本当の地域密着店の作り方(実践編)

店舗(パチンコホール)が地域のコミュニティ広場としての取り組みを始めた

関根翔太のコミュニティホール指導回想録

『本当の地域密着店の作り方』の後継本となる予定の連載です。

◇◇◇ 西谷主任の進捗報告(7月第2週目)

 会員カードの切り替えを始めてから、1週間が過ぎた。 その間、切り替えることが出来たのは約350名で、ほぼ計画通りに進んでいる。
 思惑通り、カードの切り替えをきっかけに、お客様とスタッフの距離がかなり縮まってきていると翔太は感じている。 その証拠に会話の頻度が多くなっている。スタッフに聞いても、遊技中に声を掛けやすくなったと話している。 また、ホールに対する安心感が出てきたのか、先月に比べ会員の投資金額の平均が10%ほど伸びてきている。

 そして、何よりも新規会員の獲得が順調になってきている。 それは入会後のフォローを徹底させているからである。 具体的には、『便利カード』を作られている方に、分からないことなどがないか定期的に伺っている。 するとフォローを受けているお客様の横のお客様は、何だろうと気にしてくる。 そのときスタッフが気づいて、すぐに説明をすると『便利カード』という言葉に反応し、とりあえず作ってくれるのである。

 翔太もカードの切り替えをホールで手伝っている。 もちろん率先垂範と言う意味もあるが、お客様から直に話が聞けるのが楽しい。 写真コンテストのことを話すと、地元のおすすめ場所をいろいろと教えてもらえる。 実際、翔太は締め切りが近いし、今度の休みにお客様から聞いた場所に、写真を撮りに行こうと思っていた。

 翔太が事務所に戻ると、西谷主任が声を掛けてきた。
「少しよろしいですか?実はこの間言われていた朝市の件なんですが、・・・」
「進展があった?」
「結論から言えば、いつも野菜をくれる山根と水田さんですが、山根さんはOKで、水田さんは朝市自体にはあまり興味はないけど、 そういうことが好きそうな人に、声を掛けてあげるということでした」
「それは良かったじゃないか」
「それと廃棄野菜の話はお二人とも興味がありました。実際に廃棄野菜はあり、処理に困っているとのことでした。 日頃からもったいないと思っているので、うまい処分の方法があれば、一緒に考えても良いとのことです」
「前進したね。8月のはじめぐらいまでには、朝市を出せたら助かるんだけどね。 今回のリニューアルを行った後、地元のコミュニティ広場を目指すという方針を掲げる。 だから、駐車場で朝市ができれば、ホールの言ってることは本当なんだと、近隣の人に理解してもらいやすい」
「わかりました。引き続きアプローチします」

 翔太が西谷主任の顔を見ると、何か言いたそうにしている。翔太の目での問いかけに西谷主任が応じた。
「あの、これに関連して吉村主任から提案があると思うのですが」
「何?」
「朝市の集客の話をしていたら、ちょうど夏休みなので、駐車場でラジオ体操をしたら、人が集まるんじゃないかって言ってたんですけど」
「それは面白いかもね」
「詳しいことは吉村主任に尋ねてください」
「分かった、ありがとう。ところで、今回のニュースレターは何も問題は起こらなかった?」
「大丈夫です。破り捨てるような人はいません。 ニュースレターについては、カード切り替えで、DM不要を要にするための説得材料としているので、みんな読んでいますし、 横で説明をたまに聞きますが、ピントはずれていません」
「それは良かった」
 翔太はその後も、西谷主任の関係している施策の進捗を確認したが、問題はなかった。

 

◇◇◇ 面白いリーフレット

 西谷主任が席に戻ると、入れ替わりに尾田主任が報告に来た。
「新台のリーフレットの件ですが、遊技機勉強会でスタッフが十分答えられるレベルになっている遊技台が4機種あります。 このリーフレットの内容を変更し、スタッフへお尋ねくださいとしている部分を作ったリーフレットの試作をつくりました。 店長のご確認をいただきたいのですけど」
 そう言って尾田主任は、翔太にリーフレットを差し出した。

「このリーフレットの変更の目的は?」
「お客様と遊技機の話をするきっかけをつくり出すのが目的です。 従来のリーフレットはある意味完結していて、読んでも会話につながりません。
 一方このリーフレットは読むと質問したくなるようになっています。 お客様らスタッフに声を掛けることになるので、お客様主導で会話ができます。 スタッフとしては受け答えをすればよいので、対応が楽です」

 翔太は渡されたリーフレットの中身に目を通した。 確かに従来のスペックの説明などもあるが、遊技台について興味を深めるような質問が書かれている。
『なぜ、このリーチを一番熱くしていると思いますか?』
『このモードに大当り潜伏をしているのは、なぜだと思いますか?次の3つから選んでください。
→答えはスタッフに!(コンテンツページにヒントあり。コミックを読むとわかるかも!)』

 遊技台のコンテンツを知っている人は想像できるだろうし、知らない人もコンテンツを知りたくなるような仕掛けがしてある。
 人間は知識が増えるとその対象に対する興味が深くなっていく。 その心理を巧みについて、スタッフとの会話と絡めている。 それに遊技台の演出の意味を改めて知ると、実際そうなのか確かめたいと思う心理も働く、そうなるとその演出を見たいとお客様は粘るだろう。 当然稼働が伸びる。 つまり、このリーフレットを読めば、お客様とのコミュニケーションが増え、稼働が伸び、機種客が増える可能性が高まる、 まさに一石三鳥と翔太は感じた。

「うちのスタッフで確認してみた?」
 翔太は尾田主任に尋ねた。
「はい、スタッフに協力してもらって、実際にロープレ形式で、試してみました。会話の流れは問題ありませんでした」
 尾田主任は嬉しそうに答えている。
「素晴らしい!」
 翔太は大したものだと思った。
「現在スタッフはすべての機種に精通しているわけではないので、試験的にほぼ全員がマスターしている4機種で試したいと思っています。 よろしいでしょうか?」
「いいね。会話が促進されるね。
 せっかく遊技台の勉強をしても、お客様から質問が出なかったら、何のために頑張っているかわからないからね。 みんなの努力が表にでるアイデアだ。 便利カード切り替えが一段落する来週から、さっそく付け替えて効果を試して欲しい」
「分かりました」
「それから、山崎部長に言って、部内で使うように根回しをしておくよ」
「ありがとうございます」尾田主任は嬉しそうに頷いた。

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