◆◇◆ 第45話 見えていない ◆◇◆
むかしむかしあるところにパチンコ店で働いている店長がいました。
社長から接客を強化するように言われ、スタッフにもそのことを伝え頑張っているのですが、業績はあがりません。
接客が良いと言われているパチンコ店を見に行きましたが、それほど自分たちの接客が劣っているように思えません。
社長からも、他業種の接客を見て勉強するように言われ、有名なホテルやレジャーランドにも行きましたが、やはり同じです。
確かに接客は良いとは思いますが、それに比べて自分の店舗が劣っているとは思えませんでした。
社長から「どうだ、勉強になっただろう」と言われますが、
業界や業種が違うので、お客様の層も違えば、お客様の望んでいるものも違いがあり、
単純に比較をすることはできないと思っていました。
しかし、社長から「勉強になっただろう!」と言われると「非常に勉強になりました。見学出来て良かったです」とは答えていますが、
店長は正直なところ、無駄ではないのかな、と思っていました。
ある日、社長から接客の研修会に参加するように言われて参加しました。 講師の話は面白かったのですが、目新しさはなく、自店でも取り組んでいることがほとんどでした。 店長は自店に帰り、店舗の接客を様子を見ながら、自店はそれなりに出来ていると改めて自店は優秀な接客をしていると感じました。
店長の悩みは業績が上がらないことです。 徐々にダウンしています。 最近良い遊技台があまりないし、出玉もやり続けることはできません。 でも、この状態を打開するためには、社長に無理をお願いすべきかどうか迷っていました。
◇
そのころ社長は研修をお願いした講師と会っていました。
「先生、いがでしたでしょうか?」
「はっきり言って、目が悪い人に掃除を頼んでいるような感じですね」
「目の悪い人?」
「そうです。目が悪い人は部屋が汚いかどうかよく見えない。
例えば視力が0.01の人は、大きなゴミに気づくでしょうが小さなゴミは気づきません。
視力が0.1の人は小さなゴミは気づきますが、ホコリには気づきません。
視力が1.0あれば、ホコリやチリも見ることがきます」
「ということは・・・」
「人間、見えているゴミやホコリはキレイにできますが、見えないゴミやホコリはキレイにできません。
見えないからです。
だから、見えない人にいくら部屋が汚いからキレイにするように言っても、キレイになりません。
それは本人が頑張っているかどうかの問題ではなく、見えているかどうかの問題です。
見えていない人に見えないゴミやホコリまでとってキレイにするように言っても酷(こく)な話です.
本人は自分は見えていて、しっかりやっていると思っていますから、追い詰めても良い結果はでないでしょう」
「それでは先生、我が社の接客を改善するためには・・・」
「そうです。当り前ですが、店長の目を見えるようにするのが第一でしょう。
店長の見る目以上に店舗が良くなることはありません」
「ではどうせすれば・・・」
「店長の目を良くするための訓練や矯正をする。
もちろん、目が良くなる可能性があるというのが前提条件です。
素養のある人材は、私の研修を受けた時に、自分は目が悪いと気づいています。
もう一つは、目が見える人を店長にする、というものです」
「現場が頑張っているのに接客の改善が出来ない理由がよくわかりました。先生、ありがとうございました」
◇
社長が講師と合った帰り道、店長から電話がかかってきました。
「社長、お忙しいところ、恐れ入ります」
「何だね」
「お話をしたいことがあるのですが、・・・」
「ちょうどよかった、それじゃ、明日の午後一で社長室に来てくれ・・・」
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