コミュニティマネジメント研究所

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パチンコ寓話

パチンコ・イノベーションを促進させる短編寓話集

◆◇◆ 第76話 特大のぼり旗 ◆◇◆

 むかしむかしあるところにパチンコ店がありました。 この店は都市の東側になるので東店と呼ばれていました。
 ある日、会社から出玉アピール用に特大のぼり旗が10本送られてきました。 東店の店長は思いました。 この特大のぼり旗を使って、特別な日は普段より出している感を演出しろということだろう。 店長は、7の日を印象付けたいと思っていたので、7日にこののぼりを立てることにしました。

     ◇

 今日は7の日です。
「店長、いい感じですね」
 ホールから戻って来た副店長が店長に声を掛けました。
 本部から送られてきた特大のぼり旗のデザインもいい、店長はこれで競合店との差別化を図れると思いました。

     ◇

 あれから2か月、7の日に特大のぼり旗を立てましたが、集客がパッとしません。
「店長、今日は集客が今ひとつですね」
「そうなんんだ。特大のぼり旗の効果もそろそろ切れてきたのかな」
「店長、最近競合店も稼働が下がっています。特大のぼり旗を出したからといって、お客様が集まることはないと思いますよ」
「そうだよな、お客様は俺たちの都合で動いてくれるわけではないので、今日みたいに集客ができない日があってもしかたないか」
「でも、店長。こんな日に社長が見に来られたらまずいんじゃないですか」
副店長が店長に話し終わるとすぐインカムが入った。
「社長がホールに来られました」
 店長はまずいと思いましたが、どうすることもできません。ホールを一回りすると社長が事務所に入ってきました。
「店長!!」社長はいきなり店長を呼びつけました。
「特大のぼり旗が出ているのに、この集客はどうなっているの?」
 社長は店長の答えを待たずに言いました。
「特大のぼり旗が出ているのにこの集客じゃ、嘘(出玉)イベントをやっているようじゃないか。 もしかして今日は絞っているの?」
「いえ、出しています」
「せっかく出しているのに、こんなんじゃ逆効果だよ。そう思わないか?」
 そう言うと社長は事務所を出ていきました。

      ◇

「店長、どうしましょう」
「社長のおっしゃる通り、特大のぼり旗のイメージが悪くなってしまう」
「特大のぼり旗を外しましょうか?」
「途中で外すとおかしくなる。今日は仕方がないこのままにしておこう」
「次の7の日はどうするんですか?」
「集客状況を見て出すことにしよう。○○○以上になれば、特大のぼり旗を出す。そこまでいかないなら出さない」
「さすがです。それなら特大のぼり旗の印象は悪くなりませんね」
 副店長は店長の頭の良さに感心した。 『もうすぐ定年退職した部長の後任人事がある。 うちの店長が、部長になれば、俺もいよいよ店長か』 副店長は、さっそく今の指示をスタッフに伝え、次から実行に移した。

      ◇

 月末の定例店長会議に東店の店長は参加していました。 会議のレビューので、特大のぼり旗がテーマになりました。
 社長は東店の店長に声を掛けました。
「店長、この間視察したとき、集客は酷かったが、その後あんな状態を放置していないだろうな」
「もちろんです社長。あれからは集客を見て特大のぼり旗を出しています。集客の悪い日は特大のぼり旗は出していません。 集客ができている時だけ、特大のぼり旗を出すようにしています」 東店の店長は自慢げに社長を見た。
「・・・・・・」
 社長は東店の店長をスルーすると西店の店長に声を掛けた。
「西店もあの時集客が悪かったが、その後の対応は?」
「はい、社長のお叱りはごもっともです。あれから役職者を集めて、 あの日の特大のぼり旗を出した時の集客が上手くいかなかった原因について議論し、いくつか仮説を立てました。 それに基づいて、最悪でも○○○以上の集客をするための施策を考えました。 そして、それでも集まらなかった時の当日緊急集客案も用意しました。 幸い、あれから○○○以下の集客は無くなりました。 ご安心ください」
 社長は、満足そうに頷いた。

寓話

      ◇

 しばらくして、人事異動があった。
  ・西店店長は営業部長代理に昇格。
  ・西店副店長は西店店長に昇格。
  ・南店店長は東店店長に移動。
  ・南店副店長は南店店長に昇格。
  ・ ・・・・・・
  ・ ・・・・・・

 

<解説>

 社長の意図を読み違えてはならない。

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