◆◇◆ 的確に当たる不況の予測! ◆◇◆
むかしむかし、あるところにパチンコ店の社長がいました。
彼の店舗は、規模はそれほど大きくはありませんが、地域で一番繁盛しているお店でした。
店自体に活気があり、常連さんがたくさんいて、スタッフと仲良しでした。
居心地もよく、ちょっとした地域のコミュニティ的存在でした。
そして、家庭にも恵まれ、満足していましたが、唯一のこころ残りは、自分に学歴が無いことでした。
そのために自分の息子は東京の一流大学を卒業させたいと常々思っていました。 そんな社長の思いを息子は感じ、一生懸命に努力をし、一流大学に入学することが出来ました。 大学では経済学や経営学を学んでいました。
息子は社長の自慢でした。そんな息子が2年半ぶりに東京から帰ってきました。 社長は店舗の設備が老朽化してきたと思い、改装に合わせて設備一新したいと考えていたので、息子にアドバイスを求めました。
「お父さん、改装だなんて何をいっているの?
パチンコ業界は不景気なんだ、だんだんお客様が減ってくるよ。そんなお金を使っていたら大変なことになる」
そう言って改装はしないようにアドバイスをしました。
社長は、なるほどと思い改装を取りやめました。
この年の夏は特に暑く、なかなか冷房が効きませんでした。
息子が東京に帰ってしばらくすると、客足が落ちてきました。空調の悪さに耐えられないお客様が去っていきました。
社長はモニターを見ながら思いました。
「最近、客足が落ちてきた。息子の予測した通りだ」
半年経つとまた息子が帰ってきました。
社長は客数が減ったことを息子に話しました。
それを聞くと息子は言いました。
「お父さん、これは序の口だよ。これからもっとパチンコ人口は減るよ」
「どうしたらいいだろうか?」
息子は会社の帳面を見てアドバイスをしました。
「人が少なくなったのにスタッフがそのままです。
モニターを見ていましたが、彼らはお客様と話をしたり無駄が多すぎます。
この際、各台計数機をいれて、アルバイトの数を大幅に減らしましょう。
銀行も経費削減のための融資は、積極的に応援してくれます」
社長は、息子のアドバイスを真に受けて、各台計数機を導入し、リストラをしました。
しばらくするとまた稼働が下がりました。スタッフに会うのを楽しみにしていた常連さんが来なくなったのです。
社長は思いました。『息子が言っていたように、本格的にパチンコ不況が来た』
息子は夏にまた帰ってきました。
社長は、息子に「お前の予測した通りになってきている」と言いました。
息子は当然ですと頷き、父にもっとアドバイスをするために、再び会社の帳簿を丹念にチェックし始めました。
「お父さん、総付け景品をもっと安いものに切り替えて、数も減らしてください。
人も少ないので新台ももっと減らせます。出玉などは持ってのほかです。
夜間に入る掃除スタッフの人数も減らしましょう。
丁寧にしてもしなくて客は気づきませんよ。
それから土日の駐車場の警備スタッフもやめるべきです。
こんなに客人数が下がってきているのに人件費がもったいないですよ。
お父さん、これからはさらに酷いパチンコ不況が来ます。お金を貯めて、万一に備える必要があります」
そうアドバイスをすると、息子は研究論文を書くために東京へ帰っていきました。
社長は息子のアドバイスをすぐに実行しました。 しばらくするとお客様は目に見えて減り、店舗が立ちいかなくなり、閉めることにしました。
「やっぱり息子の予測は正しかった」と社長は思いました。
社長はさっそく息子に電話で、店を閉めることを告げ、お前のお陰で、お金が残り、社員に退職金も払えることが出来たと感謝しました。
「お父さん、早目に店を閉めたと思うかもしれないけれど、
競合店のように無理して経営するより、これが一番正解ですよ。
遅かれ早かれ、彼らも店を閉めるでしょう。
この業界の流れは変えられません」
社長はさすが息子は一流大学で勉強をしただけのことはある、鋭い洞察力だと思いました。
「それから、お父さん、就職が決まったよ。大手都市銀行の××だよ」
社長はそれを聞いてやっぱり息子は優秀だと嬉しくなりました。そして言いました。
「息子よ、お前は俺の自慢の息子だ。お前の予測とそれに対する的確なアドバイスは素晴らしい。
××銀行に就職したら、多くの経営者にアドバイスをして、その才能を世の中に役立てるんだ」
「ありがとう、お父さん。僕もそのつもりです」息子は静かに答えました。
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