本当の地域密着店の作り方(実践編)

店舗(パチンコホール)が地域のコミュニティ広場としての取り組みを始めた

関根翔太のコミュニティホール指導回想録

『本当の地域密着店の作り方』の後継本となる予定の連載です。

◇◇◇ 7月の月初め店舗会議②(進捗チェック)

「それでは再開します。いつもの進捗報告をお願いします。それでは西谷主任からお願いします」
 西谷主任は、クリンリネスの一環である店外の清掃の範囲を7月1日より、さらに30m拡大したこと。 また、同じ1日に町内会の公園清掃ボランティアに参加したことを報告した。
 ボランティアには、ホールのお客様も数人参加されており、参加理由を聞かれたので、西谷主任はコミュニティホールの話をした。 話に賛同してくれた人が案外多く、気を良くした西谷主任は、次回の8月もボランティアに参加する予定にしているとした。
 そして、大雨の後の清掃では、農家の方にねぎらいの声を掛けられ、野菜をもらうことが増えたこと。 今朝も、野菜をもらったことを報告した。

「西谷主任は、だいぶ農家の方に好かれてきているようですね。ところで、西谷主任は『廃棄野菜問題』って知っていますか?」
「廃棄野菜?ですか?」
「そうです。農家で野菜を作っていますが、出荷の企画に合わなくなったり、傷がついたり、数量が少なかったりして、野菜が売れず、処理に困って廃棄するというものです」
「聞いたことがあります」
「西谷主任は、いま、農家の方と親しくなってきていますので、そういう問題が無いか聞いてみてください。 もしあれば、そういう野菜を集めて、このホールで試験的に朝市をやってみたいと思っています」
「朝市ですか」
「形が変でも、新鮮な野菜なら売れます。もちろん価格は安くしてもらわないと来る人のメリットがないのでダメだと思いますけど」
「わかりました」
「おそらく朝市をやる場合、1人では無理なので、何人かの協力者ができると、実現の可能性が高まります」
「一度いつも挨拶をする農家の方に話をし、また店長に報告します」
 そして、西谷主任は、普通救命士の修得者についてのポスターを、ホール内に貼ったことを報告して終わった。 お客様の反応は特には無いということであった。

 続いて尾田主任が報告をした。
 まず、遊技台アンケートについての結果を基に競合店との機種比較をした結果、会員データからの推定値と断りながら、 機種揃えに対する満足度は7割ぐらいであり、新たに2機種の中古台導入と4機種の増台をすることで、満足度は8割以上になる報告した。 そして、入替に伴う撤去台候補を読み上げた。
「機種揃えに対する満足度は、少し上がっていたというところかな」
「はい、お客様が増えると機種に対するニーズ量が変わるので、また変化すると思いますが、引き続きアンケートをとり、出来るだけ合わせていきます」

 次に尾田主任は、社内地域写真コンテストのスケジュールと現状を発表した。
「コンテストのホール向けのポスターは良かったね。 お客様にスタッフへの応援をお願いする内容はお客様との一体感を築くきっかけを与えてくれるよね。お客様からスタッフへ何かお声を頂戴していない?」
「ホール内で親しいお客様からスタッフが声を掛けられています。 中には写真を撮ってるところを見つけられて、声を掛けられたスタッフもいました」
「いいですね」
「お客様の中でコンテストに参加したと言われたら、緊急企画で追加ポスターを貼る予定ですが、まだそういう方はいないようです」
「わかりました。これで、名前を憶えてくれる人が、増えそうだね」
「そうですね。朝の挨拶運動もしていますし、カード切り替えで、話す時間もあります。お客様との接触頻度が増えていますので、私も増えると思います」
 尾田主任は、社内コンテストにお客様が、すぐに反応してくれたことに気を良くしていた。
 そして、最後に遊技機勉強会の進捗について報告をした。 勉強会は続けているが、目に見えて遊技台に詳しくなったというよりも、お客様との会話に何となく余裕が感じられるという主観的な感想を述べて終わった。

 続いて吉村主任が報告を行った。
 挨拶運動は、引き続きやっており、そのお陰で午前中客のカードの切り替えがスムーズに行われていること。 そして、できるなら午後1時からも、試しに挨拶運動を20分ぐらいから始めてみたいと提案をしてきた。
「現在、会員カードの切り替えをしているので、工数的に時間が足らないのではないの?」
「そうなんですけど、急がば回れで、挨拶を徹底して、入会活動やカード切り替え活動をする方がスムーズにいくように思うのですが」
「試すのは大いに結構だけれど、一度リーダーに相談して、試験的に検証してみるということで進めてください。効果が大きければ、許可を出します」
「わかりました」

 次に吉村主任はパン工房への訪問と、総付け商品の依頼状況を説明した。 続いて夏祭りの準備をしている人へのインタビューが無事終わり、その時に撮影したビデオの編集を、 ビデオ編集に詳しい森川副店長にお願して、15分番組を製作してもらっているという報告をした。

