本当の地域密着店の作り方(実践編)

店舗(パチンコホール)が地域のコミュニティ広場としての取り組みを始めた

関根翔太のコミュニティホール指導回想録

『本当の地域密着店の作り方』の後継本となる予定の連載です。

 ◇挨拶強化運動(1/2)

 「それでは、次にいきます。吉村主任から『挨拶強化運動』の話がありました。それでは吉村主任」
 翔太は吉村主任を見た。
 それを受けて吉村主任は話をした。
「ホールの中を見ていて、会話が少なく、それほどフレンドリーというような感じを受けません。 一部常連のお客様との会話は有りますが、あくまでも一部です。
 私は最近大滝店から移動してきたので、特に感じるのかもしれませんが、初めて来る人は、なんかよそ者感的なものを受けます。 要するにお客様とスタッフの距離があるように思います。
 コミュニティホール化をするためには、これを崩していく必要があると思います」
「それで?」
「はい、そのためには挨拶を徹底してみてはどうかと思いました」
「具体的には?」
「一日中挨拶をするというのも現実的ではないので、まず、オープンから1時間ほど、 スタッフの一人が、一番出入りの多い正面の風除室で、挨拶をしてみたらどうかと思っています」

「わざわざ挨拶のためだけに?」
 森川副店長が訊き返した。
「そうです」
「それこそ、人件費の無駄遣いでしょう。今もちゃんとスタッフは挨拶をしているでしょう。 早番の時、ホールにたまに出ることがあるけど、結構していると思うよ」
 森川副店長は、挨拶は十分できているという認識を示した。

「私も、最初はできていると思っていたのですが、気を付けてみるとそれが一部の限られた人が中心で、あまり見かけない人には軽い目礼程度でした」
「他の人はどうですか?」
 翔太はコンセンサスをとるため、他の主任に発言を促した。
「私は、挨拶はそこそこできていると思いますけど」
と尾田主任が発言した。
「西谷主任はどうですか?」
「あのー、最近、店長が言われたように掃除の本を結構読んでいるんですけど、挨拶もクリンリネスと同じじゃないかと思いまして」
「どういうことでしょう」
 翔太は西谷主任の話に興味を持った。

「えー、あのですね。店長は先月、クリンリネスとは『輝くような清潔さ』と言われましたよね」
「言いました、ね」翔太は過去の記憶のページをめくった。
「挨拶も同じじゃないかと思ったんです。 つまり、理想とする挨拶は、相手に対して『親愛や歓迎を伝えるもの』じゃないかって思ったんです。
 でも、今までの挨拶を見ていて、そこまで出来ているかと言えば、そうでないです。 掃除もピンキリがあります。 挨拶もそれがあると思います。
 コミュニティホールを作るというのであれば、挨拶のレベルをもっと引き上げる必要があるので、吉村主任の『挨拶運動』はすべきと思います」

 翔太は、西谷主任はなかなか良いことを言うと思って聞いていた。 人の話に流されるではなく、行為の目的や本質を考え、自分で判断している。
「わかりました。実は私も『大滝店』と比べて、挨拶力が足りないと感じていました。 吉村主任、『挨拶強化運動』を進めてください」
 横で聞いている森川副店長は苦虫をかみつぶしたような顔をしていた。

 ◇挨拶強化運動(2/2)

「実は、ある程度のプランは考えているので、資料をみんなに配っていいでしょうか?」
 OKをだすと吉村主任はA4の紙を配り始めた。
「よろしいでしょうか。それでは説明します」
 吉村主任は、まず、挨拶強化運動のポスターの話からした。 お客様との距離を縮め、好感をもってもらうために、ポスターを作ること。 何のためにこんなことをしているかをお客様に伝える必要性を話した。
 そしてポスターの下に、今日の挨拶担当者を張り付けるようにすること。 その理由は、接客の際に明日は「わたし」が朝挨拶をしますということで、お客様の来店動機にならないか試したいということだった。

 その時、尾田主任がちょっと手を上げた。
「なんですか、尾田主任」
 翔太は尾田主任を見た。
「名前を覚えてもらうということでしたら、この機会に名札を作り変えて、大きな文字にしたらどうでしょう。 今の名札では、お年寄りは見にくいと思います。 そして下に自分の好きな遊技台か趣味を書いておけば、興味を持ってもらいやすく、覚えてもらえるのではないでようか」 吉村主任は助かりますと嬉しそうに賛成した。

「いいですね。接客やクリンリネスが徹底してきたので、そろそろコミュニティづくりの十分条件の②番目にある、 スタッフの名前を覚えてもらう取り組みを強化する時期と考えていたので、タイミングとしては良いですね。 それでは尾田主任に担当してもらってよろしいですか?」
 翔太にとっては、渡りに船だった。
「そうですね。分かりました。とりあえず名札を作ればいいんですね」
「そうです。作業レベルは、手の空いているリーダーに協力してもらってください。 当面は、それでいいですが、8月のリニューアルまでに、スタッフの名前をお客様に覚えてもらうイベントというか企画をしたいので、それはまた別途話をしましょう」
 そう言って、翔太は話をもとに戻した。

 吉村主任は説明の続きをした。
 風除室前で挨拶をする人間は、事前に挨拶と笑顔の訓練を吉村主任と寺島リーダーで行う。 そして、せっかく挨拶をしているので、挨拶運動終了後に、お客様への一言声掛けをやってみたいと言った。
 いきなりアルバイトスタッフには難しいかもしれないので、吉村主任が実際にやり、それを見せてアルバイトスタッフにもさせるつもりであることだった。 そのための小道具として、おしぼりを用意してほしいということなので、翔太はOKを出した。
「それで、店長申し訳ないのですが、最初は、役職者もスタッフと一緒に挨拶をした方が良いと思いまして、最初の20分だけ、風除室でのお願いします。 今週の水曜日の午前中、大丈夫ですよね。 他の方も個別に伺いますので、よろしく願いします」
 翔太は、日頃、率先垂範を口にしているので、当然のように承諾した。

「ところで、吉村主任にお願いしたいことがあるんだけどいいかな」
 翔太はそう言って、今月の3週目に予定にしている総付け商品に関与して、コミュニティホールの十分条件の④番目の感謝の仕組みを絡めるように吉村主任に指示をした。
 感謝のアピールをする時期としては、そろそろ仕掛け始める必要がある。 ちょっと指示の出すのが遅かったと思ったが、大滝店で経験をしている吉村主任なら、何とかしてくれるだろうと翔太は思った。

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