本当の地域密着店の作り方(実践編)

店舗(パチンコホール)が地域のコミュニティ広場としての取り組みを始めた

関根翔太のコミュニティホール指導回想録

『本当の地域密着店の作り方』の後継本となる予定の連載です。

コミュニティ化の布石

 森川副店長は納得していないような様子であったが、とりあえず走りださないと話にならない。 翔太は、コミュニティホール作りに向けて、最初にやるべきことを伝えた。

「まず、クリンリネスを徹底してもらいます。 次に、接客の基本マナーの徹底です。 そして、お客様の会員化を促進してもらいます。 以上の3点です。一か月で体制の目途をつけて下さい」
 みんなメモを取った。
「クリンリネスについては、西谷主任が担当してください。 接客マナーの徹底は、吉村主任にお願いします」

 翔太は森川副店長を見た。
「森川副店長は、会員管理担当を経験したことはありますか?」
「会員管理の担当者になったことはないですが、会員管理システムの操作は一応できます」
「わかりました。実は、コミュニティホール化するうえで、 進捗具合が分かりにくいので、データで確認していきます。
 その時役に立つのが会員データです。
会員データを分析し、仮説や施策の効果の検証を、森川副店長にやってもらいたいと思っています」

「会員管理システムでDMの発行はしたことがありますが、・・・DMの分析や検証をするのですか?」
 森川副店長は、いまさら会員管理の担当者なのか、という意識でいっぱいになった。
「会員管理がDMを発行するためのシステムという認識は、10年以上の昔の認識ですね。 社長が主導されて、各種分析や検証ができる最新の会員管理システムを全店に入れたはずです。
 この店も最新のものになっていますね。
 たぶん尾田主任がやっていることを注意深く見たら、いろんな分析をしていることが分かると思います」
 そう言って尾田主任の顔を見た。尾田主任は小さくうなずいた。

「と、いうことで、森川副店長は、コミュニティ経営研究所が行っている 『会員管理実践講座』を受講してもらいます。 そこに行けば、会員管理システムを利用した顧客分析の考え方ややり方が分かると思います」
「わかりました」
「尾田主任は、『会員管理実践講座』を受講したことがありますか?」
「いいえ、まだ受けたことはありません」
「それでは今月その講座がありますので、二人とも受講してください。 尾田主任は会員管理システムに詳しいので、1か月ほど森川副店長をサポートしてください」
 そう言って翔太はタブレットでスケジュールを確認し、 コミュニティ戦略研究所が行っている実践講座の日程を二人に告げた。
「分かりました。日程を確認し、シフト具合を見て受講します」 森川副主任が答えた。

「それから、森川副店長には、業務全体を知ってもらいたいと思っています。 必要に応じて声をかけますので、その時はよろしくお願いします」
 翔太は最初、森川副店長をサポート役として、全体のサポートをしてもらうつもりでいたが、 コミュニティホールに対して予想以上に懐疑かいぎ的なので、サポートは無理と判断した。
 それよりも、会員管理システムで、コミュニティホール化の施策の効果を分析したり、検証をして、 自分で効果を実感してもらう方が先だと思った。

 この機会にコミュニティホールの推進は、店長の必須業務であること、 森川副店長に理解してもらわなければならない。
 そのためには自分自身がコミュニティホール化の可能性を信じなければ話にならない。 そうでなければこの久米坂店が第2営業部の管轄である限り、 森川副店長は店長になることはないであろうと翔太は思った。

役職者の現場主義

「コミュニティホール化を推進するにあたって言っておきますが、 自分たちが何のために仕事をしているのか、目的を意識して行ってください。
 初めて行う業務も多く、戸惑うこともあると思います。
 実践において具体的にどうすべきか迷ったときは、目的に照らし合わせて考えてください」
 とりあえずみんな頷いてくれた。

「最後に来週の件ですが、皆さんに通達したように、 来週の機械入替は、店休日にしています。 吉村主任、お客様への伝達はできていますよね」
「はい、やっています。ポスターの掲示、イーゼルにも貼りだしています」
「OKです。コミュニティホールの取り組み意義については 、社長に来ていただいて、30分ほど話してもらう予定です。
 その後に接客マナー研修を行います。 マナー研修の講師の方を外部から読んでいます。
 私も参加しますが、役職者の方も全員受けてください。
 よろしいですね」

 その時、尾田主任が手をあげた。
「なんですか?」
「接客マナー研修ですが、私たちも受講するのですか?」
「そうです。受講してください。オブザーバーではありません」
「主任以上はあまりホールにでないので、必要ないのではないでしょうか。 それよりも機械整備をしていた方がよいのではないですか?」
 それを聞いて西谷主任も頷いた。

 翔太は、第2営業部の現場主義について、まだ全員に伝えていなかったと思った。
「皆さんには、まだ明確に伝えてなかったかもしれませんが、 主任以上はホールに出なくても構わないというのは、第1営業部の方針?です。
 しかし皆さんは今期から、第2営業部のメンバーとなりました。
 第2営業部は現場中心主義です」
 横で聞いていた山崎部長が大きく頷いた。

「主任であろうと、店長であろうとホールに出ます。
 そして、アルバイトや一般社員の接客の手本となることが要求されます。
 もちろん、現場より事務所での業務の方が多いかもしれませんが、 あくまでも現場で直にお客様とコンタクトをとり、ホールスタッフの働きを直に見て、 コミュニティ作りを考えるのが基本となります。
 なぜなら、現場でお客様の反応を見ずに、有効なコミュニティ施策を実行することはできません。
 また、役職者が率先垂範しないと、スタッフはコミュニティホール作りを本気にしません。

 伝えたいことは以上です」
「わかりました」尾田主任は返事をした。
 最後はせっかく参加してもらっている山崎部長に振ったが、 みんな頑張って第2営業部のやり方に慣れてほしいという簡単な言葉で終わった。

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