◆◇◆ 第85話 データの活用③ ◆◇◆
むかしむかしあるところにパチンコ店を経営している社長がいました。
厳しい経営環境の中、データを活用して店舗運営を改善したいと思い、各店長にデータを活用するように常々言っていました。
しかしながら、なかなか店舗経営は上向きません。
社長は、出張を利用して、以前から交流がある大学の先輩の社長ところへ相談に行ってみました。
◇
「久しぶりだね。元気そうで何より。こんな遠くまでわざわざ来てくれたんだ」
「先輩、お久しぶりです。実はお伺いしたいことがあって・・・・」
「何でも聞いてくれ。何でも相談にのるよ?」
「実は、データの活用方法についてなんです。
先輩の会社の業績が良いことは良く知っています。
先輩を見習いたいと思って、自分の会社でもデータ活用をするように言っているんですが、どうも上手くいきません。
そこで、具体的にどのようにされているのか、お聞きしたいと思いまして・・・」
「なんだ、そういうこと。具体的なことが知りたいなら、実際、店舗を運営している店長から聞く方が早いぜ」
先輩はそういうと、本社1階のパチンコ店の店長を社長室に呼びました。
そして、事情を説明し、できる範囲でいいから答えるように指示しました。
◇
「忙しいところ悪いね」
「いいえ、かまいません。何でも訊いてください」店長は答えた。
「遊技台の全国データの活用なんだけど」
「稼働データですね」
「全国データで稼働が高く、自分の店舗でも稼働が高い場合は問題ないと思うんだけど、
全国データで稼働が高いのに自分の店舗の稼働が低い場合どうしているかな?」
「そうですね。その場合は、自店の遊技台の運営に問題があると仮定して、その遊技台の稼働を上げるように工夫します」
「具体的には?」
「まず、台データから過去3か月くらいの推移を見ます。
「機種ごとに会員管理を使って遊技者を管理しているので、その機種を継続的に打っている人が減っているのか、
それとも新に打つ人が減っているのかチェックします」
「なるほど」
「継続的に打つ人が急激に減っている場合は、台整備に問題があるか、台演出に問題があるのか調べていき、悪いところを見つけて改善していきます」
「新に打つ人が減っている場合は?」
「会員データで調べると分かりますが、定番機以外は、打ってない人がかなりいます。そこで、お客様を積極的に誘導するように役職者に指示を出します。
役職者は、お客様を誘導しやすいように何か工夫をします。そして、スタッフに口頭での声掛けなどもさせています」
「なるほど・・・」社長は店長にメモを取った。
◇
「じゃ、全国データの稼働が下がってきているが、自分の店舗の遊技台の稼働が下がってない場合は?」
「その場合は特に問題はないのですが、ただ、一般にユーザーがその台に飽き始めていると考えられるので、
稼働を維持したい台については、その台の魅力を改めてアピールする工夫をしています」
「魅力のネタはどうやって見つけるの?」
「それはいくらでもあります。メーカーの遊技台のパンフレット、ユーチューブの動画、それから自店で集めているお客様の声ですね」
「なるほど」
「基本的に、全国データの方が高い場合は、それを少しでも上回るように工夫しています。
逆に自店が高い場合は、それを維持するように工夫をしているという感じですね」
「ありがとう、参考にさせていただくよ」
社長は店長に礼を言った。
社長は、自分がなんとなくイメージしていた活動を、具体的に実践していると感心した。
社長はこれまでデータ活用と頭ごなしに言ってきたが、具体的に店長達がデータをどう活用しているか訊いていないことに気づいた。
『この出張から帰ったら、うちの店長にどうしているか訊いてみよう』
社長はこの後、先輩と飲みに出かけた。
◇
社長は出張から帰ると、さっそく自店のベテラン店長を社長室に呼び出した。
「社長、なんでしょうか?」
「ちょっと、訊きたいことがあるんだけど、いいかな」
店長は怪訝な顔をして社長を見た。
「大したことじゃないよ。稼働の全国データがあるだろう」
「はい。あります。いつも見てますが、それが何か?」
「全国データの稼働が良いのに、自店の遊技台の稼働が下がったらどうしている?」
「その場合、とりあえず出玉をして様子を見ます」
「その後は?」
「それでだめなら。基本回収台にしています」
「・・・・・・・」
「それが何か?」
「・・・・・・、じゃ、全国データの稼働が下がってきているのに、自店の遊技台の稼働が良かった場合は?」
「その場合は、もうすぐ稼働が下がることが予測できるので、稼働がある間に機械代の回収漏れが無いように回収台にしています。
大抵の場合、予測通り自店の台の稼働も悪くなるので、全国データは回収漏れ防止に役立っています。
社長がおっしゃるようにデータ活用は大切ですね」
ベテラン店長は力強く答えた。
「・・・・・・・、・・・・・・」
「社長、他になにか???」
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