本当の地域密着店の作り方(実践編)

店舗(パチンコホール)が地域のコミュニティ広場としての取り組みを始めた

関根翔太のコミュニティホール指導回想録

『本当の地域密着店の作り方』の後継本となる予定の連載です。

◇◇◇ 8月店舗会議(写真コンテスト)

 続いて尾田主任が報告をした。感謝カードの現状と感謝ノートのチェックの状況。 尾田主任は、他の役職者の感謝ノートのチェック後のコメントに目を通して、その状況も報告している。 翔太はその几帳面さというか徹底さに感心していた。
 最近の尾田主任は一般スタッフと頻繁に言葉を交わしており、それがホールの活性化に結びついている。 おそらく感謝ノートに目を通すことで、ヒューマンスキルが向上したのではないかと感じた。
「感謝ノートに関しては、結構スタッフは見ていますので、皆さんも引き続き、感謝カードに対する関心を持ってもらいたいと思います」
 尾田主任はそう言って次の報告に移った。

 写真コンテストは、1週間の投票数が241と目標クリアしなかった。
 最終的に1位となったのは、瀬戸春香という愛想のよいアルバイトスタッフであった。 これについては、関根店長から個人的にワゴンサービスのコーヒー券が賞品として渡されたこと。 投票数の未達成原因は、見る人はいたが、投票という行動にまでは至らなかった。 つまり、投票行為がボトルネックとなった。
 そして、目的であるスタッフの名前を覚えてもらうことについては、未確認ではあるが、 ホールスタッフや役職者の何人かが写真について話かけられたことで、少し効果は有ったと判断していると尾田主任は報告した。
 さらに反省点としては、事前のお客様への巻き込みが不足していたこと、コメントの文字をもう少し大きくすべきであったこと、 3日目ぐらいからは、コンテストの写真が風景になってしまったことなどを取り上げた。
 逆に反対に良かったことは、写真コンテストに参加したいというお客様が5人ほどいらしたことが、スタッフの報告から分かった。
 今後の展開としては、秋にも今の反省点を活かしてやりたいと思っていること。 また、お客様を集めて店舗内に『写真同好会』を作る提案をしてきた。

「尾田主任、写真コンテストを改善するアイデアはあるの?」
 翔太は尾田主任に尋ねた。
「そうですね。今回、壁に30枚弱の写真を貼ったのが悪かったと思っています。 写真が小さく、数が多い。スタッフやお客様に訊いても、どれが良いか判断ができなかったと言ってました」
「それで?」
「次回は、コンテストをトーナメント方式で実施しようと思っています」
「トーナメント?」翔太は興味を魅かれた。
「はい、写真を2枚比較して、どちらかに投票してもらうようにします。 2枚並べてどちらが好きかは、判断しやすいはずです。 それを1日、4セット用意します」

 尾田主任は、ホワイトボードを使って概要を書き始めた。 32人の参加者がいたとして、第一段階で16人に絞られる。 次8人、4人、2人となって決戦投票。最大4セットを壁に掲示して、投票をおこなえば、9日間で優勝が決まるというものであった。
 利点としては、毎日変化をする。風景になりにくい。 また、同じ写真、つまり同じ人物が何回も出てくるので、そのスタッフの名前はお客様が覚える可能性が高い。 自分の写真が出ている時には、応援を頼みやすい。 掲示枚数が少ないので、写真やコメントを大きくすることができる。 尾田主任は一気に説明した。

・・・・・・◇・・・・・・・・・・・

 話を聞きながら翔太は、大滝店でのコミュニティ推進の時を思い出していた。
 うまく行かない企画を、工夫も無くまたやろうとしたとき、コンサルで入っていた北条真由美から散々言われた。
『関根主任、その企画をまたされるのですね。何か工夫をされましたか?』
『工夫も改善も無しに、また同じことをされるのですか?』
『回数が足らないから浸透しない?って本気で思っているんですか?』
『失敗する原因を取り除かない限り、成功するはずがないのが、お分かりにならないのかしら?関根主任の頭は考えるためではなく、帽子を被るためにあるのかしら?』
『そう言えば、ある経営者が言ってましたよ。1回目の失敗は、前進。2回目の失敗は、確認。3回目の失敗は“馬鹿”ってね。関根主任は“馬鹿”になりたいのですか?』
 翔太は悔しくて、真由美の鼻を明かせる改善案を、ずーっと考えていたことがあった。

