コミュニティマネジメント研究所

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パチンコ寓話

パチンコ・イノベーションを促進させる短編寓話集

◆◇◆ 第38話 接客のプロの活用 ◆◇◆

 むかしむかしあるところにパチンコ店を経営している社長がいました。
 新台入替をしても出玉をしてもなかなか稼働が伸びません。
 そこで接客を強化で何とかしようと考えましたがなかなかうまくいきません。
 そんな時、同業者の会合があり、そこに参加したある社長が接客サービスを強化して稼働を伸ばしたという話をしていました。
 聞き耳を立てていた社長は、その社長が接客サービス強化のために、有名ホテルのホテルマンをスカウトしたことを知りました。
 スカウトしたホテルマンにスタッフ教育を任せたところ、しばらくして接客サービスが良くなり、稼働も上がったとのことでした。
 社長はこれだと思いました。

   ◇   ◇   ◇   

 社長はしばらくして有名ホテルの元ホテルマンを採用することに成功しました。
 出勤初日、社長は採用した元ホテルマンを社長室に呼び、期待して言いました。
「よく来てくれた。 わが社は接客サービスを強化したいと考えている。 君には大いに期待しているよ。 遠慮なく、君の思う通りにやってくれて」
 元ホテルマンは採用と教育を担当している総務部長の補佐という肩書で店舗のサービス研修の指導をしていきました。
 社長は月1回程度、総務部長から研修状況を聞いていました。

寓話

 元ホテルマンが来てから半年たちましたが、なかなか成果がでません。
 スタッフの笑顔や挨拶が多少ましになった程度です。業績は相変わらずです。
 社長は総務部長に言いました。
「総務部長、元ホテルマンの彼は君の部下だろう。 しっかしサービスを強化するように指導しないとダメだよ。 君も昔は店長でバリバリやっていたんだ。 どうしたら、ホールの人間が動くのか分かっているだろう。 頼むよ!」
 総務部長が社長室から出ていくと、営業部長が声を掛けてきました。
「社長に言ってくれた? 接客サービス研修も良いけど、業績が大変だから利益を出すために経費の削減で人員も減らしている。 正直研修をしている暇はないよ。 元店長の君ならそれくらい分かるだろう。 元ホテルマンは君の部下だろう。 しっかりコントロールしてくれよ」

   ◇   ◇   ◇   

 採用してから1年になりますが、大きな成果がでません。
 社長は営業部長と総務部長を呼びました。
「総務部長、成果が出てないじゃないか!」
「すみません、私もいろいろとアドバイスはしてるのですが、どうもうまくいきません」
「社長、総務部長も頑張っています。利益が減ってくる中で、これ以上余分な人件費を掛けるのはやめましょう」
 社長は決断しました。 そして、総務部長から元ホテルマンに大幅な年収カットを伝えました。 元ホテルマンはすぐに退職をしていきました。

   ◇   ◇   ◇  

 それから1年経ち、久しぶりに会合に参加すると、2年前に接客サービスの改善で稼働が増えた、と言っていた社長も来ていました。
 相変わらず周りの経営者に接客サービスの改善で稼働が上がったと話していました。
 それを聞いていた社長は知り合いの社長に言いました。
「接客サービスの改善で稼働が上がったのはたまたまじゃないかな」
「そうですか?・・・。私は効果があると思っているんですけどね」
 知り合いの社長は少し声を低めて言いました。
「実は私のところも接客のプロを採用し、稼働が上がったんですよ」
「そうなんですか・・・」
 社長は思いました。 やっぱり、採用した元ホテルマンの質が悪かったんだ。 そしていい加減な人材を紹介した人材バンクに腹が立ちました。

寓話

 会場にアナウンスが入り、今月の発表者ということで見知らぬ経営者が壇上に立ちました。 そして大きなスクリーンに「接客サービスの強化」という文字とともに、ある人物の写真が大きく出されました。 その下には「人事戦略部長」と肩書が書かれています。
 社長は写真を見て思い出しました。 1年前に見限った元ホテルマンです。
 壇上に立った経営者は言いました。
「我が社の接客サービスが変わり、稼働が良くなっていったのは、接客のプロを招いたからです」
 社長の頭は一瞬空白になりました。
 壇上の経営者は話を続けました。
「優秀なプロを雇うのは始まりにすぎません。 成果は経営者がそのプロをどこまで使いこなしたかで決まります。
 もっともやってはいけないことは、プロに手枷足枷てかせあしかせをつけることです。
 具体的に言えば、元店長の部下にすることです。 素人がプロを使いこなせるはずがないじゃないですか。
 だからすぐに成果を出そうと思えば、社長直属のポジションを与え、招いた接客プロとコミュニケーションを密にとる必要があります。
 また、営業部門の長と対等の役職にしないと、接客サービスの重要さを全社員に伝えることはできません。 一種の権威付けであり、接客サービスの強化方針の見える化です。 権威の無いものに人は従いません。
 それから人事制度の見直しです。 接客サービスの能力をアップすることが、昇進昇給の条件になること明確にしないで、誰がいうことを聞くでしょうか。・・・・」
 その経営者の発表は30分間続きました。

 発表が終わると先ほど知り合いの社長が声をかけてきました。
「今日紹介された人事戦略部長はやり手だよね。今度、彼の勉強会があるけど、良かったら社長も参加してみない?」
「・・・・・・」

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