本当の地域密着店の作り方(実践編)

店舗(パチンコホール)が地域のコミュニティ広場としての取り組みを始めた

関根翔太のコミュニティホール指導回想録

『本当の地域密着店の作り方』の後継本となる予定の連載です。

◇◇◇ 高坂部長の来店

 午前中、翔太の携帯に、小泉社長から直接、店舗に行くという連絡が入った。 昨日、報告が出来なかったので、小泉社長がわざわざ聞きに来られるのかと翔太は思った。
 モニターを見ていると、駐車場から小泉社長と山崎部長、そして高坂部長が下りてくるのが見えた。 翔太は、高坂部長がこの店に来るのは予想外だった。なぜだろうと思わず自分に問いかけてしまった。

 事務所に入ると小泉社長から、まず現場を案内してくれと言われ、翔太と森川副店長はホールを案内し、改装のポイント、コミュニティの演出など、細かく説明した。
 意外なことに一番熱心に聞き、感心したのは高坂部長だった。
 翔太は益々分からなくなった。出玉派の高坂部長がどうしてこんなに感心するのか分からなかった。
 ホールでの説明を一通り終えると、小泉社長から会議室でこれまでの経緯も話して欲しいと頼まれた。
 森川副店長が遠慮しようとすると、森川副店長も同席を求められた。

 翔太は、このホールに移動になり、前任の太田店長がいなくなってから始めたコミュニティホールづくりのための打ち手を、順を追って説明した。
 ここでも高坂部長は頷いて、持ってきたノートの何やら書き込みをしている。 時には大きく感心して見せた。これには森川副店長も驚きキョトンとしていた。
 そして、最後に山口饅頭堂の話になると高坂部長は絶賛した。 翔太も森川副店長もキツネにつままれたような顔になってしまった。
 話を聞き終わると小泉社長は二人の労をねぎらった。 そして、これから話す内容は他言しないように言われた。

 二人は緊張した。
「関根翔太店長、兼コミュニティ推進室長。
 来年の2月には新店準備に入って欲しい。
 新店の地域交渉が上手く行った。 この店を見学に来た住民代表が、地域の人を説得してくれた。 そして、久米坂店の店長が店長として来てくれるならOKと言うことになった。
 そして森川敦夫副店長、森川副店長は、関根店長の後を引き継いで店長になり、この久米坂店で花開こうとしているコミュニティをさらに発展させてほしい」
「・・・・・・」
「ということで、今スグではないが、頃合いを見て徐々に引き継ぎをしてほしい。 とは言っても関根店長はコミュニティ推進室長を兼務しているので、まったくこの店と無関係にはならないけどね。
 時期が来たら皆に知らせますが、このことはこの会議室にいる5人しか知りません。 今は他言はしないようにお願いします」
 そう言って小泉社長は二人を交互に見た。
「わかりました」
 翔太と森川副店長は声を揃えた。

「ところで、今後第一営業部もコミュニティホールを研究し、その手法を取り入れた運営を行うことになった。
 高坂部長も研究のためにこのホールにちょくちょく来ることになると思うけど、コミュニティ推進室長、よろしくお願いしますよ」
 そう言うと小泉社長はニッコリ笑った。
「室長、これからよろしく頼むよ」
 高坂部長が翔太に屈託のない声を掛けた。
 その横で山崎部長も満足そうに頷いている。
 翔太は、会社の流れが大きくコミュニティへと大きく傾いていくのを感じた。

  

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