コミュニティマネジメント研究所

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パチンコ寓話

パチンコ・イノベーションを促進させる短編寓話集

◆◇◆ 第24話 サービスと作業 ◆◇◆

 むかしむかしあるところにパチンコ店がありました。 そこで同じ年の3人の女性アルバイトが働いていました。 3人とも同じ時期に入り、ホール業務をしていましたが、お客様の評判に差が出てきました。

 一番評判の良かったのは、A子でした。 A子はお客様からわざわざ呼ばれてお菓子をもらったり、お客様が旅行に行ってきたからと、お土産をもらったりしていました。 A子はそれを報告し、店長はそれを休憩室でみんなが食べるように指示をしていました。

 ある日B子とC子が休憩室に入ると、またお土産のお菓子が置いてありました。 そのお菓子を食べながら、主任と男性アルバイトが話をしていました。
寓話
「A子って、お客様から人気があるよね」
「そうですよね。A子ばっかりですよね」
 B子とC子の気づいた主任は二人にお菓子を勧めました。
「A子がまたお客様からもらったお菓子。ふたりもどう?」
 その時、二人がニヤッと笑ったようにB子とC子は感じました。 それはまるで、A子のようにあなたはなぜお土産をもらえないの? と言われているようでした。
 B子は「今、お腹が一杯です」と言って、出て行きました。 C子はお菓子を一つもらいましたが食べませんでした。

 ◇◇◇

 その日、B子はなかなか寝付かれませんでした。
『なぜ、同じホール業務をしているだけなのに、A子はお客様の評判が良く、お土産まで買ってきてもらえるの?』
 B子はお客様の不公平に腹が立ちました。 考えれば考えるほど、世の中の不公平さが目についてきます。 こんなことなら、不公平な人に対してホール業務の手を抜こうかと考えました。 頭の中で、そういう人はいっそのこと病気や事故にでも遭えばいいのにと思いました。

 その瞬間耳元で声が聞こえました。
「全く、あなたの考えは正しい」
 驚いて目を開けるとそこに執事の格好をした悪魔が立っていました。
「あなたは誰?」
「恐がることはありません。私はあなたの呼びかけに応じたものです」
 後ずさりしようとするB子にニッコリ微笑み声を掛けました。
「B子さまのおっしゃることはもっともです。
 A子と同じようにB子さまは頑張っておられます。 玉箱の上げ下げ、ひざ掛けを持って行ったり、クレーム処理もしておられます。 お客様の評価はA子より低い。とんでもないことです。
 私はあなたがお怒りになるのは、ごもっともだと思っております」
 A子は救われた思いがした。
「そうでしょう。私は毎日頑張っているわ。A子と同じように笑顔で対応もしている。なぜ、A子だけ評価が高いの?」
 悪魔は何度も頷いた。
「おっしゃる通り、A子だけ評価が高いのはおかしい。 店舗に来るお客様が間違っているのです。お客様と言えども、スタッフをえこひいきするのは持っての他です」
 その言葉を聞いて、私の気持ちが分かってくれる人がいるとB子は思いました。
 B子は、悪魔に散々A子の悪口を言い、鬱憤を晴らしました。 そのお蔭でぐっすり寝ることができました。

 ◇

 同じ日、C子もなかなか寝付けませんでした。
『なぜ、同じホール業務をしているだけなのに、A子はお客様の評判が良く、お土産まで買ってきてもらえるの?』
 C子はいくら考えても、なぜ、A子と違いがでるのか分かりません。 自分に至らない点があれば教えて欲しいと神様に祈りました。

