◆◇◆ 第67話 業績報告 ◆◇◆
むかしむかしあるところにパチンコ店の新米店長がいました。 新米店長は今度の店長会議に出ることが憂鬱のタネでした。 業績が前年に比べて悪いからです。 先月の会議で前年対比を割り込んだ店長を、社長はしつこく叱責をしていました。 『うちの社長は前年対比を気にするから、多分今日は俺は怒られる』 そう考えると本社へ向かう足取りが遅くなります。
新米店長は気を紛らわせるために、本社近くのカメダ珈琲店でコーヒーを飲むことにしました。
店内に入ると、先輩店長がコーヒーを飲んでいました。
先輩店長は新米店長をみると手招きをしたので、断るわけにもいかず同席することにしました。
「どうした。元気がないな」
気さくに声をかける先輩店長に事情を説明すると、要領よく答えれば問題はないと笑って言い、
そんなことでいちいち落ち込んでいたらこれから先もたないとアドバイスをしてくれました。
「どういうことでしょうか?・・・・・・」
「業績が5%ダウンしたのだろ、ただそれだけを報告すると社長の印象は悪い。
先週、長々と叱られている北エリアの店長を見ただろう」
「はい、みました」
「ああいうことになる。だから、それだけを報告するのじゃなくて、良い部分も合わせて報告することだ」
「具体的には?」
「君の店がある西南エリアのユーザー数はどうなっている?」
「統計調査資料では8%ダウンしています」
「だったら、市場は8%ダウンしましたが、頑張りましたが5%ダウンとなってしまいました。
シェアは上げたのですが、前年までは届きませんでした、と報告すれば、社長には頑張っていることが伝わるさ」
「でも、統計調査資料では隣の競合店は前年より2%ユーザー数を上げています」
「そんなことは社長に報告しなくていいさ。きみの業績が相対的に悪くみえるだろう。余計な情報は流さないことだ」
「・・・・・・」
「会議で気分が落ち込んではやる気がでないじゃないか」
「そうですよね。アドバイスありがとうございます」
新米店長は先輩店長に感謝した。
その日の会議は一言、社長からあったが、なんとか無事に終わることができた。
◇
数か月後、新米店長の降格が発表された。
<解説>
問題を内在化させてしまうと改善の光をあてることができず、問題がさらに大きくなる。 悪魔は感謝されて一流。
★・・・他の寓話も見る
掲載日: