◆◇◆ 第32話 本部長の見識と問題 ◆◇◆
むかしむかしあるところにパチンコ店を経営している企業がありました。
昔は各店舗の稼働も良く、儲かっていたのですが、パチンコ人口減少とともに稼働が下がってきています。
本部長は各店舗を見て回り、指導をしていましたが、稼働は下がっていくばかりです。
本部長は途方に暮れました。 各店長は頑張っている。 役職者や一般スタッフもしっかり接客サービスをしている。 気になるのは店舗規模と店舗設備です。 新台も入れてはいますが、店舗規模が小さいので、台数は競合より少なくなります。 予算を取ってリニューアルをするべきか迷っていました。
ある日、本部長は社長に呼ばれました。
「最近、業績がどんどん悪くなっている。どうなっているんだ」
「申し訳けありません。地域のパチンコ人口が減少しているので、なかなか稼働が上がらないのです」
「店長はホールをキッチリ運営しているのか?」
「はい、各店舗の店長も優秀です。一生懸命に頑張っています」
「これ以上何ともならないの?」
「これ以上無理に働かせると、辞めてしまうかもしれません」
「じゃ、役職者は?」
「彼らも、率先してホールで働いています。彼らも頑張っています」
「じゃ、スタッフは?」
「社員もアルバイトも走り回って接客をしています。お客様の評判も良いみたいです」
「運営企画はどうなの?」
「それも他店を見に行くなど、競合店と遜色ないレベルでやっています」
「新台入替は?」
「ご存知のように、最近の新台は魅力がなく集客効果は、もう一つですが、できるだけのことはやっています」
「出玉は?」
「やっていますが、このご時世ですので、あまり表立ったこともできず、効果はすぐには・・・」
社長はダンダン腹が立ってきました。
「人も問題ない、運営企画も問題ない、新台入替も出玉もしているのに、なぜ、稼働が下がり続けるんだ!?」
本部長はか細く答えました。
「言いにくいのですが、やはり店舗規模とその古さがネックかと・・・」
社長は本部長を睨(にら)みました。
「分かった、もういい」
本部長は社長室から出て行きました。
◇ ◇ ◇
社長は東京に出張に行った時、親しい友人に愚痴をこぼしました。
「昔は良かったよね」
「どうしたの?」友人は聞きました。
「今は何をやっても上手く行かないんだ」
「それはたいへんだ」
「店長をはじめ、みんないろいろと工夫して頑張っているけど、稼働を上げるのは無理みたいでさ、でもリニューアルにはお金がかかるし・・・悩んでるんだ」
「本当にみんな頑張っているの?知恵を出して工夫しているの?」
「本部長はそう言っている。優秀だと」
「社長自身が現場で確かめてみた?」
「俺も他の商売もあり、なかなか現場までは・・・」
「もしかしたら、本部長の知識や見識が低くて、店舗運営の問題点が分からず、店長や役職者が優秀に見えてるだけなんじゃないの?」
「・・・・・・・」
(ポイント)
知識と見識の量と質で問題を発見する力が決まってくる。 両方が不足すると相手が優秀に見え、改善点が発見できなくなる。
★親しい友人トークの続き・・・・
「中学生のサッカー選手が、小学生のサッカーを見て下手だな、問題ありと思うだろう。
しかし、中学生のサッカー選手が高校生や大学生のサッカーを見て、下手だなとは思わないだろう。
それと同じさ。おそらく日本代表クラスの選手らな大学生選手の課題をなんなく見つけ出すと思うけどね。
今業界が厳しいから、稼働の立て直しには少なくともプロサッカー選手のレベルが求められていると思うよ。
レベルが低いと小学生のサッカー選手でさえ凄いと感心できる。
部下も褒(ほ)められるから悪い気はしないけど、悲惨だね。
能力アップできない部下は、世間では通用しなくなっていくから、最終的に不幸になる。
つまり、褒(ほ)められながら、使いもにならなくなっていく、ある意味、褒め殺し状態かな」
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