コミュニティマネジメント研究所

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パチンコ寓話

パチンコ・イノベーションを促進させる短編寓話集

◆◇◆ 第36話 人生のPDCA ◆◇◆

 むかしむかしあるところにパチンコ店の経営者がいました。
 ある年、新型コロナウイルスが発生し、たいへんな一年を過ごしました。
 翌年の正月の初めに社長は新年の挨拶を社員にしました。 そしていつものように「地域に貢献する地域密着店として、今年も頑張りましょう」と締めくくりました。
 今年の正月はコロナ禍にも関わらず、ホールに思った以上の多くお客様が来られました。 店長をはじめ従業員も休むことなく真面目に働いています。 毎年のようにクレームはありますが、想定の範囲内です。 社長は安心して、近くの閻魔堂えんまどうに初詣に行きました。
 元旦営業が終わり、新型コロナ感染防止ということで、会食もなく、早々に自宅に帰ってきた社長は、早めに寝ることにしました。
   ◇   
 ふと気が付くと何かの行列に並んでいます。
 みんな2mの社会的距離をとって、順番を待っています。 社長は、薄暗くて自分のいる場所がどこか分からないのですが、並んでいることに抵抗感がなく、前の人を移動に合わせて自分も前進していきます。 列が進んでいくと少し明るくなり、回りの様子が分かってきました。 どうも裁判所のようなところに来ているようです。

 さらに進むと列の中央に座っているのがなんとなく閻魔大王えんまだいおうであることがわかりました。 見覚えのある昔の中国の官僚服のようなものを来ているわけではなく、 日本の裁判官が来ているような服を着ています。

 『もしかしたら、俺は眠りながら死んでしまったのだろうか』 そんなことをぼんやりと考えていました。 さらに近づくと、前に並んでいるのが顔見知りのパチンコ店の社長たちであることが分かりました。 閻魔大王の前で何か問答をして、閻魔大王の両横にある6つの出口のいずれかに向かって歩いていきます。

 さらに近づくとその問答の様子も聞こえてきます。
「あなたはパチンコ店で何をしていたんですか?」 3つ前に並んでいる先頭に立った顔見知りの社長が答えます。
「私はパチンコ店で多くの人が勝っても負けて幸せな気分になってもらう店づくりをしていました」
「そうですか。 それはご苦労様でした。 これからあなたは自分の創った世界をしばらく体験してもらいます。 充分に堪能たんのうしたら、次の人生を計画してもらいます。 それではお気をつけて」
 閻魔大王はそう言うと、1つの出口を指さし、答え終わった社長は静かに歩いて出口へと進んでいきました。

寓話

 それと同時に2つ前の顔見知りの社長が閻魔大王の前に立ちました。
「あなたはパチンコ店で何をしていたんですか?」
先ほどと同じ質問です。
「私はパチンコ店でささやかな賭博を提供していました」
「そうですか。
 それはご苦労様でした。 これからあなたは自分の創った世界をしばらく体験してもらいます。・・・」
閻魔大王は、同じことをしゃべり、先ほどとは違う出口を指さしました。

 また列が動き、一つ前にいる社長が先頭になりました。
「あなたはパチンコ店で何をしていたんですか?」
「私は地域の人にささやかな娯楽を提供していました」
「そうですか・・・」
1つ前の社長もまた違う出口へと消えていきました。

 いよいよ自分の番になった社長は、いつも口癖になっている「地域に貢献する地域密着店として地域の人々のために尽くしてきた」と説明しようと思っていました。
 閻魔大王の前に立ち、質問されると、勝手に口から声が出てきました。
「私はパチンコ店で多くの人からお金を巻き上げていました」
 社長はマズいと思いましがどうにもできません。
 しかし、閻魔大王は怒ったり、声を荒げることもなく
「そうですか。 それはそれはご苦労様でした。 これからあなたは自分の創った世界をしばらく体験してもらいます。 充分に堪能したら、次の人生を計画してもらいます。 それではお気をつけて」
と慈愛に満ちた声で出口を指しました。

