本当の地域密着店の作り方(実践編)

店舗(パチンコホール)が地域のコミュニティ広場としての取り組みを始めた

関根翔太のコミュニティホール指導回想録

『本当の地域密着店の作り方』の後継本となる予定の連載です。

◇◇◇ 総付け商品(おはぎ)

 9月19日、この日は良く晴れていたが暑くはなく、秋風がふく爽やかな日になっていた。
 ジャック久米坂店は朝からにぎわっていた。 健康体操を終えた朝の会のメンバーが、山口饅頭堂の“おはぎ”を頬張っていた。 おばちゃんやおばあさんは『これは美味しい』と少し驚いていた。 年配の男性も、『これなら食べれる』と好評であった。
 これが食べれるなら、今日は10時過ぎからパチンコをするという人が、一人や二人ではなかった。

 オープン前の行列はいつもの倍の人数になっていた。 10時過ぎ、お茶会の先生が来られたとインカムが入ったので、森川副店長が挨拶に行くと、先生は『朝の健康体操の会』の鳩山さんだった。
 休憩室に案内し、今回のいきさつと趣旨を簡単に説明すると茶道教室の先生にジャック久米坂店の話をしていたのが、鳩山さんということが分かり、森川副店長は驚いた。 森川副店長は改めてお礼を言い、準備に取り掛かってもらった。

 10時半に“おはぎ”の配布とお茶会をはじめると、みんな心待ちしていたのか、嬉しそうに“おはぎ”を受け取り、休憩室にお茶をいただきに来る人が結構いた。
 スタッフは何人ものお客様から「美味しかった」と言われ、山口饅頭堂の住所を聞かれるスタッフも多かった。

 14時半にはさらに盛況になり、“おはぎ”が足らなくなってきた。急遽16時に配布する“おはぎ”を回して対応した。 午後のお茶の会が始まるとすぐに、茶道の先生(大先生)がパチンコ店に着物姿で来られた。
 森川副店長は飛んでき、挨拶をし、店長の翔太もお礼に行った。
 大先生は「相変わらず、うるさいところですね」と言いながら、休憩室でお茶を立てているお弟子さんを見た後、ホールを一周し、感謝ポスターを満足そうに眺めて帰って行かれた。
 後で聞くと大先生も若い頃パチンコが好きで、親先生から怒られていたということであった。

 16時は追加発注をしても足らなくなり、スタッフ用に買っていた“おはぎ”50個もすべて配ってしまった。 それ以降の方には、山口饅頭堂が配っているポイントカードに10マス中3個スタンプを押しているものを渡した。
 忙しい一日はこうして終わり、ホールコンで稼働を確認すると28000アウト近くになっていた。

 森川副店長は、総付け商品の責任者として、この日はホールに出っぱなしであったが、強い充実感を覚えた。
 お客様との会話が弾み、お客様に喜んでもらっているという実感が持てた。 ホールスタッフや役職者のみんなが成功を喜んでくれ、店長も快挙と手放しで喜んでくれた。 そして何よりも追加発注を自ら持ってきた山口社長の満面の笑顔が忘れられなかった。

 ◇◇◇

 翌日、森川副店長は携帯電話の音で、朝7時半に目が覚めた。今日は遅番なので、10時過ぎに起きようと思っていた。
 誰だろうと電話に出ると山口社長だった。 すぐ来て欲しいと言われて行ってみると、8時開店前に行列ができていた。
 今日から彼岸なので、おはぎを買いに来たらしい。 しかし、山口社長が後を継いでから、今までこんなことは無かったという。
 山口社長から改めて礼を言われ、奥さんや御祖母さんからも何度もお礼を言われた。

 この日を境に、山口饅頭堂は一気に繁盛していった。 美味しい”おはぎ”の噂は広まり、遠くからいくつもまとめ買いに来る人が現れてきた。 ネットの書き込みでもおススメの和菓子屋ということで、人気になった。

 嬉しいことに、協力していただいた茶道教室も、20日以降、おばちゃんの入会が数人あり、生徒が増えてきている。 協力のお礼に山口社長と森川副店長が茶道教室に訪問したとき、大先生が教えてくれた。

 この数日後、お茶会のお茶が美味しかったので、久米坂店でお茶を飲みたいという人が集まり、『ジャックお茶の会』が出来た。 もちろん先生は、鳩山さんだった。

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