コミュニティマネジメント研究所

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パチンコ寓話

パチンコ・イノベーションを促進させる短編寓話集

◆◇◆ 第82話 スタッフの退職 ◆◇◆

 むかしむかしあるところにパチンコ店がありました。
 パチンコ店はコミュニティホールづくりのため、スタッフとお客様の関係づくりに力を入れていました。 地域のコミュニティを全面的に打ち出し、お客様にも店の方針を知ってもらっていました。 スタッフとお客様の関係は良好で、関係づくりのためのイベントにもお客様は結構参加してくれました。
 春になり、学生アルバイトの数人が就職のために相次いで店をやめましたが、すぐにアルバイトの補充ができました。
 ところが、アルバイトの教育訓練をして、前に近いレベルに上がったにも関わらず、お客様との関係づくりはしっくりいきません。
 常連客の何人かは、他店に行っているという報告も店長のところに届きました。

     ◇

 店長はこれは一時的なものだろうと思っていましたが、なかなか以前のようなスタッフとお客様の関係にはなりません。
 順調に行っていたコミュニティホール作りが、急に暗礁に乗り上げたように思えました。 
 とりあえず、社長を交えた店長会議の報告では、関係づくりはすぐにはできないので、もう少し時間がかかりますと言っていますが、具体的にどうしたらいいのかわかりません。
 会議が終わって、本社を出ようとしたとき、先輩の店長が声を掛けてきました。
「今日は元気が無かったじゃないか」
「そう見えましたか?」
「そう見えた。何を悩んでいるんだ」
 店長は、学生アルバイトが数人やめてから、コミュニティホール作りが後退したことについて話しました。 先輩は言いました。
「おまえは、小さいことを気にしすぎ。そのうち元に戻るよ。それにお前の店舗はうちよりコミュニティホールらしいと思うよ。 お前は十分良くやっている」
「そうでしょうか」
「そうだよ。あんまり気にすんな。それより久しぶりにご飯を食にべ行こう!」
 店長は、先輩店長と一緒に夕を食べに行きました。

     ◇

 店舗の関係づくり推進は、相変わらず上手くいっていませんでしたが、店長は次第に気にならなくなりました。 これまで通り、関係づくりのための施策は一生懸命にやっています。 店長は気づきました。
『これまで、関係づくりが上手くいきすぎていたんだ。本来はこんなもんなんだ』
 そう思うと気持ちが楽になりました。 店長会議でも、コミュニティホール化は順調に進んでいますという報告に自然とトークが変わりました。

     ◇
 正月、久しぶりに都会から帰京した友人と会ったときに、店長は近況報告ということで、コミュニティホール取り組みの話をしました。
「最近のパチンコホールは、地域の人とコミュニケーションを大切にしている!?まさに地域密着経営だね」 友人は感心して聞いていました。
「実はね。以前はもっとお客様とスタッフの関係は良かったんだ。やっぱり、その時の学生アルバイトが優秀すぎたんだろうな・・・」
「どういうこと?」
店長は、友人に学生アルバイト数人が辞めてから、お客様が離反したり、関係づくりが思うようにできなくなったことを愚痴りました。

 話を聞いていた友人は言いました。
「それはしかたがないよ。学生アルバイトが辞めたとき、何もしなかったんだろう?」
「何も?そんなことはないさ。ただ、お客様を動揺させないように、むやみにアルバイトを辞めることは言わないようには指示していたかな」
「そんなことだろうと思った。結局辞めるにあたって、お客さんへの配慮は何もしなかったんだ。 お客様から見ると、ある日スタッフが突然辞めたような感じになっていたんじゃないか」
「それはそうかもしれないけど、・・・」
「だからだよ。お前さ、お客さんの立場になって見ろよ」
「お客様の立場?」
「そう、今まで親しくして、話をして、ほとんど友達だと思っていた人間が、何も言わず、ある日突然いなくなって、遠くに移り住んだって聞いたら、お前はどう思うんだ?」
「俺に一言ぐらい話してくれても、って思うかな・・・」
「腹が立つだろう!?」
「腹は立つかどうかわからないけど、コイツとの関係は、何んだったんだって思うかもしれないね」
「そうだろう。お前が学生アルバイトが辞めたとき、退職の挨拶も何もさせないことで、 お客さんに”スタッフとの関係づくりは意味がないことを伝えた”と同じになっているじゃなか? だから、その後のお客さんのスタッフへの対応がおかしくなったんじゃない?」
「・・・・・・」

     ◇

寓話

      

 

<解説>

 スタッフが辞めるとき、関係づくりを大切にしていることをお客様に伝える演出をしないと、不信感を持たれるということ。

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