 一時間ほど経った頃、突然目の前が明るくなりました。
「C子や、何をそんなに悩んでいるのだ」
 驚いて目を開けるとそこに神様が立っていました。
「あなたは誰?」
「恐がることはない。私はあなたの呼びかけに応じたものじゃ」
 後ずさりしようとするC子にニッコリ微笑み声を掛けました。
「C子よ、そなたはA子の評判が良いのに、自分の評判が良くならない理由を知りたいんじゃろ!」
「そうです。私もA子と同じように、玉箱の上げ下げ、ひざ掛けを持って行ったり、クレーム処理もしています。 笑顔もちゃんとしています。でもぜなぜA子みたいに評価されないんでしょう?」
「それは簡単じゃ。A子はサービスをしているが、C子、お前は作業をしている。その違いじゃ」
 C子は何を言われているかよくわかりませんでした。
「すみません。おっしゃっている意味が分かりません。私もA子も同じことをしているんですけど・・・」
 C子の言葉を聞いて、神様は大きく笑いました。

「C子や、お前はサービスと作業の違いを知らないようじゃな」
 C子は戸惑いました。『この人、何を言ってるのだろう』
「同じことをしていても、お客様に言われてからするのが作業。お客様から言われる前にするのがサービスじゃよ」
 C子は初めて聞く話でした。
「言われてからするのは、相手の指示で動いているに過ぎない。 言ってしてくれることは助かるとは思っているが、それ以上でも以下でもない。 作業している人から自分を大切にしてもらっている気遣いは感じない。 誰にでもやっていることならなおさらだ。 多くの人の中のひとりとして。自分にも対応していると思っているだけだ。 だから、特別に何かをしてあげたいとかは思わない」
 C子は確かにそうだと思った。
「一方、言われる前にするのは、お客様の立場に立って、何をして欲しいか察することができるからじゃ。その結果、お客様の言(指示)を待たずに行動を起こす。 そこにはお客様に対する気遣いがある。人は人から気遣ってもらうとうれしい。自分を大切にしてくれているのが分かるからね。
 だから、相手も気遣いをしてお土産などを買ってくる。 気遣いの返報性じゃな」

 C子は神様に言った。
「私も、たまに言われる前にやることもあります」
 それを聞いて神様はまた大笑いをした。
「C子よ。自分も頑張ってると言いたいんじゃろ。それは分かる。
 でも、お客様から見て、たまに言われる前にしてくれるのは、気遣いというより偶然と思える。そうじゃないかな」
「それはそうですけど・・・」
「では、言われる前にしてくれることが、たびたびあるとどうじゃろ?」
「それは偶然じゃなく、気遣いと感じると思います」
 それを聞いて神様は頷いた。
「そうじゃな。お客は言われる前に対応してくれても、最初は偶然と思うじゃろう。 ところが、それが重なってくると、C子よ、お前が言ったように気遣いと思ってくる
「そうです」
 神様は、C子を見た。
「思い出してみると良い。A子の評価ははじめはB子やC子と同じじゃったはずだ」
 C子は言われてみるとそうだと思った。
「それはA子の行動が、お客様も偶然か気遣いか分からなかったからじゃ。
 しかし、それがいつも行われるのが分かるにつれ、A子の気遣いとお客が感じ、評価が高くなっていった。そうじゃないかな。
 当初からA子はいつもお客から言われる前に動いていた」
 C子は頷いた。
『確かにA子は、いつもコールランプがつく前にお客様のところに行って、玉の上げ下げをしている。 台トラブルも、お客様の異変に気付いて、コールランプがつく前に話を聞いている。 私と言えば、コールランプを見てから動いている』
 C子は納得した。それにお客様がコールランプを押すまでは対応しない方が良いと、勝手に思い込んでいたことに気づいた。 気がつくと神様はどこかに消えていた。
 疑問が解けたC子は、その夜がぐっすり寝ることができた。

 ◇◇◇

 翌朝、十分に睡眠をとって元気いっぱいのB子とC子が店舗にやってきた。 二人は元気よく、朝の挨拶を声を揃えてみんなにした。



(ポイント)
1.B子は、評価されない原因を誰にあると思ったか。
2.C子は、評価されない原因を誰にあると思ったか。
3.サービスと作業の違いを人に説明できるか。
4.サービスを継続して行う意味とは何か。

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