本当の地域密着店の作り方(実践編)

店舗(パチンコホール)が地域のコミュニティ広場としての取り組みを始めた

関根翔太のコミュニティホール指導回想録

『本当の地域密着店の作り方』の後継本となる予定の連載です。

 ◇ニュースレター

 いったん休憩をとった後、コミュニティホール推進に議題を移した。
「明日、第1回目のニュースレターをお客様に送付します。 これはコミュニティホール作りの十分条件の①番目の施策です」  そういうと翔太はニュースレターを全員に配った。

 ニュースレターの内容は、店長着任の挨拶から始まっていた。
 次に、着任にあたりこの地域に対して貢献できることは何かを考えたこと。 そして、まず取り組みたいと思っていることは、AEDをスタッフ全員が使えるようにすることであること。
 それを実践していた前の大滝店で、田所という社員がマラソン参加の時に、実際に人の命を救ったこと(前作P.216)。 助かった人のご家族の喜びの顔が、目に焼き付いていることなどが書いてあった。
 最後に、会社方針としての地域密着と小泉社長の想いに触れ、地域密着店として、 地域の皆さんに有って良かったと言われるパチンコホールを目指すことが語られていた。

「皆さんもこの文章を良く読んでおいてください。
 万一お客様からニュースレターのことを訊かれて、答えられないということがないようにしてください。
 もし、答えられなければ、ホールは本気ではないという印象を持たれてしまします。 それでは西谷主任に、このレターのみんなへの浸透をお願いしてもよろしいですか?」
 突然言われた西谷主任は反射的に「ハイ」と返事をした。

「ちなみに西谷主任は、みんなに浸透させるために具体的にどういうことをしますか?」
「具体的に、ですか・・・。スタッフ休憩室にニュースレターを貼り、それを読むように全員に朝礼で言います」
「以上ですか?」
「・・・・・・・」

「それでは、尾田主任ならどうしますか?」
「そうですね。私も西谷さんと同じように、まず今日の終礼で話し、 明日の朝礼でニュースレターについて配布時期を伝え、内容に大枠も伝えます。 そして、スタッフ休憩室にニュースレターを貼りだします」
「以上ですか?」
「ニュースレターがお客様につく日に、朝礼の中で、クイズ形式で読んでいるかの確認を行います。 そして終礼で、ニュースレターの話題がなかったかを確認します。 そして、報告内容をスタッフ全員で共有します」
「以上ですか?」
「以上です」尾田主任は答えた。

「西谷主任は何か修正や付け加えることはありませんか?」
「えー、ニュースレターが話題になったら、 すぐにインカムで共有化するというのはどうでしょうか?」
「いいじゃないですか、ニュースレターの意識を共有化しやすのでいいと思います」
 そう言って翔太は目的的な仕事のやり方の話をした。
 つまり、何のために仕事をするのかを意識して、それが達成するような手を打つ必要があるということ。 ここで聞きたかったのは、伝達することではなく、浸透する、つまり一般スタッフが理解することなので、 そのためのやり方や、浸透したかどうかの検証をどうするのかを聞きたかったという話をした。

 コミュニティホールを作るためには、スタッフが理解すべきものが結構ある。 それは、スタッフ一人ひとりが、行動が何のためにやっているかが求められるからだ。
 言われたことをただこなす作業マンに対して、人は好感を持たない。 だからやっていることを理解させ、理解しているか確かめる必要がある。 翔太はその訓練を久米坂店の役職者には早急に積んでもらい、 コミュニティ化の速度を上げていく予定であることを話した。

 ◇地方行政との連携

「それでは元に戻って、このニュースレターの最後に書いてあるように、 このホールでもAEDの講習会を開きます。 そして救命講習をまだ受けていない人は、消防署へ受けに行ってもらいます」
 久米坂店では普通救命士を主任以上は取っていたが、 リーダーはまだ一人しか取得していなかった。
 翔太は、この資格を全員が取ることで、スタッフに自信を与え、お客様にそれを伝えることで、 十分条件の③番目をとりあえず満たしたいと考えていた。
 翔太は吉村主任に、今月中にリーダーは少なくとも全員受講できるように調整をとるように指示し、 今後消防署からAED講習に店舗に来てもらえないかという交渉に行くように指示した。
 また、AED講習を行う意味を理解してもらうために、心臓停止による突然死に対する勉強会を、 全員を対象に行う旨を伝えた。

「まず役職者に対して行います。 所要時間は、20分です。2班ぐらいに分けて行います。 この役職者の勉強会が終わったら、副店長と主任は手分けして、 一般スタッフに対して、同じ勉強会をしてもらいます。 日程調整は吉村主任にお願いします」
 そう言って翔太は、吉村主任にシフト表を持ってこさせ、その場で時間調整をした。

「それともう一点、地域の貢献ということでは、 久米坂店は、市が募集している防災協力事業所となります。
 次にこのホールを一時避難所に指定してもらうことを考えています。
 すでにパチンコ店で指定を受けているホールがあることは、みなさんも知っていると思います。 おそらくこの立地なら大丈夫と思いますが、市役所に相談に行ってきます。
 一時避難所になれば、万一の場合、地域のみなさんに貢献できますし、 万一が起きなくても、自分が住んでいる近くに、そういう場所があれば安心してもらえると思います。
 それとみなさんには、日本防火・防災協会が行っている防火管理者と防災管理者の講習を受けていただきます。 これも役職者が全員資格をとってもらうことを考えています。
 万一に備えて出来る限りのことをすることが、災害に対する店舗の取り組み姿勢であり、 地域の人のことを本気で考えていることになります。
 これも地域の人のために役立ちます。この際、取得しておきましょう。
 講習会は結構長時間ですが、くれぐれも寝ないようにしてください。
 ジャックの人間は講習会で寝ていたとなると、店舗の取り組みの本気を疑われますから」
 そう言って翔太はみんなの顔を見た。

 吉村主任が、すぐにその場でスマホを操作し、日程を確認した。
「今月は間に合いそうもありません。ですが6月はちょうどこの市で講習会があります」
「分かりました。森川副店長は、防火管理者と防災管理者の両方の資格を持っていますので、 行くのはまだ持っていない主任に行ってもらいます。
 まず来月は、尾田主任と西谷主任、お願いします」
 翔太は、防災に対しての久米坂店の取り組みをさらに進め、地域貢献の本気度を、 店舗スタッフとお客様に知ってもらうことを考えていた。
 同時に、リニューアル後のコミュニティホールのイメージ形成の布石としても考えていた。

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