◆◇◆ 梅に鶯、花に蝶 ◆◇◆
むかしむかし、あるところに頑張っている店長がいました。
競合店が増える中で、何とか店舗の稼働を維持しようと出玉営業をしていました。
しかし、出玉営業をしている間は、お客様は来るのですが、出玉営業をしなくなるとまた稼働は元に戻ってしまいます。
最近では、出玉営業の後の稼働は、出玉営業前より稼働が落ちてしまうこともたびたび起こるようになりました。
店長は神様に毎日祈りました。
「どうか出玉営業後に稼働が下がらないようにしてください」
しかし、出玉営業後の稼働はすぐに落ちてしまいます。
店長はだんだん腹が立って来ました。こんなに祈っているのに、なぜ、神様は俺の願いをかなえてくれないんだ。昔は願いを叶えてくれたのに、今はなぜ言うことを聞いてくれないんだ。出玉の額もたくさんしているのに、どうなっているんだ。
ある日とうとう怒りが爆発しました。
「神様、いい加減にしてくれ、いつになったら願いを叶えてくれるんだ。このままでは祭壇を燃やしてしまうぞ」店長は凄い剣幕です。
それを見ていた神様は、祭壇を焼かれるのはマズイと思い、店長の前に現れました。
「店長、私を脅してどうするつもりだ」
店長は興奮して言いました。
「神様、俺はこんなに頑張っているのに、何で願いを叶えてくれないんですか?」
「願い?とな」
「とぼけないでください。出玉営業で集めたお客様を留めて、稼働を上げたいと、何度もお願いしているじゃないですか」
「その件ね。悪いけど私は人の心を捻じ曲げることはできないんじゃ。
だから、店長が集めたお客さんを、無理に店舗に留めることはできない。諦めなさい」
「でも、昔は聞いてくれたじゃないですか」
「昔も聞き届けたわけではないが、パチンコ人口が多かったからね。減りの速度が遅かったから、増えたんじゃ。
今はパチンコ人口が少なくなったら動きが速い。それだけじゃ。本質は変わっていない。残念じゃが、あんたの力にはなれそうにないかな」
そう言うと神様は消えていこうとしました。
店長はこのままではマズイと思い、なお食い下がりました。
「じゃ、せめて、どうして集めたお客様が離れていくのか教えてください」
店長は必死の形相です。
哀れに思った神様は答えることにしました。
「それは簡単じゃ。昔から『梅に鶯、花に蝶』と言うじゃろ。お互いに引きあうものが寄ってくるのじゃ。出玉営業が好きなお客さんとはどんな人だね」
「それは、パチンコで儲けたい人です」
「その通り、だから出玉営業で、パチンコで儲けたい人が集まってきているね」
「そうです」
「そのパチンコで儲けたい人は、出玉が無くなってもホールに留まりたいと思うかね」
「それは思わないでしょう」
「だから、いなくなるのは当然じゃないかね」
店長は反論できなかった。でもこのままでは店が潰れてしまう。
「それじゃ、私が困るんですけど。何とかしてください。お願いします」
店長は必死で頼みました。
「店長、神は理、法則なんじゃよ。やったことに応じて結果がでるから、みんな安心して暮らせるんじゃ。
鶯を呼びたかったら庭に梅の木を植えること。蝶を呼びたかったら花を植えること。ハエを呼びたかったらウンコじゃろ。違うかな?」
店長はガッカリしました。
「じゃ、私はどうすればいいのでしょうか?」
「あなたは、どういうお客さんを呼びたいんじゃ。それを明らかにするのが第一じゃな」
そう言って神様は店長を見ると、店長は即答しました。
「出玉をしなくても、うちの店に留まってくれるお客様です」
「じゃぁ、そういうお客様が引き付けられるものは何かな?出玉かな?」
「いえ、違います」
「新台かな?」
「いえ、違います」
店長はしばらく考え、おもむろに答えた。
「たぶん居心地の良い店です。自分自身を大切にしてくれるスタッフがいるお店だと思います」
「それじゃ、そういう施策を打ったら良いだけじゃないか。神は理である。法則だ。蒔いた種は生える。くれぐれも蒔く種を間違わないことだ」
そういうと神様はニッコリ笑って消えていきました。
★・・・他の寓話も見る
掲載日: