◆◇◆ 第88話 交通安全週間 ◆◇◆
むかしむかしあるところにパチンコ店の店長がいました。
稼働を上げる何かいい施策がないか考えていましたが良い案を思いつきません。
そこで、繁盛店から改善のヒントを得たいと視察に行きました。
◇
一般客を装い、遊技をしてサービスカウンターに行きました。 景品交換のために並んでいると、スタッフとお客様の会話が聞こえました。
「いつもありがとうございます。今日から秋の全国交通安全週間ですので、安全運転お気をつけください」
「そうか、今日からか。ありがとう助かるよ」
そう言ってお客様はカウンターから離れていきました。
次の客に同じように全国交通安全週間についての声掛けをしていました。
「全国交通安全週間の情報はお役に立ちましたか?」
「役に立ったよ。知らなかったら警察にキップを切られるところだったよ。ありがとう」
そう言ってお客様は笑顔でカウンターから離れていきました。
店長の順番が来ました。
遠くから来たので、パチンコ店の店長であることはバレていません。
「ご来店ありがとうございます。ご存知かもしれませんが、今日から秋の全国交通安全週間です。安全運転お気をつけください」
スタッフは笑顔で感じがいい。
声掛けの内容も、ドライバーには役に立つ貴重な情報。
これならスタッフに好感を持ち、店舗に好感を持つと思いました。
再来店が期待できる。
だから、この店は繁盛しているにか。
店長は繁盛店の気遣いある対応に感心しました。
そして店長はすぐに返って、自店のスタッフにも同様の案内をさせようと思いました。
◇
店長は帰ると役職者に指示を出しました。
すぐに全国交通安全のポスターをダウンロードして、カウンターに置くこと。
そして、カウンタースタッフには交通安全週間のご案内を、必ずお客様にするように言いました。
翌日店長は、指示通りのことがされているかカウンターに見に行きました。
問題ありませんでした。
スタッフは指示通りに、お客様に全国交通安全週間のことを伝えています。
お客様からは良い情報をもらったと喜んで帰る人もチラホラ。
店長はこれなら好感度が上がってまた来てもらえると安心しました。
店長はそれから二連休をとり、家族と旅行にでかけていました。
全国交通安全週間なので、慎重に運転し、警察に捕まっている人を見ると気の毒に思うと同時に、
うちの店舗に来ていればよかったのにと思い、今回の施策はお客様に役に立っていると確信を深めました。
◇
交通安全週間の最終日、店長が店舗に入るために駐車場を通っているとお客様同士の会話が聞こえました。
「この店舗に来るのはやめようと思っている」
「俺も、他の店舗に行ってもいいかな、と思っている」
「ここのスタッフは接客がきっちしてるし、感じが良いと思っていたけど、あれじゃここに通う意味がないよ」
「俺も、今度同じような対応だったら、他に行こうと思う」
お客様を見るとそこそこの常連客です。
店長はびっくりしました。
カウンタースタッフが急に酷い対応をしている?
そんなことはないと思いつつ、店長は急いで事務所に行きました。
モニターをしばらく見ていましたが、別におかしなところはありません。
役職者を呼び出して、何かスタッフが失礼な対応をしていなか訊きましたが何もありません。
さっきのお客様の会話が理解できません。
気になるので、事務所からでて、何気なくカウンターの様子を伺いました。
◇
カウンタースタッフは指示通りの対応をしています。
「いつもありがとうございます。今、秋の全国交通安全週間中です。安全運転お気をつけください」
特に問題はありません。
しばらく見ていると案内初日見た常連さんがカウンターにやってきました。
するとカウンタースタッフはお客様に声を掛けました。
「いつもありがとうございます。今、秋の全国交通安全週間中です。安全運転お気をつけください」
初日喜んでいたのに、スタッフと言葉を交わすわけでもなく、冷ややかに特殊景品を受け取っています。
店長はピンときました。
『しまった。バタバタしていて、2日以降の現場確認を怠った』
店長はすぐにそのお客様に声を掛けました。
「いつもありがとうございます。今日が安全週間の最終日ですが、大丈夫でしたか?」
「お陰様で今回はキップを切られなかったよ」そう言って常連客少し機嫌を直して店舗を出ていきました。
店長はすぐに役職者とカウンタースタッフに新たな指示を出しました。
<解説>
無機質に文字切的なトークを使うと、常連に”あなたを個客として覚えていませんメッセージ”を送っていることになるので要注意。
常連客に一元さん対応をすると離反のタネを撒くことになる。
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