コミュニティマネジメント研究所

社会的存在価値を高める企業のドラマづくりを応援する

パチンコ寓話

パチンコ・イノベーションを促進させる短編寓話集

◆◇◆ 第16話 年間計画 ◆◇◆

 むかしむかしあるところにパチンコを経営している会社がありました。 その会社の社長の悩みは計画が予定通り進まないことでした。 そのために資金繰りが狂ったり、一定の粗利を獲得するための店舗間の調整に功労していました。

 社長は考えました。どうして計画通りに進まないのだろう。 毎年計画を年初に各店長から提出させるが、途中から使えなくなってしまう。

 信心深い社長は、会社に行く途中にある教会に立ち寄り、祈ってみました。
「神様、どうして計画通りにいかないのでしょうか」
 すると天使がバタバタと天から降りてきて言いました。
「計画が悪い。以上」 天使の回答
 そう言うとまた天に帰っていこうとしました。
 社長は慌てて言いました。
「どうすれば良いのでしょうか?」
 振り向いた天使は答えました。
「計画を良くすることです。以上」
 社長は、また上昇していこうとしている天使に重ねて訊きました。
「どうすれば計画はよくなるのでしょうか?」
 天使は面倒臭そうに振り向き言いました。
「それは、あなたが考えることだ」
 そう言って天へと帰っていきました。 その後ろ姿を見ていた社長は思いました。他の神様を当たろう。

 その教会からしばらく行くと神社がありました。
 社長は柏手を打ち、神様にお祈りをしました。
「どうすれば計画がよくなるでしょうか?」
 しばらく待ちましたが、何の反応もありません。
 社長はお賽銭をするのを忘れていたことに気づきました。
 そこで社長は財布から千円札を出し、お賽銭箱に入れました。 そして、再び柏手を打ち、改めて神様にお祈りをしました。
「どうすれば計画がよくなるでしょうか」
 すると神様が境内の奥から現れました。
「わしに質問をしたのはお前か?」
「ハイ、そうです」
「計画を良くするのは簡単だ。お前自身が、計画の良し悪しを見分けることが出来れば良いだけだ」

「どうすれば見分けることができるのでしょうか?」
「お前のところに提出される計画書を見て、お前は判断できないのか?」
「恥ずかしながら、数値の計画は出てきますが、なぜ、その数値になるかまではわかりません。 予想稼働数、予想玉単価、予想玉粗利が書いてありますが、前年との比較をしてこんなものだろうと言うことで、とりあえずOKをしています。 しかしながら、それが大きくずれます」
「それはお前の善し悪しの判断基準が悪い! お前は、自分の業界が去年と同じ状態が続くような、変動をしない業界とでも思っているのかな?」
「いえ、そんなことは思っていません。毎年変動が激しいと思っています」
「それなら、前年と比較する意味はどこにあるのかな?」
 社長は少し考え、力なく答えました。
「あまり、ありません」
「根拠にならないものを拠り所としているから、判断を間違えるのじゃ!」

「それではどうすればよいのでしょうか?」
 すると神様はちらりとお賽銭箱を見ました。 社長はピント来ました。そしてすぐに財布から1万円札を出し、お賽銭を追加しました。
 神様はニッコリ笑って話を続けた。 お賽銭箱

「お前さんが数字計画だけを見ている限り、その妥当性は判断できない。なぜならお前さんの見ているのは、結果数字だからじゃ」
「では何を見れば良いのでしょうか」
「結果数字は何によってもたらされるのかな?」
「それは店舗が打つ施策によってもたらされます」
「そうじゃ、具体的な行動によって結果はもたらされる。 だとすれば、お前さんのチェックすべきことは、結果数字でなく、それを生み出すための行動、 つまり店舗が実施しようとしている施策を見る必要がある。そうではないかな?」
「おっしゃる通りです」
「だったら、年間数値計画と一緒に年間行動計画を立てて、提出してもらえばよいだけではないか」

「それはそうなんですが、どんな遊技台がでてくるのかわかりませんし、競合店がどのような手を打ってくるかが分からないので、 年間行動計画を立てるのは難しいのではないでしょうか?」
「お前さんは本当に何も分からないのか?」
 そう言うと神様はジッと社長を見つめました。社長はいたたまれず言いました。
「すみません。だいたいわかります」
「そうじゃろう。長年同じ業界にいて、全く分からないということはないはずじゃ」
「おっしゃる通りです」
「これまでの知識を活用して、まずいつどんなことが起こるか予想することじゃ。つまり、計画を立てる前に前提条件を明確にしておくことじゃ」
「なるほど」社長は手帳を取り出して、メモをした。

「長期の計画立てるときに大切なのが、前提条件を明確にしておくことじゃよ。おそらくこうなるだろうというものを、自分で考えたり、部長や店長に考えさせ、それを明確にしておく。 それを基に行動計画を組み立てていけばよいのだ」
「行動計画?ですか」
「前提条件を明確にすることで、経営者と現場の認識が共有化される。それを基に行動計画を立てることが大切なのじゃ。これが無いと議論ができない。
 行動計画は、達しすべき課題とそのための施策をスケジュール化することじゃ。 これができれば経営者と現場責任者との間で結果を予測し、その妥当性について検証をするのじゃ」
「なるほど、施策の妥当性が検証できれば、計画数値の妥当性が判断できるということですね」
 神様は大きく頷いた。

「計画を遂行していく中で、前提条件が崩れたときが、計画の見直しのタイミングとなる。安易な計画変更は、計画を軽んじ、計画能力を向上させないが、前提条件の変更に基づくものはそうではない」
「わかりました。今年の年間計画は、数値だけではなく、前提条件を明確にし、行動計画書を書かせることにします。ありがとうございました!」
 そう言って社長は帰ろうとしました。
 その時神様が近寄って社長の耳元で囁いた。
「上手く行った時は・・・・・・!!」
 社長が振り返るとそこには、もう誰もいませんでした。ただ静かに鎮守の森が風でそよいでいるだけでした。

★・・・他の寓話も見る

               掲載日:

inserted by FC2 system