コミュニティマネジメント研究所

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パチンコ寓話

パチンコ・イノベーションを促進させる短編寓話集

◆◇◆ 第20話 社員の幸せ ◆◇◆

 むかし、むかしあるところにパチンコ店を運営している企業がありました。
 業績が思わしくないので、社長は本部からいろいろと指示を出すことにしました。
 ところが、会社の伝達事項が各店舗のスタッフにスムーズに伝わりません。 店舗のスタッフが本部の伝達事項を知らないということがしばしばありました。

 店長会議で社長は店長たちを叱責しました。
「なぜ、本部からの伝達事項がスタッフまで伝わらないのだ」
 店長は口頭で伝えていることを口々にアピールしました。
 その時、本部スタッフの一人が伝達内容を店舗で掲示することを提案しました。
「よし、それでいこう。本部の伝達事項をスタッフの休憩室に必ず掲示をするようにしなさい。口頭で伝えたうえに、掲示をすれば改善するだろう」
 社長はそう言って、この話を終わりにしました。

会議

 しかしながら、2か月経っても状況はあまり変わりませんでした。
 社長は店長会議の議題に『社内の伝達事項の徹底』を再び取り上げ、店長に改善できない原因を聞くことにしました。 すると多くの店長は、徹底できないのは、スタッフの中の漢字があまり読めないものがいるのが原因とのことでした。
 社長は 言いました。
「で、お前たちはどうすれば良いと思っているのか」
 社長は店長を順に指名しました。
「A店長」
「はい、この問題は単純です。 私は本部の文章に、なるべく漢字を使わないようにすれば良いと思います。 そうすれば、この問題は解決すると思います」
「B店長」
「私は、それではダメだと思います。本部の文章の中の漢字は当用漢字で、難しいものはありません。 やはり漢字を使わないと、何が書いてあるか、漢字を使い慣れた人間は逆に分かりにくくなると思います。 したがって、本部の文章のすべてにルビ(ふりがな)をふれば、この問題は解決すると思います」
「C店長」
「私は、この問題は、当用漢字を読めないスタッフにあると思います。 だから、読めるようにすればよいだけです。 当面はB店長の案を採用しつつ、全社員が当用漢字をマスターするように、漢字検定の勉強をさせるべきだと思います」
「C店長、それはやり過ぎじゃないか」
 A店長が言いました。
「理屈としては分かりますが、そこまで会社としてやるのもどうかと思います」
 B店長も反対した。 それに何人かの店長が賛同した。

 ざわつきが収まると社長はD店長を指名した。
「それではD店長」
「はい、私は、C店長の案で行くべきだと考えます。わが社は『従業員の幸せ』を重視することを経営理念で掲げています。 幸せな社会生活を送るために、当用漢字を知らなくても大丈夫かと言えば、そうではないと考えます。
 例えば、社会生活において契約などは普通に発生します。その契約書にはおそらくルビはふってないと思います。 市役所への申請でも文章を読めないと不便に感じるでしょう。
 さらに言えば母子手帳をもらって漢字が読めないでは、子育てもできないでしょう。 学校の手続き、市役所への手続き、いろんなものが文章を読むことを前提としています。
 漢字を読めないのを仕方がないとするとう方針と、漢字が読めないなら読めるために指導するという方針、どちらが真に『社員やスタッフの幸せ』につながるかは明らかです」
「・・・・・・・」


(ポイント)
1.問題に対する解決策は一つとは限らない。
2.『従業員の幸せ』という観点から考えると、一般社会人として生活に問題ない程度までの能力アップは必要であり、それが店舗のレベルアップにつながる。

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