・・・・・・・◇・・・・・・・・

「尾田主任、素晴らしい、面白いアイデアですね」
「ありがとうございます。夏の甲子園を見ていて、ふと思いついたんです」
「それでは、次回に期待します。ところで『写真同好会』の見込みは立っているんですか?」
「スタッフの中でまず、募集してやろうと思っています。映像が趣味の森川副店長には是非参加してもらいたいと思っています」
 そう言って森川副店長の顔を尾田主任は見た。
「いいよ。会の要綱が出来たら、声を掛けて」森川副店長は、陽気にOKをした。
 最後に尾田主任は、第2回目になる好み台アンケートを今週実施するとして、その要領を説明した。

◇◇◇ 8月店舗会議(健康体操の会)

 休憩をはさんで吉村主任の報告となった。
 吉村主任からは、総付け商品について、豆の木パン工房の江崎オーナーのお礼訪問を含めて、その後の経過を報告。 次回の総付けは『感謝』の文字を入れたマグカップをシリーズで配布することを予定しているが、次々回は江崎オーナーから依頼のあった和菓子屋さんを入れる可能性があると報告した。 この件については森川副店長が担当となっているので、森川副店長が、現在の状況を簡単に説明した。

 次に、朝のラジオ体操について吉村主任は報告した。 朝の体操参加者は徐々に増え、スタッフと一般参加者を合わせると25人前後になっている。 この中にパン工房のオーナーの奥さんと子供さんが参加されていること、ママ友繫がりで、さらに増える可能性があることを報告。 『朝の健康体操の会』も立ち上げて、会のメンバーに対して便利カードを発行していると報告した。

「吉村主任、まさか子供さんも会員にしている?」
「そんなことはしませんよ。ただ、お子さんだけの場合は、親御さんに会に入ってもらうように案内しています。 それに『朝の健康体操の会』専用の申し込み用紙を付けています」
「カードで何かしているの?」
「一応、カードリーダーで読み込ませて、来店の確認ができるようにしてあります。 とりあえず、20回参加したらミニ賞状みたいなものを渡そうかとも考えています」
「いつまでやるつもりなの?」
「そうですね。9月のお彼岸までやれたらと思っていますが、会の皆さんの意見を聞いて続けることが出来れば、続けたいと思っています。」

「ところで、講師の劉先生は?」
「何か喜んでいます。元来人好きみたいですね。 結構、おばちゃんから人気があるみたいで、中国語講座に通い出す人が、出てきているみたいですね」
「それは良かった。他に何かありますか?」
「いまアルバイトの喜多君が弟子みたいになっていて、だいぶ太極拳体操をマスターしてきたみたいです。 昔、教わっていたみたいで、何となく師範代のような感じになっていますね。 お客様から声を掛けられることが多くなったと言ってました。 それとこの『朝の健康体操の会』をPRするために森川副店長に頼んで5分間ビデオを作ってもらい、ホールで定期的にながす予定です」
「ビデオ撮影は終わっていますので、木曜日までには流せると思います」
 吉村主任の話を受けて森川副店長が発言した。
 後、基本が大切ということで、今週中に接客5原則の再チェックをスタッフに公示して行うと発表した。 吉村主任の意図は明らかで、公示することで、スタッフの意識を高める狙いである。 繰り返しで習慣化するという大滝店のパターンを再現しようとしていた。

 吉村主任の報告の後、森川副店長が補足の話をし、翔太にバトンを渡した。
 翔太は、入会者が161名で目標達成したこと、カード変更者の累計が520人になったことを伝えた。 これらはいずれも主任や副店長が積極的にホール業務に出てくれたお陰であることを強調した。
 そして、8月のニュースレターについて説明をした。 内容は、普通救命講習会や朝の体操の様子、総付け商品の苦労話。写真コンテストの結果の報告。 それにまつわるスタッフたちが行った努力についての裏話。 それから改装までの企画に込めた想いと最終的に地域のコミュニティホールになることを目指しているというものであった。

 会議の最後に、各人が推進している業務やプロジェクトは、コミュニティホールという布を作るための縦糸横糸の関係にあり、相互に影響し合っている。 決して単発的なものにすることなく、相乗効果を発揮することを絶えず意識して欲しいという話で締めくくった。

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