コミュニティマネジメント研究所

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パチンコ寓話

パチンコ・イノベーションを促進させる短編寓話集

◆◇◆ 第64話 店長採用の基準① ◆◇◆

 むかしむかしあるところにパチンコ店を営む会社がありました。 社内新しい風を入れて、厳しい経営環境を乗り越えていきたいと考え、店長を募集することにしました。

 応募は結構あり、20人以上にもなり、人事担当部長は、これは多いと思い、書類選考で足切りをし、10人程度にすることにしました。 部長は今回の応募の状況の報告と、足切りの基準についての確認をするために、社長へ会いに行きました。

     ◇ 

「社長、恐れ入ります。今回の店長候補の応募状況の報告と、書類選考基準の確認をさせていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」
 社長は部長から出された応募者の履歴書と職務経歴書に目を通した。
「結構、応募者がいるじゃないか」
「そうなんです。そこで選考基準を設け、10人以下にしたいと考えています」
「わかった。で、基準は?」
「店長の経験年数にしたいと思っています。 これまでの経験を自社に活かしてもらえたら、店舗運営も強化されるのではと考えています。 店長経験5年以上にすると、8人に絞れるので、妥当なところだと思うのですが・・・」 寓話

「ダメだな」社長は書類を見ながら即答した。
「なぜでしょうか。いろいろ経験を積んでいると対応力も高いと思うのですが?」
「部長、君は優秀な人材を取ろうと思っているのだろう」
「当然です」部長は少しムッとして答えた。
「経験が長い方が優秀だと思っているの?」
「そう思います。場数を踏むということは大切なことだと思っています」
「部長、職歴の長さと、経験の数は別物だよ。
店長とての経験なら1年で十分さ。 店長歴10年といっても、経験した1年と同じ経験を、ただ10回繰り返すヤツがいる。 そういうヤツの能力は全然伸びない。 むしろ、マンネリ化して能力が落ちている。こういう現象を『経験の罠』と呼んでいる」
「・・・・・・」
「人事担当部長としては、勉強不足じゃないのか。 フランスのビジネススクールとアメリカ海軍大学院の研究の調査でも、 押しなべて”経験のあるマネージャーは高いパフォーマンスを出していない”という事実が明らかになっている。 そこらを踏まえて、もう一度、基準を考えてきてくれ」
 部長は思った。
『なんでこの人はそんなことまで知っているの? 前の会社ではすぐにOkが出たのに!』
そのなことはおくびにもださず、「よくわかりました・・・・」と笑顔を作って部長は退室した。

     ◇ 

 退室する前社長が雇った人事担当部長を見ながら社長は思った。
『やっぱり経験だけで仕事する人間は、条件反射的な仕事になってしまうのだろうか』

 

<解説>

「経験の罠」は医療業界でも起こっている。 経験を積んだ医師より経験の浅い医師方が医学知識が多く、 時間の経過とともに心音聴診やレントゲンに基づく診断能力が低下してくる。 という調査報告がある。

 「経験≠能力の高さ」

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