 社長は思い切って聞きました。
「すみません、私は地獄に行くんでしょうか?」
 閻魔大王は答えました。
「今、言いましたように、これからあなたが人に対して行ったことを体験するための世界に行きます。 物事は2つで1つです。陰と陽が合わさって世界を作っています。
 例えば、パチンコホールでサービスした体験と、サービスをされた体験の2つを経験して、サービスとは何かを理解できます。 一方だけ知っていても真の理解にはならないのです。 だから、人を殴る体験をすれば、こちらでは殴られる体験をする。 これで物事の理解が完結します。 これを人は因果応報と言いますが、厳密には自分の行為を理解のための体験プロセスです」
 社長は怪訝そうに頭を傾けました。

 閻魔大王はさらに説明がいると思い話を続けました。
「これはあなたの魂が向上するための仕掛けです。 身近な例で言えば、あなたがよく経営でやっていたPDCAと同じことを魂がしているのです。
 あなたは生まれる前にどのような人生を歩きたいか決めた。 これが「P(PLAN)」つまり計画です。
 そして、この世と呼ばれる物質世界に生まれて、人生を経験した。 これが「D(DO)」実行です。
 人生が終わると自分の人生の検証をします。 検証は人生の出来事を完全に理解する必要があるので、あなたが人生で行ったことを反対の立場で体験してもらいます。 これによって2つで1つの天のことわりを悟り、自分の行った行為を理解し、改善点を探します。 これが「C(CHECK)」検証です。
 このステップは特に大切なので、本人が自分の行為を理解できるまで繰り返し繰り返し、なんどでも再現されます。 あなたの会社でも、施策を実行して検証しない店長、検証ができない店長は能力が伸びなかったでしょう。 魂も同じです。 だからあなたが体験した人生を無駄にしないために、徹底検証します。
 恐らく現世で地獄と呼ぶのは、人を殺したの中には、1回殺されただけでその意味を理解できず、何度でも何度でも理解できるまで殺される検証体験をするからでしょう。 それを傍から見た人が地獄と表現しているのではないでしょうか。 でも心配はいりません。 あの世ですから、恐怖や痛みを体験するだけで、死にはしません。
 逆に天国と呼ぶのは、人を幸せにした人が、何度でも人から親切にされ、良くしてもらう検証体験をするからです。 これを傍から見ると天国と写るのでしょう」
そう言って閻魔大王が少しほほ笑んだように見えました。

 社長は何となくあの世とこの世の関係が分かってきました。
 閻魔大王は話を続けます。
「そして人生の検証をした後は、次回の人生をより充実した体験をする為の改善を考える期間が用意されています。 それが「A(ACTION)」改善です。 その改善が納得いくものになると、また次の人生の計画「P」に入ります。
 魂はこのようにPDCAを繰り返して成長しているだけです。 誰もあなたを罰したりすることはありません。 安心してください。
 人間の創ったものは消滅しますが、魂は神がつくったものであり、永遠の存在で消滅することはありません。 そして魂は自分でPDCAサイクルを回して向上し、いずれ神へと昇華されていくものです。 あなたは既に何万回も検証経験をしています。 安心して今回も人生の検証に臨んでください」 そういうと閻魔大王は再び出口を指しました。

 社長は指示され出口へと歩きながら、自分が今までしてきたことを考えました。 そのとたん額から玉のような汗が噴き出してきて止まりません。 胸が急に苦しくなり、息が荒くなってきました。

     ◇

 気が付くといつもの寝室です。 時計を見ると寝てからまだ30分ほどしか経っていません。
『これが初夢か?・・・』
 社長は寝付けず、今年の会社運営方針を考えていました。

 それからしばらくして、「同じ負けるならあのホールに行きたいね」と多くの人に言われるように・・・・。

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