本当の地域密着店の作り方(実践編)

店舗(パチンコホール)が地域のコミュニティ広場としての取り組みを始めた

関根翔太のコミュニティホール指導回想録

『本当の地域密着店の作り方』の後継本となる予定の連載です。

◇◇◇ リーダーミーティング(アルカリイオン製水器)

「7月も今日で終わりか」
 横井リーダーがため息をついた。
「アッという間だね」
 岡田リーダーが応じた。
「入会の目標数は一応達成ですね」
 明日葉がボソッと言った。
 3人は、主任に現場指導をお願いして、事務所のミーティングテーブルに集まっていた。

「明日からは、会員向けにアルカリイオン製水器の利用が始まるのは知っていると思います。 これを最大限生かして、新規入会や便利カードへの切り替え、カード利用の促進を強化していくための段取りを確認しておきます」
 岡田リーダーはそう言って、コピー用紙を配った。

「今晩、営業終了に伴い製水器のカバーをとり、イーゼルやポスターを貼る担当は横井リーダーですが、準備はできていますか?」
「大丈夫です。アルカリイオン水の利用方法は、クリアファイルにまとめてあるので、それもOKです」
「スタッフによる既存会員への特典お知らせ案内。非会員への案内のロープレは私と寺島リーダーでやりましたが、寺島リーダー、何か気になるところはありますか?」
「特にはありません。今回、お客様に話しかけるネタが出来たと、みんな喜んでいます。 一度断られた相手にアプローチするには、新特典ができたからというのが、一番やりやすいですから」
と明日葉が答えた
「1日からまた忙しくなりそうだ」
 岡田リーダーが二人を見た。
「シフトも多めにしてますから、頑張って会員をとりましょう」
 明日葉はこの状況を楽しんでいるかのような前向きな発言をした。
「スタッフも事前にアルカリイオン水を試しているので、おススメは自信をもってやれると言ってましたよ」
と横井リーダーも賛同した。

「とこで、会員じゃないお客様から、なぜ会員だけ?と聞かれたらなんと答えるように指導している?」
 岡田リーダーが横井リーダーに尋ねた。
「それはですね・・・」
「ハイ」
 明日葉が手を挙げた。
「特定の人が利用しすぎないように、利用回数の管理のために便利カードで管理をしていると言って便利カードを勧める。 もし、カードは作らないけれど利用したいということであれば、それもOKということで、スタッフにお声がけくださいとしておく。 そうすることで、スタッフとの会話の機会にする」
と明日葉は嬉しそうに答えた。
「OKです。店長が言っていた単純接触で、カードを作らない人とも親しくなる。 まあ、そのうち作ってくれると思うけど」
 そう言って岡田リーダーは横井リーダーを見た。
「横井リーダーも大丈夫ですね。この話は、この間もしたと思うけど」
「そうでしたっけ?」
 横井リーダーは首を傾げた。
「岡田さん、今日、最終確認をして良かったですね。 今日の確認は、横井リーダーのためにしているようなものですから」
と明日葉はニコッとした。

 この後、朝礼の伝達事項や終礼の確認事項など細々したことを確認した。
「いずれにしても、スタッフに頑張ってもらうためには、現場リーダーが目的意識を持って取り組まないとね。 今回の製水器を最大限活かしましょう。じゃ、ミーティングは終わります。お疲れ様でした」
 夕方、浅沼店との打合せを終え、帰ってきた翔太に、岡田リーダーがリーダーミーティングの報告に来た。

◇◇◇ 8月の社長報告(1/2)

 8月の会議はいつものように進行した。
 業績で言えば、第一営業部の平均稼働は微妙に上昇している。 7月の末から本町店が競合店のデルジャン本町店と張り合っており、それにマルナムも参戦しているので、周囲のパチンコユーザーを集め、稼働は上がっているのだ。
 しかし、利益はかなりの急降下となっている。これは計画の範囲内である。 まだ初戦でもあり、高坂部長の鼻息は荒い。 翔太としても、第二営業部が火の粉を被らないように、本町店には早目に地域一番店に返り咲いて欲しいところである。

