどさ」
「素晴らしい、素晴らしいですね。さすが先輩です」新人悪魔は目をかがやかせた。

 先輩悪魔はさらに続けた。
多くの店舗の人間は、接客が8割できていれば、お客さんが評価してくれると思っている。 でもさっき言ったように「100-1=0」だ。実態はそうではないから、業績は上がらない。 それどころかその程度では下がる可能性が高い。どうなると思う?」
「・・・・・」
 先輩悪魔は新人悪魔の顔を見て、ニヤリと笑った。
「頑張って接客しても意味がないと思い、接客を頑張れという社長に不信を持つだろう」
「持ちます。接客は無駄と思うでしょう」
「するとどうなる」
人間は無駄なことをしていると心がすさみます。陰で『接客なんか意味がない!無駄だ!』と言い出すかもしれません。不平不満がはびこります
「そうだろう。そうなれば何をしても上手く行かない。会社が傾くのは時間の問題さ」
 先輩悪魔はニヤッと笑うと話を続けた。
「悪魔は人間の盲点をついて、さりげなく周りの人を不幸にしていくことが大切だ。 これにより企業の活力が失われ廃業への道を歩んでいく。働いている人間をまとめて不幸にする。これが悪魔財団デビルの法人部門の仕事だ」
「感動しました。今日は本当に勉強になりました。ありがとうございました」
 新人悪魔は、満面の笑みで先輩悪魔にお礼を言った。

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