◆◇◆ 第56話 理解できないこと ◆◇◆
むかしむかしあるところにパチンコ店の店長がいました。
最近業績が下がってきて何をしても上手く行きません。
店長はこうなったら神様に頼るしかないと思いました。
店長は毎日、店舗に行く途中にある神社にお参りすることにしました。
ちょうど1ケ月ほど経ったころ、店長が祈っていると神様が現れました。
「お前の願いはわかった。
願いをかなえるように人との縁を手配しよう。
いろんな人の話をよく聞いて実行するがよい」
そう言って神様は消えていきました。
店長はビックリしました。
まさか神様が現れるとは思わなかったからです。
店長はその日から、いろんな人の話を聞いたり、セミナーなどにも積極的に参加することにしました。
◇
1か月経ち、2か月経ちとうとう半年経ちました。
人の話を聞き、いろいろなことをやりましたが、相変わらず店舗はジリ貧状態です。
このままでは店長を降格させられてしまいます。
店長は追い詰められていました。
焦る店長の心の中に不信の芽が芽生え始めてきました。
『神様が言ったようにいろいろな人の話を聞き、いろんなことをしたが、効果は出ない。
神様に騙されたのではないだろうか???
それともあれは神様に化けた悪魔ではなかったのだろうか?』
◇
店長は迷いましたが神社に行き、神様に文句を言うことにしました。
店長が1時間ほど愚痴っていると神様が再び姿を現しました。
「なんだ、お前か。お礼のお参りにも来ないで、何をそんなに不平を言っているのだ」
店長は神様を睨みつけて言いました。
「神様の言う通りにいろんな人の話を聞き、いろんなことを実行しましたが、店舗はよくなりません。
神様の言いつけ通りにやったのに、なぜ店舗は良くならないのですか!」
神様は不思議そうに店長を見ました。
「本当にいろんな人の話を聞いて、それを実行したのか?」
「はい。実行しました」
「本当に、やったのか?」
「はい、もちろんです」
神様は目を閉じ、目を見開くと、再び店長に尋ねました。
「本当に、本当に自分の判断を交えず、素直にすべて実行したのか!!」
店長は少し神様に威圧されている自分を励まし答えました。
「私は店長です。
これまでの経験があります。
それを踏まえて、理解できることはすべて実行しました」
神様はそれを聞くと空を見上げて言いました。
「やっぱりそうか」
神様は憐れむように店長を見て言いました。
「お前は、わしのアドバイスを無視したのだ、だから結果がでないのだ」
「納得いきません」
店長は神様をふたたび睨みつけました。
「お前は、自分が理解できるものしかやらなかった。
自分の知識で消化できることを「理解」という。
つまり、理解できるものとは、既にお前の頭の中にあるものだ。
お前の店舗の業績が落ちているのは、お前の理解の範囲内にあるものを実行した結果に過ぎない。
だから、いくら人の話を聞こうが、自分の理解できるものしかやらなければ結果は同じことになる。
わかるかなぁ?」
「・・・・・・」
「お前が理解できないことをしてこそ、現状を変えることができる。
逆にお前が理解できないことをしないで、現状が変わることはない。
お前は自分が理解できないことをやる勇気をもっている、と思った私の思慮が浅かったようだ・・・」
そう言って神様は消えていきました。
◇
(参考になる言葉)
「同じことを繰り返しながら、違う結果を望むこと、それを狂気という。」
by アインシュタイン
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