コミュニティマネジメント研究所

社会的存在価値を高める企業のドラマづくりを応援する

パチンコ寓話

パチンコ・イノベーションを促進させる短編寓話集

◆◇◆ 第63話 人材のレベルアップ ◆◇◆

 むかしむかしあるところにパチンコ店を営む会社がありました。 最近の社長の口癖は、『人材が企業の命運を左右する』。 社長は店長会議の最後に、店舗の人材育成状況を何人かの店長に尋ねるのが常でした。

 社長は手元の資料を見ながら、A店長に声を掛けました。
「A店長、離職者は出ているがOKだ。だいぶ頑張っているな」
「ありがとうございます」
A店長はほっとしました。

 その様子を見ていたB店長は思いました。
『A店長のところとうちは同じ離職者数だ、今回は怒られなくて済む』 そう思った矢先、社長がB店長に声を掛けました。
「B店長、まだ離職者が出ているな。全然改善がされてないな。もっとしっかりしないと店長のポジションは他の人間になるぞ」
 B店長はビックリしました。
『A店舗と同じ離職者の数なのに、なぜ、俺は叱られるんだ』
 B店長は納得いきませんでしたが、とりあえず謝りました。

 次に指名されたのは、C店長でした。
「C店長、頑張っているじゃないか。離職者もゼロ。この調子で頑張てくれ」
「ありがとうございます」 C店長は、軽く頭を下げました。

 それを見ていたD店長は思いました。
『うちも離職者ゼロだ。社長から褒められるかもしれない・・・』 すると社長がD店長を指名しました。
「D店長、はい、なんでしょうか」
「D店長、いつになったら、本気を出すんだ。なぜ離職者が出ないんだ。 お前がしっかりしないから、業績がどんどん落ちているじゃないか。 このままなら、来月には店長を降りてもらうよ」
 D店長は、『なんでやねん』と思いました。
『この人手不足の時に、俺なんか苦労して、離職者ゼロにしたのに・・・』
でも、とりあえず謝ることにしました。
「申し訳ありません。頑張ります・・・・」
 会議は終わりました。

     ◇ 

 会議に初めて参加した新米店長のE店長は、社長の店長評価がよく分らないと思いました。 同じことをしているのに一方は怒られ、一方は誉められる。 これでは、どうすればよいのかわかりません。
 E店長はベテランのF店長に素直に疑問をぶつけてみました。
「そうか、E君は今回初めての会議か。 簡単に言えばB店長とD店長は、『企業は人材が命』という会社方針に逆行しているからさ」
「すみません。具体的にお願いします」
「E君は店長になってから社長からまだ直接指導を受けていないの?」 寓話
「はい、そうなんです」
「そうなのか。わかった。簡単に説明しよう」
 そう言ってF店長は簡潔に話してくれた。

「A店店長の店は、離職者が出ているけど、それは業務や接客レベルの低いスタッフがついていけなくて辞めているケースさ。 A店は能力の高いスタッフが残って、低いスタッフが辞めて行っている。 一方、B店は能力の高いスタッフが辞めて、能力の低いスタッフが残っている。 だから業績は悪くなっている。 だから社長から叱られたのさ」
「なるほど・・・」E店長は頷いた。
「C店長は、優秀なスタッフばかりをキープしている。 業績もだんだん上がっている。 だから社長は誉める。 一方D店長は、レベルの低いスタッフをキープしている。 だから業績が改善しない。 むしろ下がっている。 だから社長が叱る。 という感じかな」
 E店長は、社長の意図を理解した。
「君以外は、みんな社長からこのことは何回も聞いているはずなんだけどな・・・。
なぜか不思議と理解に差が出てきてしまうんだな・・・。
そろそろ社長の堪忍袋の緒が切れるんじゃないかな・・・」
 そう言ってF店長は用事があるからと総務に行った。

     ◇ 

 E店長は駐車場に行く途中、B店長とD店長とが車の陰で話しているのが聞こえた。
「頑張っているのに、俺たちは評価されてないよな」
「人手不足の中での人手確保の苦労を見て欲しいよね。最近アルバイトは我慢が出来ないからすぐやめるし、最悪だよな」
「B店長は、まだましさ。俺なんかスタッフに気を遣って離職を押しとどめているのに怒られたんだぜ」
「C店長、正当な評価をしてくれるホールを知らないか?」
「知ってたら、俺はここにいるわけがないじゃないか」
「それもそうか」 二人は笑いながら、それぞれの店舗に帰っていった。

 

<解説>

① 状況が同じように見えても、評価は180度違ってくる場合は、質の違い有り。
② 見かけだけ真似をしてもダメなケースがある。
③ 優秀な人材が溜る仕組みをつくらないと、企業は良くならない。

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