◆◇◆ 第54話 真似をされて怒る? ◆◇◆
むかしむかしあるところにパチンコ店の店長がいました。
稼働を上げたいと思い商売繁盛で有名な神社に毎月お参りに行きました。
ある日、熱心に拝んでいると突然耳元で声が聞こえました。
「わしはここの神様じゃ。熱心に拝んでいるあなたに感心した。
特別にあなたの願いが叶うための能力を1つを叶えてやろう。
何でも言ってみなさい」
店長は喜び、お客様がファンになる新しい接客やサービスを思いつく力を授かるようにお願いしました。
◇
店長は、間もなく、新しい接客やサービスを思いつき、自店で実践させました。
評判は上々で、1か月もしないうちにまた新しい接客やサービスを思いつきます。
稼働は徐々に上がり始めました。
店長は神社にお参りに行き、神様にお礼を言いました。
◇
3ヵ月を過ぎたころ、稼働が徐々に下がり始めました。
新しい接客サービスを思いつくと短期的に稼働は上がりますが、過すぐに下がってしまいます。
店長が不思議がっていると、主任がお客様から言われたと報告に来ました。
「店長、お客様が少し離れたパチンコ店で、私たちと同じサービスをしていると言われました。
そのサービスが評判で、その店舗はどんどん人が増えていると」
店長は慌てって見に行きました。
少し離れているからとノーマークだったのですが、いつの間にか繁盛しています。
客の振りをして中に入ると、確かに同じサービスをしています。
それも、自分の店舗より上手くしています」
『なるほど、このレベルで接客サービスをされるとファンが増えるはずだ。
でも、すべて俺が思いついた接客サービスのパクリじゃないか。
やっていないのは、最近俺が考えたサービスだけじゃないか。
ここまで、ヒトのサービスをパクるのか!』
店長は少々頭に来ました。
◇
店長は帰りに神社により、神様にクレームを言いました。
「神様からもらったアイデアをすべて持って行きました。神様、あんな人まねパチンコ店は許せません。潰してください。
するとどこからか声が聞こえてきました。
「そんなことはできない」
「神様、なぜですか?」
「実は、あそこの店長も熱心な、わしの信者なんだ」
「神様は彼にも私と同じ能力を与えたのですか?」
店長が詰め寄ると神様は答えました。
「彼が求めた能力は、あなたが求めた能力ではない。
彼が求めたのは、優秀なスタッフを育成する能力じゃ。
だから、新しい接客サービスについては、お前の店に見に行って勉強しているじゃろう」
「そんな、人のアイデアを盗むとは倫理違反です」
そう言って店長は怒りを露わにした。
神様は呆(あき)れて、店長を見て言いました。
「店長や。お前は企業競争をもっと勉強しなさい。アイデアは大切だが、特許が取れるもの以外は、保護されない」
「昔、ソニーが開発して新製品を出すと、すぐに同じような製品を今のパナソニック(松下電器)が出して、すぐに市場を奪ったもんだ。
そのころは、松下電器は、まねした電器と揶揄(やゆ)されていたが、松下はソニーはうちの開発部門と言ってはばからなかった。
要するに、アイデアを完成させて、いかに質の高いものをお客様に提供するかが大切なんじゃ。
量産化技術に優れていた松下電器は、その強みを生かしたに過ぎない」
「ということは、ソニーがうちの店で、松下電器がセービスを真似しているあの店舗と言いたいんですね」
「商売は良いもの考え、それを高い品質で作り、お客様を喜ばせるかが重要じゃ。
それに気づいたら、自店のスタッフの能力アップに取り組み、高い品質の接客やサービスを作ることじゃないかな。
すくなくともソニーはアイデアを出しながら、量産化の技術を強化していき、今の姿になっていったんじゃ」
「・・・・・・」
「良いアイデアは真似されるのが当たり前。人が真似したと怒る暇があるなら、わしなら、スタッフの人間力をアップする方法を考えるがな・・・」
そういうと神様の声は二度と聞こえなくなってしまいました。
◇
(考察のポイント)
1.同じ接客・サービスの質を比べた場合、自店のスタッフは競合店より明らかに優位に立っていますか?
2.スタッフの接客・サービス能力をアップさせるための訓練をしていますか?
3.お客様の為に何か新しい接客やサービスを考えていますか?
※接客サービスで競合店と差別化したいなら、誰でも真似できる接客サービスを、誰も真似できないレベルの品質で提供することが必要です。
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