本当の地域密着店の作り方(実践編)

店舗(パチンコホール)が地域のコミュニティ広場としての取り組みを始めた

関根翔太のコミュニティホール指導回想録

『本当の地域密着店の作り方』の後継本となる予定の連載です。

◇◇◇主任同士の競走(6月第2週の進捗会議)

「それでは、尾田主任、報告をお願いします」
 尾田主任は、設備のアンケート結果の報告をした。 アンケート結果はすでにホールに貼りだしてあり、今回のリニューアルで対応するものは、今後早急に対応する旨の報告をしている。 事前に予想した箇所以外の気になる箇所は、アンケートからは出てこなかった。
 そして、気になる箇所をお客様の意見を参考に改善していくことを示すために、 『お客様と一緒に作り上げる店舗』というコンセプトを書いた立て札とご意見箱を、 アンケート結果を掲示している間は、カウンター横のテーブルに上に置くことにした旨の報告をした。

「わかりました。ところで改善箇所の写真は?」
 翔太が報告になかったので尋ねた。
「はい。今後リニューアルする箇所の写真は、クリンリネスを担当している西谷主任に協力してもらって、すでにデジカメで撮っています。 それとビフォー・アフターを掲載するためのポスター用の枠組みも作成中です。 でき次第、店長にお見せします。 リニューアル後の写真をハメ込めば、出来上がりというレベルにしておくつもりです」
「了解しました。尾田主任も仕事が早いですね」

 翔太は、なんとなく尾田主任は吉村主任に対抗意識を燃やしているように感じた。 尾田主任の方が新卒の先輩なる。 尾田主任は、いい意味で危機感を持ち、仕事をしているように思えた。 引き続き翔太は、遊技機勉強会の進捗報告を求めた。

 尾田主任は、現在、先行している大滝店から、遊技機の必要知識のまとめた資料をもらい、 暫定的に勉強会を今週からしていくことを報告した。 勉強会を自分でやりながら、教え方を工夫してみること。 そして、アルバイトスタッフが、遊技機について、それだけ知識を持っているか大きな表にして、休憩室に貼り出す予定であることを報告した。
 そして、今後登場する新台については、第二営業部の遊技機勉強会を担当するメンバーが手分けをして、 遊技機の勉強資料とお客様への説明資料を作成することが決まったことを報告した。

「それと店長一つよろしいでしょうか?」
「何でしょう」
「遊技機の知識検定制度を作りたいと考えています」
「具体的には?」
「遊技機について、プロとしての基礎知識編。要するに台の各部の名称と、遊技機の基本的特性、それにメーカーや保通協などについての知識の習得。 そして、各遊技台の知識編。つまり、スペックをはじめ、大当たり演出やコンテンツについての知識の習得。 そして、お客様相手の説明能力の3つについて、レベルを測っていきたいと思っています」

「理由は?」
「まず、学習効果がより見える化できます。そして、スタッフにプロとしての自覚が生まれると思います。 さらに、豊富な知識を持つことで、お客様に対して余裕のある接客ができるようになると思ったからです」
「わかりました。でも、たいへんだよ」
「できたら、手分けをして作りたいのですが、店長から部長にお声がけをしていただいて、 遊技機勉強会の担当者で、資料を手分けして作りたいと思うのですが、・・・」
 尾田主任は、目で翔太に承認を訴えてきた。

「尾田主任の想いはわかりました。でも実際の作業にGOは出せません。おそらくキャパオーバーのなると思います。 ただ企画の骨子は作ってください。それが出来たら、山崎部長と相談します。 今の時点では、勉強会を優先してください。このホールのコミュニティ推進のために」
「・・・・・・・」
「それに勉強会も奥が深いですよ。 全くパチンコをしたことが無いアルバイトに遊技台に興味を持たせ、それなりの知識を持たせる。 興味がわかないと覚えられないから、かなり工夫が要ると思いますよ。 それがさっき言っていた検定に、つながって行くんじゃないのかな」
「わかりました。そうします。報告は以上です」

 翔太は尾田主任の仕事量が増えすぎるのを心配した。
 一つの作業でも、レベルを上げるとなると、ある程度の時間と労力がかかる。 力を分散するとレベルを上げるのにさらに時間がかかる。 コミュニティホールの推進では、レベルの低い仕事は役に立たない。それどころか害になる。
 レベルが低い施策を実行したためにスタッフがやる気を失うケースを、翔太は大滝店で北条真由美から散々聞かされ、 『関根主任、あなたはコミュニティをつぶしたいと思われてるのかしら?』と厳しく注意されたことを思い出していた。

「それでは、このまま続けます。 最後は私の方から、会員募集について、みなさんに報告します」 翔太はそう言って、まず入会者目標を今月120人に設定したと告げた。 そして、来月から150人の新規会員を目標にすると発表した。

 そして、現在の新規入会の問題点について言及し、先だってのお客様の実態調査を基に、 リーダーに話した改善プランの枠組みを進捗会議のメンバーに示した。

 そして、改善プラン実行のために、リーダーの業務遂行能力の再訓練と、 アルバイトスタッフの会員募集向けの教育訓練の実施を行うこと。 また並行して、会員カードをつくり直し、既存の会員にカードの再発行を行うこと。 そして、『会員カード』という呼び方を全面的に改めて、 『JAC便利カード』という名前に変更することなどを説明した。

 さらに、再発行の際にDMの要不要については、新台情報、イベント行事情報、 基本情報(ニュースレター等)、重要情報(カード忘れや貯玉の長期放置連絡)とDM要の種類を4つに分類し、 お客様にそれぞれの要不要を訊くことで、従来の単純なDM不要客を無くす努力をする。

 また、会員カードの切り替えは、コミュニティホール作りのための情報収集を兼ねるので、 申し込み用紙を改良し、好みの機種をはじめ、趣味や仕事など幅広く情報を集めることとする。 この機会にコミュニティホールの十分条件の⑤番目の強化にあたる”お客様のデータベースづくり”を行うと宣言した。

 主任たちは新しい施策をいろいろ考えて、現状を変えていこうとする関根店長に、感心していた。 浅沼店の宝田主任も頷きながら、星野店長へ漏れのない報告をするために必死でメモを取っている。

 しかし、横で聞いていた森川副店長は、あまり面白くなかった。店長という権限で好き放題している。 いろいろなアイデアがあるなら最初にいろいろと自分に教えてくれるべきだと考えていた。 そんなことを考えると、どうしても表情は硬くなっていく。 森川副店長はこの会議からひとり浮いていくのを感じていた。

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