本当の地域密着店の作り方(実践編)

店舗(パチンコホール)が地域のコミュニティ広場としての取り組みを始めた

関根翔太のコミュニティホール指導回想録

『本当の地域密着店の作り方』の後継本となる予定の連載です。

◇ 高坂部長と森川副店長の決意

 森川副店長は、高坂部長に店外清掃のことを説明するために、掃除範囲となっている歩道を歩いていた。 秋風が気持ち良い。
「森川、良かったな。今度こそ店長になれるぞ」
「ありがとうございます。これも高坂部長のお陰です」
 森川副店長は高坂部長に礼を述べた。
「イヤイヤ、今回の人事に俺は関与していないよ」
「そうなんですか?」
「山崎部長と関根店長のお陰さ、いや、関根店長のお陰かな」
「どういうことでしょう?」
 森川副店長は高坂部長の顔を見た。

「今朝、詳しい話を聞いたんだが、森川、おまえがコミュニティホールの運営が出来るかどうか、小泉社長と山崎部長はずっと見ていたみたいだ。 もし無理なら第二営業部の店舗から人選して、別の人間を久米坂店の副店長にして、おまえを元の本町店に戻す計画だったようだ」
「そうなんですか」
 森川は、この間行ったときの本町店の記憶が蘇ってきた。 あの川田店長の部下に戻るのは正直勘弁して欲しいと思った。
「小泉社長と山崎部長は、関根店長を新店店長と決めていたので、早めに結論を出そうと、何回か関根店長に打診していたけど、 関根店長がもう少し待って欲しいと、引き延ばしていたみたいだ」
「・・・・・・・」
 森川は、当初翔太の考えにことごとく反対していたこと。 翔太が会員管理の担当を外したことから、自分に対しては温情を持っていないと思っていたのに、話を聞いて以外に思った。
 でも、よく考えてみると、豆の木パン工房の担当や山口饅頭堂の担当にしたのは翔太であり、 あえて自分を担当にしてくれていたのは、私をこの店の店長にするためだったのかと初めて気づいた。
「高坂部長、良いことを教えていただきました。ありがとうございます」
 そう言って高坂部長に頭を下げた。

「正直言って、私は関根店長に好感を持っていませんでした。 運が良くて店長になったラッキーな奴。新卒第一号だから社長から特別に優遇されているとだけと思ってした。
 でも、いま改めて考えると、自分の認識が誤っていました。 彼は確かにいろんなことを考えて頭を使っています。努力もしています。 店長になってもホールに立ち、現場のことを見ています。
 今回の久米坂店の回復も、なるべくしてなったと思いました。
 もし、私が担当していたら、たぶん、今でも地域5番店をうろうろしていたたでしょう」
「俺も、今日の関根店長の話を聞いて、今までやってきた自分の努力がいかに狭いものであり、足らないものであったか身に染みて感じた。
 社長がなぜ『コミュニティホール』に固執しているのか、改めて分かった気がする。
 これまで、自分の頭に頼るのではなく、新台の力や出玉の力に頼り切っていたことが本当に良く分かった」
 森川は、自分が本町店を見て気づいたことと、同じことを高坂部長も気づいているのが嬉しかった。 やっぱり高坂部長は尊敬できる部長だと思った。

「部長、私すっきりしました。これからは関根店長についてコミュニティホールづくりをマスターしたいと思います」
「そうか、俺も白紙に戻って一から頑張るつもりだ」
 二人が見上げると、澄み切った秋の空がどこまでも続いていた。

  

        ☜ 前回             次回 ☞

inserted by FC2 system