コミュニティマネジメント研究所

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パチンコ寓話

パチンコ・イノベーションを促進させる短編寓話集

◆◇◆ 第39話 天使にりつかれた店長 ◆◇◆

 むかしむかしあるところにパチンコ店が複数ある地域がありました。
 そこへ2匹の悪魔がやってきました。
 「先輩、この地域のパチンコ店を地獄化するんですか?」
 「そうだ。ここは業績が思わしくない店舗も多い。悪くないだろう?」
 「そうですね。さすが先輩。ではさっそく様子を見てきます」
 後輩悪魔は嬉しそうに地域の様子を見に行きました。

 見に行くと、多くのパチンコ店にすでに悪魔が入り込んでいます。 これは入り込む店舗が無いないかもしれないと思いながら、あるパチンコ店をのぞくと天使がいます。
 後輩悪魔は慌てて、先輩悪魔に報告に行きました。
「どうした後輩?」先輩悪魔は声を掛けました。
「先輩ダメです。業績に悪い店にはほとんど他の悪魔が出入りしています。 唯一業績が悪い店で悪魔がいない店がありましたが、そこには天使がいました」
 言い終わると後輩悪魔は手で✖をつくりました。
 先輩悪魔は少し考えると後輩悪魔に問いました。
「その天使は、ガブリエル級の大天使か?」
「いえ、そうではありません。まだ若かったように思います」
 先輩悪はニヤッとわらいました。
「諦めるのは早計だ、私が様子を見に行こう」
 そういって先輩悪魔は後輩悪魔を連れてパチンコ店に入っていきました。 ホールの中には天使はいません。 事務所に行くと天使が店長の横で何やらささやいています。

   ◇   ◇   ◇   

 店長は悩んでいました。 頑張っているのですが、なかなか業績が上がりません。 地域市場全体が縮小し、地域のパチンコユーザー自体が減っているのです。 店長は業績が下がっているものの、地域における自店のシェアでは、少し伸びています。 しかし、社長からそのことは評価されず、お客様の絶対数を上げるように言われます。 明日、月に一度の店長会議があるので、店長は落ち込んでいたのでした。

 天使は店長を熱心に囁きました。
「店長、あなたは頑張っているわ。 稼働は下がっているけど、地域シェアは上がっているのだから、落ち込まないで。 あなたは優秀よ。 よく頑張っているわ。 近所の競合店の店長より、断然頑張っている。 無理は禁物よ。 あなたは、められて伸びるタイプなのだから、ここは我慢よ。 人を見て指導できない問題は社長にあるけど、責めてはダメよ。 広い心で、社長が改心するまで待ちましょう」
 落ち込みそうな店長の心をなんとか励まそうと天使は必死でした。

寓話

 壁越しにその様子を見ていた先輩悪魔はニッタリしました。

   ◇   ◇   ◇

 先輩悪魔はパチンコ店を出ると後輩悪魔に言いました。
「問題ない。天使が良い仕事をしてくれている」
「本当ですか?」後輩悪魔は思わず声が出てしまいました。
 先輩悪魔はニヤッと笑い、本当だと答えました。
「先輩、後学のためにその理由を教えてもらえませんか?」
「後輩、自分で考えろと言いたいが、特別に教えてやろう」
 そう言って出て来たばかりのホールを振り返りながら、話を続けました。
「あの天使は子供なのさ。 相手の良いところは褒める。 しかし、相手の見識を引き上げない。 その結果、相手の他者に対する理解や洞察ができない。 自分は正しくて、それを認めない周囲に問題があると考える。 つまり自分のことしか考えることができない。 子供はそうだろう。 したがって組織における自分の位置づけができない。
 社長から見れば問題児だ。
 加えて、あの店長は自分は十分頑張っていると思っている。 そんな人間はこれ以上頑張ろうとしない。 つまり、能力開発ができない。 今発生している問題は、今の能力で解決はできないのは明白だろ。 だから問題となっているんだ。 それなのに能力開発をしないということは、問題は絶対解決されない。 つまり業績は改善しない。
 あの店長はいずれ降格か左遷される。 上手く行けば、店舗は潰れる。 今の天使はそれを助長している」
 話を聞いて後輩悪魔は納得しました。
「そう言えば天使は、社長の立場になって考えるようには言わなかったですね。能力開発の必要性も」
「あの天使は子供だから、店長を励ますのに必死で気が回らなかったんだろう」
「なるほど・・・」
「ところで、後輩。おまえの果たすべき役割は何か分かっているな」
「分かっています。店長を頑張らないようにすることです」
「具体的な方法を言ってみろ!」
「天使のいない時は、頑張ろうとする店長に『お前は十分頑張っている。無理はしないで!悪いのは社長だけど、広い心で受け入れて・・・』と囁くことです」
「い~ぃね~。じゃ後はお前に任せた。天使に見つからないように気を付けろよ。 万一見つかった場合は、天使の言葉に感銘を受けて、勉強させてもらっていますと言っておけ。 天使は悪魔を感化できたと喜ぶぞ!」
「わかりました。頑張ります」

   ◇   ◇   ◇   

 数か月後、地域シェアは上がっていったのですが、 店舗を維持するだけのお客様数を獲得することが出来ず、とうとう閉店してしまいました。
 天使は店長に囁きました。
「あなたはこれまでよく頑張ったと思います。 パチンコホールは、この店だけじゃないわ。 あなたの働きを認めてくれる会社はきっとあります。 落ち込まないで、前を向いて歩きましょう。 私はいつもあなたの味方です!」

 その様子を遠くから見ていた後輩悪魔が先輩悪魔に言いました。
「天使に憑りつかれるのも厄介ですね」
「そうかな?でも、店長の頭の中だけはいつもハッピーだぜ!」

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