◆◇◆ 第43話 店長の評価基準 ◆◇◆
むかしむかしあるところにパチンコ店を経営している三代目社長がいました。 社長になってから二代目社長である父の経営手法を真似て経営してきました。 しかし、最近パチンコユーザーの減少とともに経営が上手く行きません。
◇
今日は月１回の店長を集めて会議を開く日です。 午後１時からスタートなので、12時ごろに本社に店長が集まります。 昼食はいつものお弁当が届き、店長達はそこで食事をしながら近況報告や雑談をしていました。
最古参の店長がみんなに聞きました。
「今日の会議は大丈夫か？」
「ばっちり、大丈夫ですよ！」
聞かれた店長達は、今のご時世なので稼働が減少し、運営もいろいろ大変だと言いましたが、
社長が気にしている評価基準は満たしているので大丈夫と答えました。
「そうか、それは良かった。前の社長の評価基準は絶対だからな」
「逆に言えば、その基準さえ満たしておけばキツイお叱りは受けない。・・・でしょ！」
「そういうことだ。みんなクリアーしてるなら、今日の会議は早く終わるな」
他の店長も頷きました。
「もうそろそろ社長が来る頃だから、みんな所定の席につくように」
そう言って最古参の店長は社長の席に一番近い席に座りました。
◇
社長が社長室を出て会議室に行こうとしたとき、スマホの携帯がなりました。
発信者を見ると引退して妹夫婦と海外生活をしている前社長のお父さんです。
「ハイ、もしもし。お父さん、どうされたんですか？いまどちらですか？」社長は突然の電話に驚きました。
「今、サクラメント（米国）の家に居る。母さんも元気だ。
ところで、この間、知り合いから電話をもらって『あんたとこのホールは客がえろう少なくっているが、大丈夫なのか？』って言われたんでな。
気になって電話をしたんだ」
「そうなんですか。ご心配をおかけして申し訳けありません。
お父さんの時とは違って今は、業界全体が縮小しているので大変ですが、
お父さんが大切にしていた評価基準をしっかり守ってやってますから、大丈夫ですよ」
「稼働は下がってないのか？」
「それは業界全体が縮小しているので、下がってはいますが、地域のシェアはしっかりキープしていますので大丈夫です」
「地域シェア？だと」
「そうです。お父さんがよく言われてました地域シェアですよ。
昔、店長達が稼働が前年対比で伸びていますと言っていた時に、前年対比よりも地域シェアが大切だと言われていたじゃないですか」
「息子よ、確認するが今地域のパチンコ人口は減少しているのか？」
「そうです。先ほども言いましたように、業界全体が縮小していますから」
「・・・・・・では地域シェアをどう使っているのだ」
「一応、稼働が下がっても地域シェアは最低死守するように言ってます」
「それで・・・」
「地域シェアはだいたいキープしています」
「稼働は？」
「下がっています」
「息子や、このままではお前の会社は倒産するぞ！」
「どうしてですか？」
「業界が縮小するときに、地域シェアを基準に経営を判断しているからだ」
「でも、お父さんも・・・・」
「あの時は、業界が伸びていたから、地域シェアを問題にしたのだ。
縮小しているときは、損益を考えた絶対稼働数を判断基準にしないとダメじゃないか」
「・・・・そうなんですか？」
「地域シェアをキープしていても、赤字経営では会社が持たないだろう！！」
「・・・・・・」
「今日からは、採算の基づく絶対稼働数を基準に店長を評価するんだ。
いくら地域シェアをキープしていても、たとえ地域シェアを上げていても、
店長には『絶対稼働数がないとダメだ』と言って稼働アップを工夫させるように言うんだ。
わかったか？」
「でも、これまで地域シェアで評価してきたのに・・・・」
「間違いが分かったら、すぐに正すことがトップの仕事だぞ！」
「わ、わかりました」
社長はそう言いながら、店長が評価基準を満たしているのに業績が悪くなる違和感の理由が分かりスッキリしました。
『よし、さっそく今日の会議から評価基準が変わったことをみんなに告げよう！』
そう思って時計を見ると会議の時間を3分オーバーしていました。
『これはマズイ』
急いで社長室を出ました。
◇
社長が会議室に入ると店長達が着席して待っていました。
「社長、準備は出来ています。いつでも始められます」最古参店長が社長に報告した。
社長は所定の席に座ると背筋を伸ばし、深呼吸をしました。
「会議の前にみんなに伝えておきたいことがる。
今日から評価基準を地域シェアではなく、稼働数と利益にする。これを基軸に報告をしてくれ」
「・・・・・・」
店長達は固まりました。
＜ポイント＞
基準の使い方を知らないと害になることもある。
★・・・他の寓話も見る
掲載日：