本当の地域密着店の作り方(実践編)

店舗(パチンコホール)が地域のコミュニティ広場としての取り組みを始めた

関根翔太のコミュニティホール指導回想録

『本当の地域密着店の作り方』の後継本となる予定の連載です。

◇◇◇事務所での会話

 6月の3週目にもなると、朝10時はけっこう暑い。 店休日明けは新台入替もあり、お客様の数は普段より3割ほど増えている。 朝の挨拶運動を担当している吉村主任は、手前味噌ではあるが、お客様との雰囲気が良くなってきているように感じている。 朝の挨拶運動をチェックし、スタッフのお客様フォローを見とどけた吉村主任は、事務所に戻ってきた。

「お疲れ様」
「お疲れ様です。店休明けは人が多かったと思いますが、挨拶はしっかりできていましたか?」
 事務所で作業をしていた明日葉が尋ねた。
「きっちりやれているよ。最近、アルバイトスタッフの動きが良いように感じるけど、寺島リーダーはどう思う?」
「私もそう感じています。何か自分の言っていることをしっかり聞いているような感じで、アルバイトスタッフとの距離が縮まったように思います」

「やっぱり、研修の効果かな」
「吉村主任は、大滝店でスタッフ研修を体験したんじゃないのですか?」
「体験したけれど、正直、効果については深く考えたことは無かった。
 大滝店のスタッフの雰囲気が良くなったのは、ラッキーと思っていたけれど、 ここでもスタッフの雰囲気が良くなってくると、改めてスタッフ研修の意味を感じるよ」
「私は接客のプロになりたいと思っていたので、スタッフ研修のやり方を店長から聞き出してマスターするつもりです。 接客の基本スキルを習得させるベースになる研修と感じましたから」
「寺島リーダーは熱心だね」
「ありがとうございます。いつものことですけどね」
 明日葉はニッコリと笑った。

「ところで、寺島リーダー、来週当り、例のパン屋さんに取材に行く予定にしてるんだけど、一緒に来れる?」
「あれ?森川副店長と長谷川さんの三人で一緒に行くんじゃなかったんですか?」
「そうなんだけど、7月の総付け商品の話もできたらしたいと思うから、一緒に行けば、手間が省けるだろう。 それに写真を撮る人もいるしね」
「主任が、パン屋のオーナーに取材しているところを見学できるということですか?」
「そう、勉強になるよ」
「そうですね。でも来週は例の『コミュニティ基本講座』もあり、忙しんですけど・・・。 わかりました。好きなパンを1個買ってもらえるなら行きます」
「いいよ。買ってあげるよ」
「じゃ、交渉成立ですね」

 吉村主任は、リーダーの中で、何にでも興味を示す寺島明日葉を、自分の代わりのような存在にしておきたいと思っている。 心の中では、新店が出来て関根店長が移動する場合、自分も一緒に移動したいと思っていた。 そのとき、自分の代わりになる人間がいないと、久米坂店のコミュニティが回らなくなる。 そこで学習意欲の高い寺島明日葉に、地域商店とのコラボのやり方をマスターしてもらいたいと思っていた。

 

◇◇◇会員募集の工夫

 昼から出勤した翔太は、事務所のミーティングテーブルで、リーダー3人がミーティングをしているのを見かけた。
「おはようさん」翔太は近づき、声を掛けた。
「おはようございます」3人が声をそろえた。

「3人とも揃っているね。ちょうど良かった。 7月の1日からカードの切り替えの段取りは進んでいるかな?」
「一応、3人で進めています。
 この間ご指摘をいただいたポイントを念頭に置きながら、常連のお客様との会話の進め方を考えています。 その予行演習といっては何ですが、今の会員募集でお客様情報の引き出しをスタッフにしてもらっていますから、 それをアレンジしたもので何とかなると思っています。 来週には簡単なロープレをする予定です」
「この間指摘した、入会後のフォローのやり方も考えている?」
「大丈夫です。それも含めたロープレになっています」
 岡田リーダーがカード切り替えに対する現状の取り組みを説明した。

「さすがだね。3人とも仕事が早いね」
「店長、ご褒美はワゴンサービスのカフェオーレで我慢しておきます」
と寺島明日葉がちゃっかりおねだりをして、ニッコリ笑った。
「まあ、頑張っているし、OKしよう」
 そう言う明日葉は、二人を見て、小さくガッツポーズをした。

「ところで、何を打合せしているの?」
「とりあえず、毎日3回コンスタントに会員募集をしているので、入会数はいったん上がったのですが、 また下がる傾向がでてきたので、その対策を話し合っていたんです」
 岡田リーダーが答えた。
「優秀スタッフと、そうでないスタッフの分析はできたの?」
「それはまだ終わっていません。日数が足りなくて」
 明日葉が残念そうに答えた。

「それもそうだ。だったら、当面の策としては、時間帯の変化によるカバー率のアップかな?」
「カバー率ですか?」
「一時期、挨拶運動で会員がコンスタントに取れただろう。 それは、その時間帯にあまり会員募集をしていなかったことも大きい」
「つまり、あまりまだ回っていない時間帯に回る工夫をしろということですか」
 岡田リーダーが翔太を見た。
「そう言うこと」

「だったら、夜の9時ぐらいから、回ったらいいんじゃないかしら」
「昔、やっていた5分延長メリット?」
 横井リーダーが明日葉の言葉に反応した
「この半年ほどやってないから、いんじゃないかしら。お客様の入れ替わっている可能性も高いでしょう」
 明日葉は自分の考えを補足した。
「よし、検討しよう。ちょっとペースを上げないと、今月の120人は難しいからね」
 岡田リーダーの言葉に2人が頷いた。

「みんな、頑張ってくれよ。それとプロセス分析は忘れずに。結果が出たら、教えてくれ」
「分かりました。店長。ヒントありがとうございます」
 翔太は、軽く手を上げて答え、自分のデスクへ向かった。

参考資料:連載--会員獲得の改善の考え方

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