コミュニティマネジメント研究所

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パチンコ寓話

パチンコ・イノベーションを促進させる短編寓話集

◆◇◆ 悪魔の管理者勉強会 ◆◇◆

 むかしむかし、あるところで管理職になっている悪魔を対象とした勉強会が開催されていました。 テーマは「どのように部下の成長を阻止するか」という内容です。 全国から悪魔の管理者が集まってきました。

 冒頭、代表のベルゼブブが挨拶をしました。
「本日は、お忙しいところお集りいただき、ご苦労さまです。 みなさんは日々人間界に根をはるべく管理者として頑張っていると思います。今後も会社における自分のポジションを不動のものとするため、 自分にとって代わる部下が育つことを、合法的に阻止そししなければなりません」
 大きな拍手が起こった。 悪魔の勉強会

「しかしながら、魔法を使うのはもってのほかです。 最近の天使が持っているセンサーは、性能がたいへん良いのですぐにバレます。 この間も魔法を使用して、天使に捕まったバカな悪魔がいたことは、みなさんもご存知と思います。 あくまでも自然なかたちが必要です」
 参加者の多くがうなづいた。

「ここに集いし、みなさんは強い絆で結ばれています。 お互いに情報交換をし、自分より能力が高くなる可能性がある人のつぶし方を学んで帰ってください。 これで挨拶を終わります」
 再び大きな拍手が起こった。

 集まった悪魔はグループに分かれ、分科会を行いました。 各グループで、実際の体験談をまえながら、自分より優秀な人間を育てないやり方を紹介し、 それについて、意見を交換しました。
 分科会のまとめとして、それぞれのグループの代表が発表を行いました。

             ◇

「それでは、Aグループお願いします」

「私たちAグループは水際作戦で、優秀そうで優秀ではない人間をどのように雇用するかについて、話し合いました。 私たちのグループは、採用を任されている人が多く、 私たち管理職にとって代わる優秀な人間を取らないのが一番良いということになりました。
 しかし、はたから見て明らかにダメな人間を取ると、自分の能力が疑われるので、それはできません。 そこで考えたのが、そこそこ優秀であるが、会社の方針が理解できない、あるいは合わない人間を採ることが最善と考えました。

 なぜなら、会社の方針と会わないので力が発揮できません。 特におススメなのが、作業はできるがホスピタリティのない人間です。 サービスなどパチンコ店の業績に関係ないと思っている人間はナイスです。 ちょうど人手不足ですので、そういう人間でも雇わないと仕方がないと言えば、 ほとんどの部長や社長は文句を言いません。
 これをみんなで徹底して取り組むことを、Aグループでは確認しました」

             ◇

「素晴らしい発表でした。それではBグループ、お願いします」

「Bグループは、伸びそうなスタッフの能力を上げない方法について検討しました。 何と言っても、物事を考えさせないことです。 そのために過去の経験が大切だと思い込ませることです。 そして、経験豊富な私たちに何事もいて、指示を仰ぐようにするようにします。 そして考える時間はもったいないと思わせ、すぐに答えを与えるようにます。 そうすると、頭を使わず、言われたことだけするようになります。

 それとこれも大切なのですが、何のために作業やサービスをしてるのかを教えないことです。 訊かれたら、せいぜいお客様のためぐらいな抽象的な表現にしていきます。 何のためという目的を告げなければ、いまのサービスや作業のやり方が良いのか悪いのか判断できません。 判断ができないと、工夫や改善をしようとは思いません。頭を使いません。
 この状態を続けると、指示待ち人間になってきます。 これで、社員やアルバイトは成長を止めますので、私たちは安心です。 Bグループは、これを徹底するつもりです」

             ◇

「Bグループも素晴らしいですね。それでは最後、Cグループお願いします」

「Cグループは組織における管理者の立ち位置で考えて見ました。
 まず、社員やアルバイトスタッフに対しては、我々管理者が経営者の横暴から、 あなたたちを守っているというスタンスをとることです。
 経営者は、外の交流もあり、いろんな刺激を受けます。 たまに新しいことをやろうとします。 それを受け入れると、仕事のやり方の変更や業務の改善が必要となってきます。 そうなると、部下の何人かは真剣に考えようとします。
 人間は、何か制約条件や圧力があると、火事場の馬鹿力を出すことがあります。 だから、そんなことにならないように、経営者を説得して、 現状のやり方が最善であること思わせる必要があります。

 そして、経営者を説得する苦労を部下に伝えて、みんなの仕事を軽くするように頑張ている自分を演出して、自分にロイアリティを集めます。 こうなれば実際に無理に経営者が改革をしても、成功するはずはなく、私(悪魔の管理者)の言葉が正しいことを証明することができます。 これは、長く管理職を続けていくためには、非常に大切なことです。

 次に経営者に対しては、現場は頑張っていることをたえずアピールすることです。 そしてなるべく現場に関与させないようにすることです。 そのためにこまめな報告は必要です。 そして上手く行かなかったときの言い訳を用意していおくことです。 最近は業界も厳しいので、競合店も同じように大変であるとか、あるいは競合店より頑張っている と報告しておけば大丈夫でしょう。

 そして経営者になるべくお金を出してもらうことです。 使い道はもちろん、これまでの営業施策、新台入替と出玉です。 これがあると、部下はこれに頼り、安心して考えなくなります。 以上のようにCグループでは、組織内のポジションから、我々の果たすべき役割を考えました」

             ◇

「実に素晴らしいですね。みなさんも是非参考にしてください。 それでは特別顧問サタンさんから、締めの挨拶をしてもらいます」

「サタンです。みなさん、お疲れ様でした。 今回の発表を聞き、たいへん有意義な勉強会ができたと思っています。 それぞれのグループの発表を、しっかりと心に刻んで帰っていただきたいと思います。

 最後に基本の話をします。 部下に本は読ませないようにしてください。 知識を与えることは、考える種をくことになります。 ですから部下と一緒に焼肉屋に行っても、本屋には行かないようにしてください。

 経営者が社員教育するために研修を受けさせようとしたら、反対してください。 不況の時は、無駄な経費は削減しましょうと勇気を出して言いましょう。 そして、研修よりも、今は、新台入替と出玉が必要なことを日頃から伝えておきましょう。

 そして、くれぐれも悪魔は人に嫌われてはいけません。 相手のことを思って、キツイことを言う天使とは違います。 絶えず相手にとって心地良い言葉を発してください。 以上です」

「サタンさんありがとうございます。そうですね。皆さんも基本の上に立って、今日の話を活かしてください。 それでは全員起立をお願いします。
 ここで、標語の唱和しょうわをお願いします。
『地獄への道は善意で舗装されている』
ハイ、みなさんもご一緒に!」

「地獄への道は善意で舗装ほそうされている!!!」

「ありがとうございました。それでは、悪魔の管理者勉強会を解散します」
 閉会の挨拶を受けて、参加者は決意も新たに、それぞれのホールに帰っていった。

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