◆◇◆ 第70話 気遣いとモノくれ ◆◇◆
むかしむかしあるところにパチンコ店がありました。
タヌキ店長は社長からお客様の定着化が一番の課題であると指摘されていました。
しかし、定着化のために何をすべきかぜんぜん思いつきません。
そこで、同じグループのウサギ店長を訪ねて知恵をかりることにしました。
ウサギ店長は言いました。
「お客様に気遣いをすることだよ。
喜んでくれて、スタッフとも親しくなってくれる。
この間、雪が降ったときがあっただろう、その時、入浴剤を配ったら喜ばれて、継続して来店してくれる人が増えたよ」
タヌキ店長はなるほどとと思いました。
タヌキ店長は早速実行してみることにしました。 幸いこの週は大陸からの寒気が流れ込み、雪が降るという予報がでたので、ウサギ店長に聞いた通りに、入浴剤を配りました。 データを取って効果の有無を見ていますが何もかわりません。
タヌキ店長は、本社でウサギ店長見かけたので、文句を言いに行きました。
「入浴剤を配ったけど、効果はないじゃないか!」
ウサギ店長は急に言われてびっくりしました。
「効果がない?」
ウサギ店長の不思議そうな態度にタヌキ店長はムカッとしました。
「そう、全然効果がなかったよ」
「おかしいな?・・・ところで気遣いしながら配ったよな?」
「気遣い?」
「そう、気遣いだよ。具体的にスタッフにどんな指示をだしたの?」
「そ、それは・・・今日は雪が降るから入浴剤を配布するようにと言ったよ」
「具体的に、どのように配ったのか言ってくれよ」
「カウンタースタッフが景品と一緒に渡した」
「どんな声掛けをして?まさか無言で渡してるのか?」
「それは、知らない・・・」
ウサギ店長の表情が険しくなっていきました。
「タヌキ店長!
俺は定着化のためには気遣いすることだと言ったよね。
気遣いをせずに相手に渡しすのは、ただのものくれだよ。
お客様は乞食じゃないんだ。
ただモノをもらったからといって単純に喜んだり、俺たちに好意を持つわけないじゃないか。
気遣いをして、お客様をかけがえない存在として扱うから、お客様のこちらにシンパシーを感じてくれる。
その気遣いをしないで効果がない?
当たり前じゃないか。
お前の言いがかりに付き合うほど俺も暇じゃない!」
そう言ってウサギ店長は怒りを露わにしました。
逆切れして去ってくウサギ店長を、タヌキ店長はただ茫然と眺めていました。
<解説>
気遣いは、する人が相手に関心があることを伝えないと、成立しない。 誰でもいいから良くなってくださいと何かをされても、誰も自分に気遣いをしてもらったとは感じない。
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