◆◇◆ 第81話 教育訓練の担当者 ◆◇◆
むかしむかしあるところにパチンコ店を経営している会社がありました。
会社はコミュニティホールづくりのため、スタッフの接客接遇力をアップすることに力を入れていました。
とりわけ人事教育部長は、人材教育に熱心に取り組んでいました。
しかし、なかなか思うような成果をあげることができません。
人事教育部長は、教育訓練機能を強化すべく、社長に教育担当者の増員の申請をしていました。
◇
そんな中で、接客接遇が抜群に素晴らしい店舗があることを知りました。
彼は迷わず視察に行きました。
店舗に入ってみるとどのスタッフも素晴らしい。
挨拶ができるのは当たり前、きめ細かな気遣いもしてくれる。
彼は感動しました。
彼は、スタッフに頼み店長に会わせてもらいました。
店長に会わせてもらうと、人の教育については本社に人事課があるので、そこで話を聞いてもらいと言われました。
店長がその場で本社に連絡してくれ、アポを取ることができました。
◇
人事教育部長は、教育の秘訣が聞けるのではないかと、ワクワクしながら約束の時間に見学先店舗の本社に行きました。
本社に入ると人事課長が待っていました。
「今日は暑かったでしょう」そう言いながら、人事課長が応接間に案内してくれました。
部屋はクーラーが良く効いています。
すると、すぐに女性スタッフがお茶と冷たいおしぼりをもってきました。
「もし、寒いようでしたら、いってください。外はたいへん暑いので、少しクーラーを強めにしています」
人事教育部長は、突然の訪問にも関わらず、歓待してもらったことに謝辞をいい、本題を切り出しました。
◇
人事教育部長は、見学した店舗の接客接遇を絶賛し、わが社も御社のような素晴らしい店舗を作りたいので、そのようにすれば、あのように素晴らしいスタッフが育つのか教えてもらえないか、人事課長にお願をしました。
人事課長は言いました。
「教育と言っても特別なことはしていません。接客の基本マニュアル的なものはありますが、運営は各店長に任せています」
人事教育部長は思いました。
『何も教育をしていないわけがない。
うちの会社では、他社よりも教育訓練時間を多くして、何度も接客接遇研修をしているが、このレベルに達していない。
もしかしたら、私を警戒して何も言わないのではないだろうか』
このまま帰っては、何のために出張までしてきたのかわからない。
ここは是が非でも何かを聞き出さないといけない。
人事教育部長は焦りました。
◇
「お願いです、何かヒントでもいただけないでしょうか。せめて誰が教育訓練をしているかだけでも、教えてもらえませんでしょうか」
必死の人事教育部長をみて、課長は考えました。
「そうですね。しいて挙げるとすれば、各スタッフの両親ですかね」
「両親???」
「うちの会社は、社長の方針で採用基準にこだわっています。
基本的に最初から教育する必要のない感じの良い人を雇うようにしています。
そういう意味では、マナーや接客サービスの大切さ、気遣いの大切さは、スタッフの両親が教育訓練をしている、と言えるでしょうね」
人事教育部長は一瞬頭が真っ白になった。
<解説>
人に関心があり、接客サービスの大切さが理解出来ている人を採用することが大切。
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