◆◇◆ 第87話 努力と成果 ◆◇◆
むかしむかしあるところにパチンコ店の店長がいました。
最近稼働が下がってきて困っていました。
毎日努力をしていますが、状況は良くなりません。
台の整備、新台入替、接客接遇やサービス、クリンリネス、景品企画に地域のための活動等など、いろいろ頑張っています。
こうなっては神頼みしかないと、近くの神社にお参りに行きました。
「どうか、稼働がV字回復しますように、お願いいたします」
二拍一礼をしてお祈りをしました。
◇
その晩店長は夢を見ました。
夢の中は今日行った神社でした。
社(やしろ)を見ていると、光が差し、中から神様が現れました。
「神様は、人間の競争に不当に関与はしないが、アドバイスは与えよう。何でも言ってみなさい」
「ありがとうございます。神様。
私はこれまで努力をしてきました。
他の競合店の店長より頑張っていると思います。
しかし、稼働は下がる一方です。
どうしたら良いのでしょうか?」
◇
「なるほど、ではどんな努力をしているじゃ」
「台の整備をしています」
「それで地域で一番出しているのか?」
「それはうちの会社ではできません。地域で3番手ぐらいです。トップはおそらくA店です。特に○日は凄く人が集まります」
「そうか、他にはどんな努力をしておる?」
「新台入替をやっています。」
「地域で一番か?」
「それはうちの会社ではできません。地域で3番手ぐらいです。トップはおそらくB店です。人気台も大量に入れてきます」
「なるほど。他には?」
「接客接遇を強化しています」
「地域で一番か?」
「残念ながら地域で3番手です。C店の接客接遇が一番です。新人アルバイトもしっかり教育されている凄い店です」
「他には?」
「サービスも強化しています」
「それは地域で一番か?」
「残念ながら地域で3番手です。サービス数と工夫ではD店が一番です」
「他には?」
「クリンリネスは徹底しています」
「なるほど、それでそれは地域で一番なのか?」
「一番ではありません。E店には負けます。最近建ったところですし、設備も最新です」
「他には?」
「景品企画も強化しています」
「それは地域で一番なのか?」
「残念ながら地域でこれも3番手です。F店が地元の企業とコラボして一番面白い景品企画をしています」
「努力はこれでおしまいか?」
「地域に対する貢献活動もしています」
「それで、それはお前の店が地域で一番やっているのか?」
「いえ、これも3番手です。G店が一番だと思います。地域の清掃や市との防災協定など派手にやっています」
「まだあるのか?」
「これですべてです」
「そうか」神様は頷いた。
「残念ながら地域の一番はありませんが、総合力では3番手だと思っています。
地域には15店舗ほど競合店がありますが、稼働は地域で8番目になってしまいました。
他店に負けないようにするためにはどうしたら良いのでしょうか?」
店長は必至の思いで神様を見ました。
◇
神様は店長に言いました。
「あなたは、ガンがあり難しい手術を受けることになったとして、1番手術の上手い病院と2番目に上手い病院、3番目に上手い病院のどこへいく?」
「もちろん、一番手術の上手い病院です」
「では、あなたが映画を見に行ったとしよう。1番面白い映画と、2番目に面白い映画、3番目に面白い映画どれを見る?」
「そんなの決まっているじゃないですか。一番面白い映画ですよ」
「お前は3番目は選ばないのか?」
「当然です」
「それが答えだよ。人間は一番を好む。好みは様々だが、その好みの中で最善を選ぶ。
自分の制約条件の中で最善を選択する。つまり、何か一番が必要だということだ」
神様はそう言うと社の中に消えていきました。
店長は目がさめました。
店長は思いました。
一番を目指すと役職者やスタッフに負担がかかる。
彼らに無理をさせたくない。
辞めるようなことになれば、人手の補充はなかなかできない。
店長はしばらく様子を見ようと思いました。
◇
1年後。店長は終礼である発表した。
<解説>
よく言われるのは一番高い山の話。
一番は知っているが、二番は知らない。ましてや三番ならなおさら・・・。
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