コミュニティマネジメント研究所

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パチンコ寓話

パチンコ・イノベーションを促進させる短編寓話集

◆◇◆ 第59話 悪魔の出玉 ◆◇◆

 むかしむかしあるところにパチンコ店の店長がいました。
 最近、お客様が少なく稼働が上がらないので、何とかしたいと考えていました。
 新台を入れ替えても、出玉をしてもあまり効果はなく、接客接遇を良くしてもあまり効果はありません。 店長はどうしたら良いか分からなくなってきました。 市場規模が縮小して、斜陽産業化しているから仕方がないとも思いましたが、 同業者の中には繁盛しているところもあります。 市場調査ということで、何度かそういう店に行っても理由がわかりません。

     ◇   

 店長は毎晩寝る前に天の神様に祈っていました。
「どうぞ、私に稼働を上げるヒントをお与え下さい」
 毎晩熱心に祈るので、天の神様に使えている天使はヒントを与えることにしました。 夢枕にたった天使は言いました。
「来店したお客様の『体験価値』を最大にしなさい。そうすれば人が集まってくるでしょう」 店長は喜びましたが『体験価値』が良くわかりません。
「すみません。一つだけ質問してもよいでしょうか?」
「何でしょう?」
「『体感価値』の意味がよく分からないのですが・・・」
「それはね。この店舗に足を運んで良かったと感じる『心の躍動』のことです」
「ありがとうございます」 そこで店長は目が覚めました。

     ◇ 

 天使の掲示を受けてから、店長はずっと考えました。
でもよく考えて見ると、新台入替にしても、出玉にしても、接客接遇の改善にしても、お客様の『体験価値』を上げるための努力と思えてきます。
次第に天使の言葉は、当たり前のこと言っているようにしか思えなくなりました。
 その様子を見ていた悪魔がほほ笑みました。 そして、店長に囁きました。
「店長、天使の言っていることは真実だよ。天使は『体験価値』を最大にしないと言ってじゃなか。つまり、今までの取り組みが甘いということじゃなかな?」
「でも、新台はなかなか良い台がでないし、出玉は予算があるし、これ以上の接客接遇の向上は時間がかかります」
「自分の制約を付けて何もしないのは、いただけないね。店長が腹をくくればすぐにできることがあるだろう!」
「出玉ですか?」
「社長を説得するんだ。しみったれた出玉は効果が無い。 ドーンと出玉をすることで、お客様の『体験価値』が上がり、お客様が集まってくると。 店長、腹をくくって栄光を手にする時は今じゃないかな」
 天使の言っていた『体験価値』の最大化とはそういうことかと、店長は腑に落ちました。

     ◇ 

 さっそく、店長は社長に直談判をしに行き、”絶対に稼働を立て直す”と言い切り、大幅な予算をといってもらいました。 その様子を見ていた悪魔はほほ笑みました。 それを見ていた別の悪魔が言いました。
「おい、大丈夫なのか?ほんとに店舗を立て直してしまうんじゃないか?」
「大丈夫、あの店長は俺の期待に応えてくれる」
 半年後、店舗はつぶれ、店長は首になりました。

寓話

     ◇ 

「おい、お前、あの店がつぶれるとよくわかったな?天使のヒントが間違っていたのか?」
「いや、天使のヒントは正しいさ、彼らは正しいことしか言わないからね」
「じゃ、なぜ潰れたんだ?」
「店長が無知?人の心理を知らなかったからさ」
「・・・・・・」
「天使は、『体験価値』を最大にしろと言った。簡単に言えば『うれしさ』の最大化さ」
「だから、店長は無謀な出玉をしたんだろ??」
「ちょっと聞くけどさ。人間は1万円を拾ったらうれしいと思うか?」
「そりゃうれしいと思うだろう」
「それじゃ、自分の持っていた1万円を無くして、必死で探してやっと1万円を見つけた時はどうだろう?」
「もちろん、それもうれしいさ」
「じゃ、1万円を拾った時と無くした1万円を見つけた時、どっちがうれしいと思う?」
「そりゃ、無くした1万円を見つけた時だろう」
「なるほど、そういうことか・・・」(気になる人は<解説>を読んでください)
 悪魔たちは天使の言葉を利用して、人間を不幸にしたことで、いつも以上の達成感を感じていました。

 

<解説>

 気になる人のための会話の続き。
「天使の言いたかったことは、『体験価値』の最大化だろう。
 つまり、同じ1万円でもどのように提供するかで『体験価値』が変わるから、それを工夫しろということだったのさ。 現状では、まだまだ工夫の余地があると考えたんだろうな。 まあ、実際、店長が顧客心理に関心を持っているか、プロスペクト理論を知っていれば、気づいたと思うけどね」
「なるほど」
「それを俺は、出玉の質の問題ではなく、出玉の量の問題へと、店長の思考を誘導したというわけさ」
「さすがなだ」
「パチンコはゲームの楽しさと、一度失ったものを取り戻し、儲ける楽しさをミックした娯楽なのさ。 それを理解していない店長は出玉の量だけを問題にする。 そこに、俺たちが入り込む余地ができるというわけさ」
 そう言って悪魔はにんまりと笑いました。

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