 第二営業部の平均稼働も全体的に横ばいか上昇している。 利益は計画通り確保しており、地域一番店の大安寺店が少し利益を上乗せしている。 浅沼店は稼働の下がりが止まり、横ばいから少し稼働が良くなってきている。
 翔太の久米坂店は、改装発表から稼働が伸び始め、7月の末にはパチンコは17600アウトまで回復、スロットも同じ割合で回復してきている。 利益は、予定通り少し落とし気味にしているが、会員データとホールのお客様の表情を見ていると、もう少しとっても大丈夫という感じは持っている。
 小泉社長から業界動向が伝えられ、各部長から伝達事項が伝えられ、解散となった。

 翔太は、山崎部長と社長室にいた。少し遅れて小泉社長が入ってきた。
「お待たせ、それでは関根店長、報告を受けようか」
 店舗会議ではどうしても数字の話が中心となり、ホールでの細かな動きまでは報告できない。 数字は活動の結果であり、それを判断するためには、それを生み出す活動を見なければならない。 そこで細かな話は会議の後で社長に報告している。

 小泉社長の第一の関心は、ホールの関係づくりがどれだけ業績に貢献するかということであり、大滝店での業績回復が他の店舗、地域でも通用するかということを検証することを考えている。 第二営業部には地域一番店の大安寺店があるが、これは元々地域一番店であり、それをコミュニティホール型に変えたので、効果が分かりにくいというのが、小泉社長の考えである。
 そのために会社を全面的にコミュニティホール型に移行するのを高坂部長に反対され、ジャックの店舗は二種類の運営をしているのである。 会社としてはアイデンティティの問題もあり、出来れば統一したい。 何より、人材の育成方法が違ってくるので、店舗間の人材交流を考えると、遠からず決断を迫られている。

「はい。それでは報告します」
 翔太は、7月の活動を説明し始めた。 コミュニティホールの布石として実行しているクリンリネスの徹底。 それに伴う店舗外の清掃。 それに関連して、朝市の企画へと発展しつつあり、それを『廃棄野菜』問題へとつなげて、1つの地域問題の解決を目指していること。

 次に布石の接客5原則の取り組みと会員へのフォローの充実で、ホール内でのお客様との会話が多くなり、スタッフの台への誘導やイベント企画への誘導がしやすくなってきたこと。 さらに各主任や森川副店長がイベント企画を細かく考えられるようになり、上手くいかない場合は、その事態に即応して施策が打てるようになってきたこと。
 また、スタッフ研修の実施と感謝カードの推進により、チームワークが出来てきており、会員獲得や便利カードへの切り替え、さらにはそのフォローと手間がかかり、一時的に膨らむ業務に柔軟に対応できていることを挙げた。
 そして何より、スタッフにコミュニティホールに対する関心と、それを一緒に目指すという意識が少しづ芽生えてきている。 その証左として、スタッフが発端となった豆の木パン工房についての話、太極拳の先生の話、夏祭りの準備をしている地元の人の話を報告した。
 以上の積み上げの効果として、第3週から展開している感謝キャンペーンの成果に結びつき、結果として稼働が月初の15500アウトから17600アウトへと回復してきている。 主な要因としては、会員の平均投資金額が10%アップし、それに伴い一人当たりの平均稼働も10%弱伸びている。 おそらくホールに対する安心感がでてきたことが背景にあると翔太は説明した。

「関根店長、稼働は減ることはない?」
「それは大丈夫です。理由としては2つです。
 私が3月に着任してから大きな出玉や極端な新台入替はしていません。 ですから、これまで出玉で集まっていたパチンコユーザーや新台客は、他の出玉をしている店に移動しています。 会員データを見ても、大勝ちをしたり、出玉営業日だけ来ている人、それに新台入替にしか来ない人は、離反をしています。 今のお客様はどちらかと言えば、コミュニティという店の方針に賛同されている方がメインです」
「なるほど」
「二つ目は、機種揃えの充実です。競合店調査やアンケート分析、機種客分析により、地域のお客様に合わせた機種揃えが出来てきました。 特に7月後半の中古台入替では、お客様からの評判もよく、機種客が増え、離反客の復活も上向きとなっています」
 翔太の報告に、小泉社長は頷いて見せた。
「出玉による一時的集客ではありませんので、社長のご心配はないと思います」
山崎部長も、先日久米坂店に来て、データを確認しているので、強くフォローをしてくれた。

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