コミュニティマネジメント研究所

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パチンコ寓話

パチンコ・イノベーションを促進させる短編寓話集

◆◇◆ 第48話 関係作り企画① ◆◇◆

 むかしむかしあるところにパチンコ経営をしている社長がいました。
 新台も昔のように良い台がでない。出玉をやっても効果が薄い。 これではダメだと思った時、大学の先輩でもある同じパチンコ業をしている先輩から、 お客様との関係強化を軸にしたホール経営の話を聞きました。
 社長は思いました。 新台でも出玉でも差別化はし難い。 同じものが提供されるのなら、自分が好感を持つ人から買いたいと思うのが自然だろう。 実際、社長自身、いつも馴染の理髪店に行き、馴染のレストランに足を運んでいました。

 社長は早速、月初に行う店長会議で言いました。
「これからの差別化は、関係作りで行う。 みんな関係を作るように、頑張ってくれ」
 そう言って、コミュニティホール作りの研修会に参加させました。

 初めは何をしていいのか戸惑っていた店長も工夫するようになりました。 多くの店長が取り組んだのは景品企画でした。 物珍しい商品を取り寄せ、お客様と会話をするというものでした。

寓話

 社長は会議のたびに聞きました。
「ところで関係作りは上手く行っているか?」
 ほとんどの店長は上手く行っていると答えました。
「社長、順調です。今度の京都の銘菓取り寄せも好評で、即日完売しました。 食べたお客様からも、『美味しかったよ。また企画してね』という声をもらっています」
 社長はこれなら大丈夫だろうと喜んでいました。

     ◇

 お客様との関係づくりに取り組み始め半年ほど経ちました。 関係作り企画は順調ですが、店舗の業績はダンダン下がってきています。 社長は迷いが出始めました。
『・・・本当にこのままでいいのだろうか・・・』

     ◇

 社長は東京に出張したついでに足の延ばして先輩の社長に会いに行きました。
「ご無沙汰をしています。 実は、先輩に伺いたいことがあって・・・・」
「何だろう?なんでも答えるよ?」
 先輩は気軽に相談の乗ってくれました。
 社長は、これまでの取り組みの様子を話し、お客様との関係づくりをしているが業績が下がってきているという話をしました。 先輩は頷き、社長の話を聞いていました。 社長は話終わると、先輩は社長の取り組みを賞賛しました。

 そして先輩はテーブルの上にあったコーヒーをゆっくり飲むと言いました。
「一つ質問をしてよろしいか?」
「どうぞ、何でもしてください」
「先ほどからよく出てきている、完売しているというお取り寄せ景品なんだけど、1つのホールで何箱仕入れているの?」
「1店舗当たりの仕入れ数ですか?」
「そう、仕入れ数」
 社長は困りました。 店長から何箱仕入れているというような細かな報告は聞いていませんでした。
「すみません。具体的に個数までは聞いていませんでした」
「そうなんだ。もしよければ、今店長に電話を掛けて聞いてみたら・・・」

 社長はすぐに店長に電話をしました。
「お待たせしました。3箱です。一箱8個入っているそうです」
 それを聞いて先輩は言いました。
「今問い合わせた店長の店舗に来られるお客様は、1日何ぐらいいる?」
「会員数だけでも1日200人以上来ます。
 会員化率が4割とすると最低でも500人ほどになると思います」
「そうすると500人に対して24個なので最大で24人と接点を持ったということになる。 先ほどファンがついて、平均2個かってもらっている、中には一人で1箱買う人もいる、といっていたから、 10人ほどがいつもやる景品企画で恩恵を受けているということだよね」
「そういうことになります」
「1日の企画カバー率は、・・・」
「2%です」
「月に何人のお客様が来店される?」
「会員数で750人ほどです。なので、来店客数は1800人ぐらいになると思います」
「ということは、月の企画カバー率は、1800人中の20人だから・・・」
「約1%です」
「それを半年やっても6%だよね。おそらくファンがついているから、実質的にはその半分の3%の人が景品企画に参加したということだよね」
「そういうことになります」

 社長はだんだんマズい展開になってきていると思いましたが、先輩は容赦なく突っ込んできます。
「そのお客様って、常連客じゃないの?」
「おそらく常連客が半分以上になると思います」
「その人達って・・・」
「そうです。すでに関係づくりができている人です」
「関係づくりが出来ている人に関係作りをして、・・・」
「先輩よくわかりました。私のレビューが甘かったことが良くわかりました」
 そう言って社長は、先輩とこの話について終わろうとしました。
「なんだ、終わるのか?」
「先輩勘弁して下さい。先輩のおっしゃりたいことはだいたい全部分かりました」
「そうか、全部分かったのか・・・」
「そろそろ新幹線の時間ですので、・・・」
「さすがは後輩だ、今の景品企画のもう一つの問題も分かっているなら、俺はこれ以上何も言う必要がないね」
 先輩は残念そうに言いました。

  

関連寓話:第49話 関係作り企画②
    :第50話 関係作り企画③
参考寓話:第68話 総付け景品結果報告
    :第72話 景品ロス対策
    :第73話 続景品ロス対策

★・・・他の寓話も見る

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