 最後に、救命講習の店内での案内状況、店外への案内状況を説明した。
「救命講習への申し込みの現状は?」
「お一人だけです。カード切り替えの話の時に参加すると言われました」
「対策は何か考えていますか?」
「ホールのお客様を直に回ってみようと思っているのですが、どうでしょうか?」
「今は、カード切り替えでローラーをしているので、それは止めましょう」
「わかりました」
「引き続きカード切り替えの時には、この話しはしているでしょうし、もう少し様子を見ましょう。
 それに今回の講習のメインは、自店のスタッフの教育なので、基本的には問題はありません。 店内にポスターを掲示しても、多くの方は、なぜパチンコ店がこんなことをするの、と思っていると思います。 単なる思い付きと思っているかもしれません。
 だから、何回か実績を積むことが大切です。特にうちのスタッフが本当にAEDを使えるようになることが大切です。 吉村主任、ここは大滝店ではないので、焦らなくて大丈夫です」
 そう言って翔太は吉村主任の認識を正した。
 実際、大滝店でも最初は同じような状況でのスタートだったので、問題ないと思っている。回を重ねると増えてくる。 それよりも、この状況を見て、コミュニティは難しいと勝手に判断する役職者やスタッフがでないように、もっと吉村主任には毅然として欲しいと感じた。

「それでは、他に議題はないでしょうか?」 翔太は参加メンバーの顔を見た。山崎部長も何もないという顔をした。
「最後に付け加えておきますが、今月はニュースレターを2回出します。 7月の初めに届くように送ったニュースレターが1回目です。AED講習やカード切り替えの話をしています。 もちろんここにはリニューアルの話は書いていません。
 なので、8月の改装告知前に、リニューアルを知らせるニュースレターを送ります。 これが2回目になります。この対象は過去の会員でDM要の人すべてです。 その時にはまた皆さんに連絡します。 それではこれで店舗会議を終わります」
 翔太は、今回の計画について、細かい質問を受けるため、浅沼店のメンバーと会議室に残った。

 

◇◇◇ 感謝カードのチェック

 翔太が事務所に戻ると机の上に、全員の感謝カードの交換枚数を表した一覧表と、役職者の感謝カード用ノート7冊が置いてあった。
 森川副店長の机の上にも、ランダムに選ばれたスタッフの感謝カード用ノート4冊が置かれていた。 早番の役職者の机の上には、もう見終わったのか、ノートは無かった。

 翔太は、事務所に入る途中、自動販売機で購入した微糖の缶コーヒーを開けた。 目の前の7冊のノートを見て、ちょっと多いと感じた。疲れてきている。大きなあくびをして、翔太はノートを読み始めた。

 感謝カードの内容は、『遅くまで頑張ってくれて、ありがとう』 『的確なホール指示で、安心して事務所仕事ができます。ありがとう』など漠然とした内容が多い。
 中には尾田主任のように、『接客5原則の徹底をしてもらったことで、スタッフの印象が良くなりました。ありがとう』 『23日のクレーム処理は、ホールの印象を上げたと思います。ありがとう』などと具体的になっている人もいる。
 気になって、スタッフのものを見ると、やはり書き方にバラツキが多くでる。 『いつも笑顔でありがとう』などの超抽象的なものから、シフトの交代のお礼や個人的なモノの貸し借りなどが結構混じってくる。 ちょっとこれはまずいと翔太は思った。

 感謝シートを書かせる目的は、感謝すべきシーンを見逃すことなく的確に捉える感性を養うことにある。 そのために感謝に気づく訓練を兼ねている。抽象的な感謝しかできないのは、気を付けて現場を見ていないか、感性が低い可能性が高い。
 それを放置しておくと、スタッフの能力の開発もできないし、しばらくすると誰も感謝シートをもらっても嬉しくならないだろう。 そうなると無駄な作業をさせているのと同じになり、やっている店長や役職者に対してスタッフが不信を持ってしまう。

 翔太は、ホールから戻ってきた尾田主任を自分のデスクに呼んだ。
「尾田主任、感謝カードを読んだ?」
「ハイ、読みました。自分のチェック分と、スタッフ全体は、ざっとですが目を通しました」
「で、何か気になることはあった?」
「そうですね。『頑張ってくれてありがとう』というような抽象的な表現で、感謝をしているスタッフが多いように感じました。 誰にでも当てはまるようなことで、感謝をしているので、本当に相手を見ているのかな、と思いました。もらった方は悪い気はしないけれど、どうでしょう?」
「他には?」
「それから気になったのが、『この間のDVDは、面白かったありがとう』などの個人間のお礼ですね。感謝は感謝ですが、どうかな?とは思ったんですが」
「なぜ、そう思ったの?」
「感謝カードは、業務において感謝の気持ちを醸成するためなので、普通誰もが感謝して当たり前のものを意識しても、意味がないし、私的な娯楽などの個人間のものは書くべきでないと思います」
「なるほど。尾田主任はどうすべきだと思う?」

 尾田主任は、今回の感謝カードを基に、簡単なマニュアルを作って、スタッフに説明をする。 また、感謝カードの書き方には個人差があるので、改善が見込めないフタッフに関しては、個別に指導するというアイデアを翔太に述べた。
「OK。それで感謝カードの推進を図って欲しい」
 翔太は、そう言うと残りの感謝ノートにコメントを書き込み始めた。

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