コミュニティマネジメント研究所

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パチンコ寓話

パチンコ・イノベーションを促進させる短編寓話集

◆◇◆ 第66話 店長採用の基準③ ◆◇◆

 むかしむかしあるところにパチンコ店を営む会社がありました。 社内新しい風を入れて、厳しい経営環境を乗り越えていきたいと考え、店長を募集することにしました。

 応募は結構あり、人事担当部長はまず自分が面接しようと思いました。 その結果を踏まえて絞り込み、社長面接をしたいと考えていました。 そこで、募集状況の経過報告をともに、今後の段取りと社長の日程を押さえるため、社長室に行きました。 社長は話を聞くと1つ注文を出しました。 部長面接前に30分時間をとり、『パチンコ業界縮小の原因と課題』というテーマで作文を書かせるように指示を受けました。

 実際面接に来た人間は10人。 30分間隔で応募者に来てもらい、最初の30分で作文、その後20分ほど部長面接を実施。 途中時間調整の休憩時間も入れていたので、部長にとっては丸一日の作業となった。 これまで外部から店長を募集したことはなく、初めての店長面接ということもあり部長はへとへとになっていた。 やっぱり1日10人の面接はきついと思ったが、これはと思う応募者がいたことは部長の心を軽くした。

     ◇ 

 翌日、部長は社長のところに面接の結果と作文をもっていった。
「昨日はご苦労様。いい人材は見つけられたかな」
「はい、結構大変でしたが、店長として採用してもよさそうな人間がいました」
「わかった。いま資料に目を通すから、部長はそこのソファーに座って待っていてくれ」 そう言うと社長は作文を読み始めた。 読み終えると部長が持ってきた面接結果表になにやらチェックをしている。
「おまたせ。この”×”のついた応募者は不採用の連絡をしてくれ」
 社長から返却された書類を見ると、自分が一番採用したいと思った人間に”×”がつけてある。 部長は”×”の理由を社長に尋ねた。
「社長、この応募者は実際に面接をして、やる気はある。学歴も経歴も悪くない。私は採用すべきと思ったですが、なぜ、”×”なのでしょうか?」
「部長は作文を読んだ?」
「はい。一応すべて目を通しました。この応募者の作文はパチンコ業界の原因を的確に書いていたと思います」
「確かにパチンコ業界の縮小の原因について的確に書いてはいる」
「だったら・・・」
「しかし、店舗の問題点については書かれていない」
「どういうことでしょうか」
「原因として挙げているのは、遊技機メーカーの問題点、周辺機器メーカーの問題点、警察庁の規制の在り方の問題点、業界団体の在り方、 日本の人口問題、ユーザーの生活様式の変化など、どこかの調査会社が書いたような内容だ。 これはこれで間違いではない。 しかし、肝心の店舗自身についての問題点が書かれいない」
「店舗自身のですか?」
「この人間は、業界縮小の原因をメーカーや警察、ユーザーが原因としている。
では、業界をよくするためにこの人間は何ができる? メーカーを指導する?警察に規制の在り方を意見する?ユーザーに生活様式を変えるようにお願いする?」
「そんなことはできません」
「ということは、この人間は業界を良くすることはできないということになる。 我々は店舗を通じて業界を良くしていく。 店舗の問題は店長の権限で改善できるからな。 しかし、この人間は店舗の問題点を書いていない。 それは原因を他者に求めているからだ。 そのために店舗の問題点、改善点が見えなくなっている」 寓話
「・・・・・・」
「どんなにやる気があっても、どんなに頭が良くても店舗の問題点が見えない人間は使い物にならない。 そういう人間は店舗の業績が悪くなると、
『メーカーから良い遊技台がでない』
『規制があって手が打てない』
『競合店の方が新台が多い』
『競合店の方が十分な出玉をしている』
『競合店がイベントしている』
『お客様が忙しい』
『役職者の能力が足りない』
『最近のアルバイトはレベルが低い』
挙句の果てに
『店舗の立地が悪い』
『店舗が小さい』
『予算が少ない』
など言い訳のオンパレードをしてくる。 頭が良いだけに、そんなことまで言ってくるか?というくらいにさぁ」
「・・・・・・・」
「うちの店長連中を見てわかるだろう。 言い訳の多い店長ほど業績が悪い。 それは自分の問題点を見つけられないからさ。 問題点が見つけられないから、改善ができす業績が下がる」
「・・・・・・・」
「頭がいいから、作文は理路整然としているが、これでは役には立たない。 採用したい店長は、言い訳をせず、自店の改善点を見つけて、確実に業績を上げてくれる人間だ。 そういう視点でみて”×”をつけている」
「わかりました。勉強になります。 では”×”のついた応募者は不採用ということで連絡します」 部長はそう言って社長室を後にした。

     ◇ 

 部長は納得はしていなかった。 面接のときの印象が良かった。 それに学歴も申し分ない。 自分の大学の後輩だ。
『おそらく彼は、店舗の問題点もわかっていたはずだ。 ただ時間が足りず書けなかったのではなかったのではないか・・・』
 ふと窓の外に目をやると向かいの食べ放題の焼肉屋に行列ができている。
『もしかしたら、社長は書く順番も見ているのだろうか。 大切なことから書いていかないと、時間も紙面も有限だ。 そう考えると書いていない時点でアウトと言われても仕方がないのか・・・』
 そんなことを考えながら自分のデスクに戻っていった。

 

<解説>

問題解決の原因分析は、自分が対処できる原因に対して行わなければ効果はない。 発生した問題に対して、自分が対処できない原因を長々と説明することを”言い訳”という。

 「原因分析 ≠ 改善能力の高さ」

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