◆◇◆ 第30話 人材育成と愛別離苦 ◆◇◆
むかしむかしあるところにパチンコ店を経営している会社がありました。
社長Aは、日頃から人材育成が大切だと思っていました。
そこで部長や店長より、次の世代の人材こそが大切と考え、主任教育に力を入れ、販促以外の経営についても教育していました。
ところが人が育って来たと思うとやめていきます。
店長に辞める理由を聞くと、「実家の後を継ぐことになった」「祖父を介護しないといけなくなったので働けなくなった」
「腰を痛めてしまって医者から重いものを持つなと言われた」「(女性の場合)結婚をすることになった」など、どうしようもない理由ばかりです。
仕方がないとは言え、研修やミーティングに参加させたりと、研修費や人件費がかかります。
社長Aは何かいい方法がないものか、昔から知っている知り合いのベテラン社長に尋ねてみました。
話しを聞いた社長Bは言いました。
「Aさんのやり方は間違っているんじゃないかな?」
「どういうことです?」
「Aさんは主任を定着させたいんだろう」
「そうです」
「だったら、主任にマネージメントの教育なんかしちゃダメだよ。
問題発見講座なんか、もってのほか」
「どうしてですか?」
「上司の無能さが見えてくるからさ。Aさん、考えてみてくれよ、自分よりバカな上司のしたで働きたいと思うかい?」
「・・・・・・・」
「それが答えだよ」
「でも辞めて行った人間は、仕方がない理由で辞めてますよ」
「じゃ聞くけど、その裏をとった?」
「とってません」
「そうだろう、人間やめる前にトラブルは起こしたくないから、最もらしい理由で辞めるのは当然じゃないかな」
「・・・・・・・」
「仏教に『愛別離苦(あいべつりく)』という言葉があるんだけど、知ってる?」
「いいえ」
「愛するものと離れることは辛い、という意味。企業経営で言えば、愛するものとは優秀な社員。
優秀な社員は他の企業に行っても通用するから辞めやすい。これは『苦』の一つ。
だから、離れないようにいろんな手を打つ必要があるということ。
それができないなら、主任教育は見直したら?」
「ちょっと考えてみます」
(ポイント)
上に行くほど優秀な人材がいるのが好ましい。だから教育は上から下が原則。会社では社長が一番能力アップが求められます。
店舗で言えば店長です。
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